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幼少期
2 顔合わせ
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アドリアンネが了承したことで、正式にアドリアンネと第二王子であるセルネスとの顔合わせが行われることになった。
アドリアンネも、珍しく着飾っている。
普段よりも豪華なドレスを身に纏い、ヘアアレンジも一段と凝っていた。
シエナがすべてやってくれて、侍女長という仕事柄、今は席を外している。
シエナのあのやりきったという表情を思い出すと、ありがたい気持ちはありながらも、笑みがこぼれてしまう。
普段はしっかりしているのに、そんな気の抜けた姿を見ると、おかしくてしかたなかった。
すると、シエナがアドリアンネを呼びに来た。
「アドリアンネさま。セルネス殿下がいらっしゃいました」
「い、今すぐ行きます」
アドリアンネは、少し焦って、つい口から言葉が出てしまう。
シエナは、そんなアドリアンネの様子に首をかしげていた。
そんな彼女の表情に気づくこともなく、アドリアンネは髪型が崩れないように気をつけながらも、足早に部屋を出ていった。
「そんなに楽しみでいらしたのかしら……?」
自分の案内もつけずに、一人で走り出してしまった主を見て、シエナはさらに困惑してしまった。
◇◇◇
「はぁ……はぁ……はぁ……」
アドリアンネは、珍しく駆け足になってしまったため、途中の廊下で息切れしていた。
アドリアンネは、生粋の貴族令嬢。体力なんてまったくなかった。
(あっ……セルネス殿下がどこにいらっしゃるのか聞いていなかったわ)
思わず飛び出してしまったため、大事なことを聞いていなかった。
セルネスがどこにいるのかわからなければ、当然どこに向かえばいいのかもわからない。
アドリアンネは、考えを巡らせる。
そして、応接室ではないかという考えにいたった。
他の家ではどうなのかはわからないが、ワーズソウル家では、客は応接室に案内するのが普通だ。
もし殿下がいらしたのであれば、応接室へと案内されているかもしれない。
そう思ったアドリアンネは、応接室へと向かうことにした。
幸か不幸か、ちょうどアドリアンネが向かっていた先に応接室がある。すぐそばだ。
(セルネス殿下をお待たせするようなことにはならなさそうだわ)
アドリアンネはほっとしながら、歩みを進めた。
そして、応接室の前と来る。そして、ドアをノックした。
後は、返事があるまで待つだけなのだが……一向に返事が返ってこない。
もしかして、道を間違えたのかと辺りを確認するが、間取りから見て、間違っているようには思わなかった。
(……誰かおられないのですか?)
アドリアンネは、不躾であることは承知の上で中に入る。
そこには、誰もいなかった。当然、セルネスの姿もない。
(ここではなかったということ……?)
そうなってしまうと、アドリアンネには心当たりがない。まさか、庭にでもいるのだろうか。でも、普通にまっすぐに応接室にご案内するはずなので、寄り道というのはあり得ないはず。
どうしようと部屋を出て、そのまま引き返そうとすると、不意にこちらに近づいてくる人影に気がついた。
アドリアンネは、その人影の正体に気づくと、慌ててカーテシーをして頭を下げる。
紙を持っているため、片手で袖を掴んでいる状態だ。
「あなたがアドリアンネ嬢ですか?頭をあげてもらってもかまいませんよ」
『アドリアンネ・ワーズソウルと申します。セルネス殿下』
アドリアンネは、自己紹介としてあらかじめ書いておいた紙を見せた。
そして、急いで次の言葉を書く。
『応接室のほうへどうぞ』
アドリアンネが扉を開けて、セルネスに入室を促す。
「では、お言葉に甘えて」
セルネスは、素直に中に入る。
そして、セルネスがソファに座ったので、アドリアンネも向かい側にちょこんと座った。
侍女は気遣いかはわからないが出ていってしまったので、部屋には二人だけだ。
「そういえば、あなたは話せないんでしたね。いつもその紙を持ち歩いているのですか?」
セルネスの質問に、アドリアンネはこくんとうなずく。
仕方ないとはいえ、そんな対応しかできないアドリアンネは申し訳なさでいっぱいだった。
(でも、ちょっと不躾よね……)
身分が上の立場である、しかも王族である王子に発声をせずにうなずきだけで返事をするなど、下手をすれば不敬罪。
アドリアンネが話せないというのが知れ渡っているからこそ、それが特例で許されているだけだ。
話せない相手に話せというほど無礼ではないはずだ。
「では、普通のペンでは不便ではありませんか?」
『大丈夫です。これは普通のペンではありませんので』
普通のペンは、いわゆる羽ペンと呼ばれるもの。インクをペン先につけて書かなければならないので、持ち歩いて書くのは少々不便だ。
だが、アドリアンネが持っているのは、いわゆる魔道具と呼ばれるもの。
ペンについている小さい宝石のような石。これは、霊石と呼ばれているもの。魔道具を使うときに使う石で、色によって効果の高さは変わる。
