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18.クロックムッシュで朝食を
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「あれ? 板谷くん、なんか美味しそうなもの食べてる」
美化委員の清掃作業が終わったあと、他の生徒たちが登校する前のがらんとした教室で、俺は秀一に渡されたサンドイッチを食べていた。
「船越さん、お疲れ様」
「板谷くんもお疲れ様。……って、なにこれすごい! クロックムッシュじゃん!」
「クロック……? 普通のホットサンドと違うわけ?」
「全然違うよー! パンに焼け目つけたり、専用のソース使ったり、手が込んでるんだって」
なるほどそういう名前のサンドイッチなのか、と特に気にせずむしゃむしゃと俺は食べ続ける。
「自分で作ったってわけじゃないみたいだね。買ったの?」
「いや……。家族が作ってくれた」
「お母さん?」
「……まあ、そんなとこ」
俺が父子家庭だったことは担任しか知らない。普通の生徒に話しても気を遣われてしまうか、空気が重くなるだけだと、これまでその話題は避けてきたのだ。とはいえ、年頃の男子が母親の話題を出したがらないのは別に不自然ではなかった。
「わざわざ持たせてくれるなんて、いいお母さんだね」
「まあ、うん」
(おーい秀一、お母さん呼ばわりされてるぞー)
そんなことを内心で考えていると、俺のスマホが振動した。確認すると、秀一からのメッセージだ。
『清掃作業お疲れさま。クロックムッシュ美味しかった?』
『今食ってる。美味い』
『よかった! 夕ごはんは何がいい?』
(朝メシのあとに夕飯の話とか、まるで本当にお母さんだな)
『ピーマンさえ入ってなければなんでもいい』
『誠二さん、好き嫌いはダメですよ。今夜は余り物で中華にしますね』
『期待してる』
タンタンとディスプレイを打って手短に返信すると、船越さんがじっとこちらを見ていた。
「なに?」
「う……ん、なんか上手く言えないんだけど、最近、板谷くんすごく楽しそう」
「俺が?」
「今だって、すごい嬉しそうだったよ。……って、もしかして彼女!? その朝ごはんも彼女の手作り!?」
「バッ……! バカ言うなよ! 違うって!」
「慌ててる~! 逆にあやしい!」
「ホント違うから! 変なこと言うなよ!」
「本当かな~」
船越さんはにまにまと含み笑いをしながら、登校してきたクラスメイトのほうへ向かっていった。
(はあ……。彼女じゃないし、お母さんじゃないし、弟……と言い切ってしまえるわけでもないんだけど……)
まだ同居を始める前、内見に行ったとき以来、秀一とは性的な触れ合いはしていない。しかしあいつは事あるごとにスキンシップを計ってくる。さりげなく手を繋いだり、漫画を読んでるとぴったりとくっついてきたり。
嫌かと問われれば、不思議と嫌ではないのだ。その行為には下心が込められていないことが伝わってきて、なんだか「まあいいか」という気持ちになってしまうのだ。
(こういうの、絆されてるっていうのか……?)
それでも、もし今、秀一に「付き合ってほしい」と言われたら俺は即刻ノーと言うだろう。気持ちが追いついていないというのもあるが、高校三年の夏と言えば、受験に大切な時期だからだ。
美化委員の清掃作業が終わったあと、他の生徒たちが登校する前のがらんとした教室で、俺は秀一に渡されたサンドイッチを食べていた。
「船越さん、お疲れ様」
「板谷くんもお疲れ様。……って、なにこれすごい! クロックムッシュじゃん!」
「クロック……? 普通のホットサンドと違うわけ?」
「全然違うよー! パンに焼け目つけたり、専用のソース使ったり、手が込んでるんだって」
なるほどそういう名前のサンドイッチなのか、と特に気にせずむしゃむしゃと俺は食べ続ける。
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「いや……。家族が作ってくれた」
「お母さん?」
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「わざわざ持たせてくれるなんて、いいお母さんだね」
「まあ、うん」
(おーい秀一、お母さん呼ばわりされてるぞー)
そんなことを内心で考えていると、俺のスマホが振動した。確認すると、秀一からのメッセージだ。
『清掃作業お疲れさま。クロックムッシュ美味しかった?』
『今食ってる。美味い』
『よかった! 夕ごはんは何がいい?』
(朝メシのあとに夕飯の話とか、まるで本当にお母さんだな)
『ピーマンさえ入ってなければなんでもいい』
『誠二さん、好き嫌いはダメですよ。今夜は余り物で中華にしますね』
『期待してる』
タンタンとディスプレイを打って手短に返信すると、船越さんがじっとこちらを見ていた。
「なに?」
「う……ん、なんか上手く言えないんだけど、最近、板谷くんすごく楽しそう」
「俺が?」
「今だって、すごい嬉しそうだったよ。……って、もしかして彼女!? その朝ごはんも彼女の手作り!?」
「バッ……! バカ言うなよ! 違うって!」
「慌ててる~! 逆にあやしい!」
「ホント違うから! 変なこと言うなよ!」
「本当かな~」
船越さんはにまにまと含み笑いをしながら、登校してきたクラスメイトのほうへ向かっていった。
(はあ……。彼女じゃないし、お母さんじゃないし、弟……と言い切ってしまえるわけでもないんだけど……)
まだ同居を始める前、内見に行ったとき以来、秀一とは性的な触れ合いはしていない。しかしあいつは事あるごとにスキンシップを計ってくる。さりげなく手を繋いだり、漫画を読んでるとぴったりとくっついてきたり。
嫌かと問われれば、不思議と嫌ではないのだ。その行為には下心が込められていないことが伝わってきて、なんだか「まあいいか」という気持ちになってしまうのだ。
(こういうの、絆されてるっていうのか……?)
それでも、もし今、秀一に「付き合ってほしい」と言われたら俺は即刻ノーと言うだろう。気持ちが追いついていないというのもあるが、高校三年の夏と言えば、受験に大切な時期だからだ。
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