クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい

小田恒子

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第六章

マリッジブルー 11

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 今までこんなにもだれかと話をしない日はなかったから、余計にそう感じるのだろうか。

 私は適当に食事を済ませると、シャワーを浴びて、部屋に戻るとそのまま寝ていたようだ。
 スマホのアラームで目覚めると、いつの間にか夜が明けていた。

 昨日、あんなに早く就寝したはずなのに、まだ眠い。

 そのまま布団の中で目を閉じてしまいそうになるのを、頑張ってベッドから起き上がると、身体が鉛のように重く感じた。

 特に食欲はないけれど、何かしら口に入れておこうとキッチンへ向かう。冷蔵庫の中からありあわせのおかずを取り出して、炊飯器から白米をよそう。

 それらを少量ずつ口に運んだけれど、いつしかその手は止まっていた。

 おかしい、何か気持ち悪い。

 そう思ったら急に吐き気がして、私はトイレに駆け込んだ。さっき口の中にいれたごはんやおかずを吐いてスッキリするかと思うと、そうではない。いつまでも吐き気は続く。

 もしかして、これ、つわり……?

 千早さんが前に、「結婚式や新婚旅行中につわりがあると大変だから」と言っていた意味が、ここにきてようやく理解できた。

 つわりって、気持ち悪くなった時に吐き戻しをすれば治まるって思っていた私は、自分の認識の甘さを痛感した。
 これ、今日無事に一人で病院へ行けるかな……

 不安になった私は、診察予約時間よりも早くクリニックに到着するよう、時間に余裕を持って家を出ることにした。

 電車は通勤の時間帯を避けていたため思っていたよりも空いていて、座席に座ることができた。

 はじめて行くクリニックなので、最寄り駅に到着すると、スマホで場所を確認しながら目的地へ向かう。

 クリニックの受付で名前を告げ、問診票に記入を済ませると、採尿と採血をするよう指示を受け、それが終わると待合室のソファーに腰かけて自分の順番が来るのを待っていた。

 このクリニックはマンションから一番近い場所にあり、ネットの口コミも概ね評判がよかったので来てみたけれど、正解だったと思う。あとは先生との相性次第だなと、マガジンラックに差し込んである雑誌に手を伸ばしたその時だった。

「あれ? 藤川さん……?」

 上京してきてからそんなに人と会話する機会がなかったせいか、一瞬自分のことを呼ばれたことに気付かなかった私は反応するのに数秒掛かったけれど、顔を上げてみると、そこには見知った顔があった。

「桜田さん」

「ああ、よかった、やっぱりそうだ! 人違いだったらどうしようって一瞬焦っちゃいました。お隣、いいですか?」

 桜田さんはそう言うと、私の隣の空いた席に座っていいか尋ねた。

「もちろんです、どうぞ」

 私はそう言って桜田さんに着席を促すと、桜田さんは笑顔で隣に腰を下ろした。

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