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二章
ボーイミーツガール パート2
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川に向かうと出て行ったソウザだったが、向かった方向は真逆。
彼女は屋敷から北東に2km歩いたところにあるエザン山の麓へと向かっていた。
エザン山はネイム領の北端にある標高800mほどの休火山で、この山の向こうがちょうど他領との境になっている。
またとある約定により麓より上の入山を禁止されている、いわゆる禁足地という扱いの山であった。
そんな理由もあって地元の人間はおろか、ネイム家の人間ですら、よほどのことが起きない限りこの山には近づかないのがほとんどで、
人の出入りを想定されてないこの山は、領地の境とたまの伐採の際に使う搬入路以外はほとんど整備されておらず、
特に麓は荒れ放題といったところであった。
今ソウザが進んでいるルートもおおよそ人の通る場所ではないのだが、彼女にとっては特に気にすることではない。
ソウザ自身も両親やセルベスから、山には入るなと念を押されてはいるのだが、
彼女自体禁足地にさえ立ち入らなければいいだろう、という勝手な理屈でこうやってなにかあると時たま山に入ることを繰り返していた。
見つかれば大目玉ですまないことは十分承知ではあるのだが、良家の令嬢などという立場を気にしない時間というのは、ソウザにとって自分を見失わないためにも必要なことでもあった。
そりゃオレだって一人で静かにしてたいことだってあるのさ──
あの家にいたら、そんな贅沢誰も許しちゃくれないからな──
ソウザは心でそうひとりごちながら、鼻歌交じりに麻袋を片手に鬱蒼とした森の道無き道を進んでいく。
生前は修行や仕事で、山籠りなど珍しいことではなかった。
獣ですら嫌がるほどの険しい山であっても、彼女にとっては散歩にしかならない。
そうやってソウザが山に入り北西に歩くこと20分。
3つほどの渓流が合流した小さな滝壺がある広場に彼女は到着した。
穏やかな水流が運ぶ風と湿気がソウザの鼻頭を軽く撫でる。
ソウザは嬉しそうに小さく鼻を鳴らしながら、辺りを見回した。
先ほどの道中を考えれば信じられないほど整備されており、その様相はちょっとした川辺のキャンプ場だ。
川近くにある木々にはお手製のハンモックが吊り下がっており、枝の股には人一人入れるぐらいの小さな小屋がたっているのが見える。
もちろんこれらはソウザが制作して設置したもので、
8つの時にここを見つけてから少しづつ手を加えてきた、彼女の秘密基地であった。
ソウザは周りに誰もいないことをその目で確認すると、
川の方に歩を進めながら衣服のボタンを一つ一つ外していった。
そしてまず上着を、続いて下着。
スカートもショーツも手馴れた手つきで一つ一つ脱いでいく。
そうしてすっかり生まれたままの姿になったソウザは、衣服を持ってきた麻袋に入れ、近くの木へ小さく放り、
そのまま川へと入っていく。
川の中心ほど、腰に水が来る程度のところでソウザは立ち止まり、水辺に映る自身の体を見やる。
この眼に映る自身の体は、百戦錬磨を彷彿とさせる筋骨隆々の傷だらけの大男、ではなく、
金色の髪がよく似合う白い肌の少女だ。
ソウザは小さく息を吐いた後、体を横にしその肉体を水の流れに預ける。
春先ということでまだ多少肌寒いが、特に気するほどでもない。
ソウザは目を瞑りしばらくの間、この時間を楽しむことにした。
彼女は屋敷から北東に2km歩いたところにあるエザン山の麓へと向かっていた。
エザン山はネイム領の北端にある標高800mほどの休火山で、この山の向こうがちょうど他領との境になっている。
またとある約定により麓より上の入山を禁止されている、いわゆる禁足地という扱いの山であった。
そんな理由もあって地元の人間はおろか、ネイム家の人間ですら、よほどのことが起きない限りこの山には近づかないのがほとんどで、
人の出入りを想定されてないこの山は、領地の境とたまの伐採の際に使う搬入路以外はほとんど整備されておらず、
特に麓は荒れ放題といったところであった。
今ソウザが進んでいるルートもおおよそ人の通る場所ではないのだが、彼女にとっては特に気にすることではない。
ソウザ自身も両親やセルベスから、山には入るなと念を押されてはいるのだが、
彼女自体禁足地にさえ立ち入らなければいいだろう、という勝手な理屈でこうやってなにかあると時たま山に入ることを繰り返していた。
見つかれば大目玉ですまないことは十分承知ではあるのだが、良家の令嬢などという立場を気にしない時間というのは、ソウザにとって自分を見失わないためにも必要なことでもあった。
そりゃオレだって一人で静かにしてたいことだってあるのさ──
あの家にいたら、そんな贅沢誰も許しちゃくれないからな──
ソウザは心でそうひとりごちながら、鼻歌交じりに麻袋を片手に鬱蒼とした森の道無き道を進んでいく。
生前は修行や仕事で、山籠りなど珍しいことではなかった。
獣ですら嫌がるほどの険しい山であっても、彼女にとっては散歩にしかならない。
そうやってソウザが山に入り北西に歩くこと20分。
3つほどの渓流が合流した小さな滝壺がある広場に彼女は到着した。
穏やかな水流が運ぶ風と湿気がソウザの鼻頭を軽く撫でる。
ソウザは嬉しそうに小さく鼻を鳴らしながら、辺りを見回した。
先ほどの道中を考えれば信じられないほど整備されており、その様相はちょっとした川辺のキャンプ場だ。
川近くにある木々にはお手製のハンモックが吊り下がっており、枝の股には人一人入れるぐらいの小さな小屋がたっているのが見える。
もちろんこれらはソウザが制作して設置したもので、
8つの時にここを見つけてから少しづつ手を加えてきた、彼女の秘密基地であった。
ソウザは周りに誰もいないことをその目で確認すると、
川の方に歩を進めながら衣服のボタンを一つ一つ外していった。
そしてまず上着を、続いて下着。
スカートもショーツも手馴れた手つきで一つ一つ脱いでいく。
そうしてすっかり生まれたままの姿になったソウザは、衣服を持ってきた麻袋に入れ、近くの木へ小さく放り、
そのまま川へと入っていく。
川の中心ほど、腰に水が来る程度のところでソウザは立ち止まり、水辺に映る自身の体を見やる。
この眼に映る自身の体は、百戦錬磨を彷彿とさせる筋骨隆々の傷だらけの大男、ではなく、
金色の髪がよく似合う白い肌の少女だ。
ソウザは小さく息を吐いた後、体を横にしその肉体を水の流れに預ける。
春先ということでまだ多少肌寒いが、特に気するほどでもない。
ソウザは目を瞑りしばらくの間、この時間を楽しむことにした。
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