アドリアンネが使っているのは透明な霊石。
最も高い効果を持つものだ。そして、長く使うことができる。その分、高価でもあるが。
そして、この霊石のついているペンを使えば、インクが無くとも字が書ける。
『仕組みまではわかりませんが、これでインクが無くても書けるのです』
「なるほど。それは便利ですね」
セルネスはニコニコしながらそう言った。
アドリアンネの第一印象としては、何を考えているのかよくわからないといった感じだ。
アドリアンネは言霊の力を使える令嬢。そのためか、相手が言葉にどんな思いを乗せているのかなんとなくわかる。
その性質から、相手の考えもなんとなくわかるのだが、セルネス殿下はまるでわからない。
普段は相手のことが透けて見えるのであれば、セルネスは黒く汚れている……と言っては失礼かもしれないが、そんな感じだ。
(本心からの言葉ではなさそうだけど、嘘やお世辞を言っているようにも見えないのよね。王子殿下だからかしら)
アドリアンネは、セルネスが気になりじっと見つめてしまう。
そんなとき、セルネス殿下の瞳が少し揺れ動いたように見えた。
そのとき、アドリアンネは焦り出す。
(何か失礼なことを?あまりにも素っ気ない答え方だったのかしら。でも、紙に書く文字にどうやって真心を込めれば……)
そんな思考を巡らせて、アドリアンネが出した答えを紙に書いて、セルネス殿下に見せる。
『殿下、私が何か?』
少し遠回しにはなるが、自分が原因なのかもしれないと、アドリアンネはおそるおそる尋ねる。
セルネス殿下は、一瞬きょとんとしたように見えたが、すぐにクスクス笑い出す。
「いえ、そんなことはありませんよ。どうしたのですか?」
そう聞かれてしまうと、アドリアンネは何も言えない。
瞳が揺れ動いたように見えたので、何か不愉快に思わせるようなことをしたのではないかと思ってしまったからと言おうものなら、それこそ不愉快にさせてしまう。
だからといって、王族の質疑に答えないのは不敬罪に当たる。
『セルネス殿下の瞳が揺れ動いたように見えたので、少し気になったのです』
危ないかもしれないが、なるべく素直に話すことにした。下手にごまかすよりはいいと感じたから。
「あぁ、令嬢が見つめてこられるので、少し気になっただけですよ、お気になさらず」
『それは失礼しました』
いくらよくわからなかったとはいえ、確かにじっと見つめるのはいくらなんでも失礼すぎる。不躾なんてものではない。
「いえ、悪気はなかったのでしょう。そんなに申し訳ないと思うなら、次からお気をつけくださればかまいません」
『ありがとうございます』
セルネス殿下が微笑みながらそう言ってくれて、アドリアンネも優しいお方だと思いながら、心が温かくなるのを感じた。
アドリアンネも、珍しく着飾っている。
普段よりも豪華なドレスを身に纏い、ヘアアレンジも一段と凝っていた。
シエナがすべてやってくれて、侍女長という仕事柄、今は席を外している。
シエナのあのやりきったという表情を思い出すと、ありがたい気持ちはありながらも、笑みがこぼれてしまう。
普段はしっかりしているのに、そんな気の抜けた姿を見ると、おかしくてしかたなかった。
すると、シエナがアドリアンネを呼びに来た。
「アドリアンネさま。セルネス殿下がいらっしゃいました」
「い、今すぐ行きます」
アドリアンネは、少し焦って、つい口から言葉が出てしまう。
シエナは、そんなアドリアンネの様子に首をかしげていた。
そんな彼女の表情に気づくこともなく、アドリアンネは髪型が崩れないように気をつけながらも、足早に部屋を出ていった。
「そんなに楽しみでいらしたのかしら……?」
自分の案内もつけずに、一人で走り出してしまった主を見て、シエナはさらに困惑してしまった。
◇◇◇
「はぁ……はぁ……はぁ……」
アドリアンネは、珍しく駆け足になってしまったため、途中の廊下で息切れしていた。
アドリアンネは、生粋の貴族令嬢。体力なんてまったくなかった。
(あっ……セルネス殿下がどこにいらっしゃるのか聞いていなかったわ)
思わず飛び出してしまったため、大事なことを聞いていなかった。
セルネスがどこにいるのかわからなければ、当然どこに向かえばいいのかもわからない。
アドリアンネは、考えを巡らせる。
そして、応接室ではないかという考えにいたった。
他の家ではどうなのかはわからないが、ワーズソウル家では、客は応接室に案内するのが普通だ。
もし殿下がいらしたのであれば、応接室へと案内されているかもしれない。
そう思ったアドリアンネは、応接室へと向かうことにした。
幸か不幸か、ちょうどアドリアンネが向かっていた先に応接室がある。すぐそばだ。
(セルネス殿下をお待たせするようなことにはならなさそうだわ)
アドリアンネはほっとしながら、歩みを進めた。
そして、応接室の前と来る。そして、ドアをノックした。
後は、返事があるまで待つだけなのだが……一向に返事が返ってこない。
もしかして、道を間違えたのかと辺りを確認するが、間取りから見て、間違っているようには思わなかった。
(……誰かおられないのですか?)
