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第8章
見た目に騙されてはいけません 3
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「……もしかして、僕と結婚するの、本当は嫌だった?」
徹也くんは冗談めかしているけれど、その目は笑っていない。こっちだって、聞きたいことだらけなのに。
「そんなことっ……!! 徹也くんのほうが、本当は私との結婚が嫌だったんじゃないの?」
険悪な空気になりそうなところに、武志さんが先ほど頼んだアイスコーヒーとパンケーキを運んできた。
私の紅茶は、とうの昔に冷めてしまっている。
「それを言うなら、徳井さんもでしょう? こうして晶紀以外の女性と一晩一緒だったそうですね。僕たちはその場にいないから、どうとでも言い訳できますよね? それに、その指輪。晶紀からのプレゼントじゃないものを着けてるのって、どんだけですか? 坂下さんとペアリングじゃないんですか?」
弘樹の思わぬ援護射撃に動揺したのか、徹也くんの手元が狂い、アイスコーヒーをぶち撒けてしまった。運悪くグラスが私側に傾いて、私のスカートは見る見るうちにアイスコーヒーで染みが広がっていく。
「うわっ、ごめん!!」
動揺する徹也くんをよそに、向かい側に座る二人の行動は迅速だった。
弘樹は先に運ばれていたおしぼりでテーブルを拭き、坂下さんはカウンターに台拭きとタオルを借りに行った。
坂下さんと武志さんがタオルと台拭き、雑巾を手に戻ってくると、ようやく徹也くんも我に返った。
「ここは僕と白石くんが片付けるから、晶紀はトイレでスカート洗っておいで。放ってたら染みが取れなくなるぞ」
「そうよ、晶紀ちゃん。行きましょう」
私は坂下さんに促され、化粧室へと向かった。その際、坂下さんは大きな手提げ袋も一緒に持ち込んだ。
ベージュの生地に小花がプリントされたミディ丈のフレアスカートに、コーヒーが染み込んでしまっている。
武志さんから借りたタオルを濡らそうと洗面台に向かったその時だった。
「晶紀ちゃん、良かったらこのスカート穿いて」
坂下さんはそう言うと、自分が穿いていたスカートを脱ぎ、私に手渡した。
「は? いやいや、そんな! 坂下さん、ちょっと待って下さい……って……、ええっ!?」
「大丈夫、私も着替えるから」
坂下さんの格好を見て私は心の底から驚いた。
だって男性用のボクサーパンツを穿いている上に、股間が膨らんでいるのだ。
坂下さん、女性じゃないの!?
坂下さんは、化粧室に持ち込んだ袋の中から、洋服を取り出した。それは、明らかに男性服だ。
徹也くんは冗談めかしているけれど、その目は笑っていない。こっちだって、聞きたいことだらけなのに。
「そんなことっ……!! 徹也くんのほうが、本当は私との結婚が嫌だったんじゃないの?」
険悪な空気になりそうなところに、武志さんが先ほど頼んだアイスコーヒーとパンケーキを運んできた。
私の紅茶は、とうの昔に冷めてしまっている。
「それを言うなら、徳井さんもでしょう? こうして晶紀以外の女性と一晩一緒だったそうですね。僕たちはその場にいないから、どうとでも言い訳できますよね? それに、その指輪。晶紀からのプレゼントじゃないものを着けてるのって、どんだけですか? 坂下さんとペアリングじゃないんですか?」
弘樹の思わぬ援護射撃に動揺したのか、徹也くんの手元が狂い、アイスコーヒーをぶち撒けてしまった。運悪くグラスが私側に傾いて、私のスカートは見る見るうちにアイスコーヒーで染みが広がっていく。
「うわっ、ごめん!!」
動揺する徹也くんをよそに、向かい側に座る二人の行動は迅速だった。
弘樹は先に運ばれていたおしぼりでテーブルを拭き、坂下さんはカウンターに台拭きとタオルを借りに行った。
坂下さんと武志さんがタオルと台拭き、雑巾を手に戻ってくると、ようやく徹也くんも我に返った。
「ここは僕と白石くんが片付けるから、晶紀はトイレでスカート洗っておいで。放ってたら染みが取れなくなるぞ」
「そうよ、晶紀ちゃん。行きましょう」
私は坂下さんに促され、化粧室へと向かった。その際、坂下さんは大きな手提げ袋も一緒に持ち込んだ。
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「大丈夫、私も着替えるから」
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だって男性用のボクサーパンツを穿いている上に、股間が膨らんでいるのだ。
坂下さん、女性じゃないの!?
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