初恋Chasing

亜双にゃん

文字の大きさ
3 / 7
心から愛を込めて

第三話

しおりを挟む


 先生に告白したのは高校3年の夏頃だったと思う。

 俺はちょっとでも歌が上手くなりたくて、入学時から決めてたグリークラブに入った。
 そこの顧問だったのが先生との出会いだ。

 今でこそ、ミュージカルとか海外ドラマでグリーという言葉を耳にするけれど、当時はかなりマイナーなクラブで、俺が入った時には2年生が2人だけで、3年生は1人。3年の人は大学受験の為もう引退してた。

 同じ新入生も初めは何人か居たけど、進学校で部活を続けるのが無理だと、1学期が終わる頃には俺1人になった。

 最初の頃は先生がデカくて怖いと思って居たけど、笑ったら目尻が下がって、それに俺が2年になった頃は新入生は1人しか入らなくて。
 部員が少ないからって日曜日の昼食などは、よく奢りでファミレスに連れて行ってくれた。

 接点が多くなると、人柄も良く分かるもので優しくて、大きくて、真面目で、よく生徒の些事に気がつくいい先生だった。
 デカい分、怒った時の恐さは半端無かったけど、優しいだけじゃない所もいい。

 2、3年の時には現代国語の担当としても教えを受けた。
 
 俺は先生の授業が終わる度に、今日の部活の予定や、先生への質問や、それこそ些細な事を話題にして書き込んだメモ帳を小さく畳んで先生に渡したりして。

 そのメモの回答で先生も小さいメモをくれるんだけど、冗談で先生が最後に『心から愛を込めて』って書いてあるんだ。

 でも、これは誰にでもそう。
 プリントに伝言を書いてあれば、その最後には必ず『心から愛を込めて』がつく。

 プリントを生徒個人に返却する時や、ポストイットに指示を書いた時も、最後にはこれがつく。
 だから、俺も偶には真似をして書いたりしていた。

 本当に俺が愛を込めちゃってるって気付いたのは2年の後半だろう。

 普通なら、2年の3学期には引退になるはずの部活に、同じ2年の生徒が二学期後半から入ってきた。

 変な奴だな。とは思ったけど、少人数過ぎて歓迎するしかない。
 3人居れば3部構成の音階で歌える。
 伴奏もCDか、俺か先生がピアノを弾くしか無かったから、歌と伴奏が別々で居るのも有り難くて。

 でも、そいつが来てから俺は精神的にめちゃくちゃになった。

 偶に時間の合う昼休みや、学校が休みで部活があって俺と先生しかいない時は、先生が伴奏を弾いてくれて色んな歌を歌わせてくれる。
 先輩が居なくなって、新入生が入るまでの繋ぎで始めた事だったけど、楽しくてやめられなかったんだ。

 それがずっと続いてて、その打ち合わせにあの、心から~の言葉があるメモのやりとりも頻繁になってた。

 でも、新しく入ったその子が…間に入るようになって俺と先生に溝が出来た。

 今思えば、その子は先生の事が好きだったのかもしれない。
 今ならその子が嫉妬の気持ちから俺と先生を仲違いさせようとしたのかな。って考えられるんだけど、当時の俺はそんな悪意があるとは夢にも思わず。

『今日、先生機嫌が悪いけど何かした?』

『木原君、今日遅刻したの先生すごく怒ってたよ』

『こんな和音じゃダメだって。もっと考えろって。物凄く怖かった』

『今日は先生と会わない方がいいよ』

 楽譜の構成を変えたり、発声練習したり、行事で歌う曲を考えたり。伴奏が弾けるように練習したり。色々とする事が多い中で、先生との細かい打ち合わせにのんびりと小さい手紙でやり取りするわけにもいかずに忙しい時だった。

 どうして先生が怒っているのか分からなくて、その子が言うように先生が物凄く怒っていたら、怒られたらどうしようって。
 怒ってる理由が分からなくて、分からないことがより恐さを増していく。
 そうしたら余計に先生の所に行けなくなって、状況がどんどん悪化した。

 引退の話も出来なくて授業の後のメモも渡せなくなって、でも後輩の為に構成を考えたりしなきゃいけなくて。でも後輩の前で不仲だと示したくなくて普通を装って。

 精神的にぼろぼろなのに、受験勉強して部活して、そしたら3年の夏の終業式で俺はぶっ倒れた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

届かない手を握って

伊原 織
BL
「好きな人には、好きな人がいる」 高校生の凪(なぎ)は、幼馴染の湊人(みなと)に片想いをしている。しかし湊人には可愛くてお似合いな彼女がいる。 この気持ちを隠さなければいけないと思う凪は湊人と距離を置こうとするが、友達も彼女も大事にしたい湊人からなかなか離れることができないでいた。 そんなある日、凪は、女好きで有名な律希(りつき)に湊人への気持ち知られてしまう。黙っていてもらう代わりに律希から提案されたのは、律希と付き合うことだった───

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

処理中です...