愛されたがりのオオカミは、愛したがりのトラに抱かれる。

野中にんぎょ

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これからも、「おかえり」「ただいま」「愛してる」

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「いつから知ってたの?」
 あちこち噛まれて歯形だらけになったマダラはふかふかの掛け布団を引き寄せて眉を吊り上げた。隣に横たえたシシは「最初から分かってたよ」と膨れたマダラの頬を人差し指で突いた。
「本当はオオカミじゃないくせにって……思ってた?」
 おずおずと尋ねれば、シシはマダラを抱き寄せて「マダラが自分はオオカミだって思うならオオカミだよ」と穏やかに言った。
「ネコでもオオカミでも、マダラが僕の愛しいひとだってことは変わらない。だから正直なところ、僕はどっちだってよかった。……オオカミよりもネコの方がトラの僕と相性がいいから孕みやすいのは嬉しいことだけど」
 まあ、オオカミでも絶対に孕ませるけどね。そんな副音声が聞こえて来そうでマダラはそっぽを向いた。小さな背中を抱き寄せ、シシは「はふう」と満足げな溜息を吐く。
「これからは、ずっと一緒だね」
「……一匹で、自由に、自分の力で、じゃなかったの?」
「これからは、二匹で、寄り添って、力を合わせて、だね」
 つんと尖った唇に温かな唇が添えられる。マダラは愛しい彼を振り返り胸に面を埋めた。
 与えたいとばかり思っていた自分が、いつの間にか与えられ、心がほどけた。幾重にも重ねた日々が、触れた素肌の温もりが、眼差しの柔らかさが、凍てついていた場所を溶かしてくれた。
 二匹は互いを引き寄せもう一度唇を重ねた。与えた瞬間に、与えられる。この幸福を何と名づけよう。マダラは「そうだ」と笑みを深めた。
「シシ、俺、シシの家族になったの?」
 問えば、「そうだよ」と、確かな肯定とキスが返って来た。トラとネコの番が住む小さな部屋は、夜が明けても、季節が変わっても、ふたつの産声が上がっても、温かく柔らかな光を灯し続けた。

【終】
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