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第9章
彼が指輪をしている理由 2
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中学英語の復習しない? と、徹也くんの家に押し掛けた。あわよくば全部やってもらおうと企んでいたけれど、その考えは甘く、徹也くんが一日かけて教えてくれ宿題を仕上げたのだった。
「あの日、部屋に晶紀がお守り落として帰って、中に指輪が入ってたことに気づいたんだ」
ここで一息吐いて、徹也くんが言葉を続けた。
「誰かからのプレゼントかと思ったら無性に腹が立ったから、僕のお守りとすり替えて、後日『部屋に落ちてた』って渡したんだけど。指輪が無くなってることに晶紀は全然気づいてなかったみたいで、何も言ってこなかったな」
徹也くんの言葉に、あやふやだった記憶が甦る。
当時の私は指輪を購入したことに満足して、存在をすっかり忘れていたから、お守りを返してもらった時も、中身の確認なんてしなかった。
「何となく指に着けてみたら、サイズがピッタリでさ。大学で地元を離れてからは、晶紀を身近に感じられると思って片時も外さなかった」
まさかずっと使っていただなんて……
「女の子に言い寄られたときは、内側に晶紀の名前が彫ってあるから『彼女からのプレゼント』って言って断るのにも重宝したよ。慎太郎がそれを見て、女装するときに僕をエスコートさせるものだから、慎太郎が僕の彼女って噂も流れたけど、お互いWINWINだからって放置してた」
徹也くんから渡された指輪は、メッキが剥がれて傷もたくさん付いているけど、長年大事に使ってくれていたことが伝わった。
「女性は婚約指輪をすれば、他の男からちょっかいを出されなくて済むと思ってたけど、白石くんは例外みたいだな」
上目遣いで私を見つめている。
徹也くんのこんな表情、今まで見たことない。
これじゃまるで、本当に私のことが好きだと言ってるみたいだ……
今ここであのことをカミングアウトしたら、徹也くんは受け入れてくれるのか、一か八か賭けてみることにした。
「違うの! 弘樹は……お互いの秘密を知ってる仲間なの」
「仲間……?」
「うん……弘樹の秘密は話せないけど、私……実は腐ってるほうの腐女子なの」
私のミジンコ並みに小さな勇気を振り絞った一世一代の告白は、沈黙の後、意外な結末を迎えることとなった。
「そんなこと……昔から知ってたよ。うちのおかん、久子おばさんから晶紀の本、借りて読んでるぞ」
その言葉に、私の頭の中は真っ白になった。
「……なんですと?」
「もう一つ付け加えると、今日、晶紀がうちに持ってきたのも、久子おばさんがチョイスした晶紀の本だ。……俺的には男同士のイチャイチャは受け付けないんだけど、あれの受けを晶紀に、攻めを俺に置き換えて、実際にあんなことやってみる?」
いつの間にか徹也くんは、自分呼びが僕から俺に変わっている。私の想像していた反応の斜め上をいく返答に、言葉が出てこない。
「と言うわけで、今から結婚指輪とそれまでの繋ぎでペアリング、それからスカートを買いに行くよ。身につける物を男が贈る意味、わかるよね?」
徹也くんの露骨な発言に、私は頬が熱くなる。
「おじさんから鍵、預かってるんだろう? その後で、予定通り新居の内覧に行こう。……オタクで腐女子の晶紀も好きだよ。小さい頃からずっと一緒にいたのに、いい加減、俺の気持ちに気づけよ」
徹也くんはそう言って席を立つと、支払いを済ませて店を後にした。私は徹也くんの後について行く。
「ねえねえ、ペアリングどんなのがいいかな」
徹也くんの告白がうれしくて、そっと腕を絡ませると、リトマス試験紙のように徹也くんの頬が赤く染まった。
「晶紀とお揃いならどんな指輪でもいいよ。値段気にせず好きなの選んで。その代わり、スカートは俺に選ばせてよ」
そう言うと、ショッピングモールへと向かった。
【終】
「あの日、部屋に晶紀がお守り落として帰って、中に指輪が入ってたことに気づいたんだ」
ここで一息吐いて、徹也くんが言葉を続けた。
「誰かからのプレゼントかと思ったら無性に腹が立ったから、僕のお守りとすり替えて、後日『部屋に落ちてた』って渡したんだけど。指輪が無くなってることに晶紀は全然気づいてなかったみたいで、何も言ってこなかったな」
徹也くんの言葉に、あやふやだった記憶が甦る。
当時の私は指輪を購入したことに満足して、存在をすっかり忘れていたから、お守りを返してもらった時も、中身の確認なんてしなかった。
「何となく指に着けてみたら、サイズがピッタリでさ。大学で地元を離れてからは、晶紀を身近に感じられると思って片時も外さなかった」
まさかずっと使っていただなんて……
「女の子に言い寄られたときは、内側に晶紀の名前が彫ってあるから『彼女からのプレゼント』って言って断るのにも重宝したよ。慎太郎がそれを見て、女装するときに僕をエスコートさせるものだから、慎太郎が僕の彼女って噂も流れたけど、お互いWINWINだからって放置してた」
徹也くんから渡された指輪は、メッキが剥がれて傷もたくさん付いているけど、長年大事に使ってくれていたことが伝わった。
「女性は婚約指輪をすれば、他の男からちょっかいを出されなくて済むと思ってたけど、白石くんは例外みたいだな」
上目遣いで私を見つめている。
徹也くんのこんな表情、今まで見たことない。
これじゃまるで、本当に私のことが好きだと言ってるみたいだ……
今ここであのことをカミングアウトしたら、徹也くんは受け入れてくれるのか、一か八か賭けてみることにした。
「違うの! 弘樹は……お互いの秘密を知ってる仲間なの」
「仲間……?」
「うん……弘樹の秘密は話せないけど、私……実は腐ってるほうの腐女子なの」
私のミジンコ並みに小さな勇気を振り絞った一世一代の告白は、沈黙の後、意外な結末を迎えることとなった。
「そんなこと……昔から知ってたよ。うちのおかん、久子おばさんから晶紀の本、借りて読んでるぞ」
その言葉に、私の頭の中は真っ白になった。
「……なんですと?」
「もう一つ付け加えると、今日、晶紀がうちに持ってきたのも、久子おばさんがチョイスした晶紀の本だ。……俺的には男同士のイチャイチャは受け付けないんだけど、あれの受けを晶紀に、攻めを俺に置き換えて、実際にあんなことやってみる?」
いつの間にか徹也くんは、自分呼びが僕から俺に変わっている。私の想像していた反応の斜め上をいく返答に、言葉が出てこない。
「と言うわけで、今から結婚指輪とそれまでの繋ぎでペアリング、それからスカートを買いに行くよ。身につける物を男が贈る意味、わかるよね?」
徹也くんの露骨な発言に、私は頬が熱くなる。
「おじさんから鍵、預かってるんだろう? その後で、予定通り新居の内覧に行こう。……オタクで腐女子の晶紀も好きだよ。小さい頃からずっと一緒にいたのに、いい加減、俺の気持ちに気づけよ」
徹也くんはそう言って席を立つと、支払いを済ませて店を後にした。私は徹也くんの後について行く。
「ねえねえ、ペアリングどんなのがいいかな」
徹也くんの告白がうれしくて、そっと腕を絡ませると、リトマス試験紙のように徹也くんの頬が赤く染まった。
「晶紀とお揃いならどんな指輪でもいいよ。値段気にせず好きなの選んで。その代わり、スカートは俺に選ばせてよ」
そう言うと、ショッピングモールへと向かった。
【終】
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