アドリアンネは、不躾であることは承知の上で中に入る。
そこには、誰もいなかった。当然、セルネスの姿もない。
(ここではなかったということ……?)
そうなってしまうと、アドリアンネには心当たりがない。まさか、庭にでもいるのだろうか。でも、普通にまっすぐに応接室にご案内するはずなので、寄り道というのはあり得ないはず。
どうしようと部屋を出て、そのまま引き返そうとすると、不意にこちらに近づいてくる人影に気がついた。
アドリアンネは、その人影の正体に気づくと、慌ててカーテシーをして頭を下げる。
紙を持っているため、片手で袖を掴んでいる状態だ。
「あなたがアドリアンネ嬢ですか?頭をあげてもらってもかまいませんよ」
『アドリアンネ・ワーズソウルと申します。セルネス殿下』
アドリアンネは、自己紹介としてあらかじめ書いておいた紙を見せた。
そして、急いで次の言葉を書く。
『応接室のほうへどうぞ』
アドリアンネが扉を開けて、セルネスに入室を促す。
「では、お言葉に甘えて」
セルネスは、素直に中に入る。
そして、セルネスがソファに座ったので、アドリアンネも向かい側にちょこんと座った。
侍女は気遣いかはわからないが出ていってしまったので、部屋には二人だけだ。
「そういえば、あなたは話せないんでしたね。いつもその紙を持ち歩いているのですか?」
セルネスの質問に、アドリアンネはこくんとうなずく。
仕方ないとはいえ、そんな対応しかできないアドリアンネは申し訳なさでいっぱいだった。
(でも、ちょっと不躾よね……)
身分が上の立場である、しかも王族である王子に発声をせずにうなずきだけで返事をするなど、下手をすれば不敬罪。
アドリアンネが話せないというのが知れ渡っているからこそ、それが特例で許されているだけだ。
話せない相手に話せというほど無礼ではないはずだ。
「では、普通のペンでは不便ではありませんか?」
『大丈夫です。これは普通のペンではありませんので』
普通のペンは、いわゆる羽ペンと呼ばれるもの。インクをペン先につけて書かなければならないので、持ち歩いて書くのは少々不便だ。
だが、アドリアンネが持っているのは、いわゆる魔道具と呼ばれるもの。
ペンについている小さい宝石のような石。これは、霊石と呼ばれているもの。魔道具を使うときに使う石で、色によって効果の高さは変わる。
アドリアンネが使っているのは透明な霊石。
最も高い効果を持つものだ。そして、長く使うことができる。その分、高価でもあるが。
そして、この霊石のついているペンを使えば、インクが無くとも字が書ける。
『仕組みまではわかりませんが、これでインクが無くても書けるのです』
「なるほど。それは便利ですね」
セルネスはニコニコしながらそう言った。
アドリアンネの第一印象としては、何を考えているのかよくわからないといった感じだ。
アドリアンネは言霊の力を使える令嬢。そのためか、相手が言葉にどんな思いを乗せているのかなんとなくわかる。
その性質から、相手の考えもなんとなくわかるのだが、セルネス殿下はまるでわからない。
普段は相手のことが透けて見えるのであれば、セルネスは黒く汚れている……と言っては失礼かもしれないが、そんな感じだ。
(本心からの言葉ではなさそうだけど、嘘やお世辞を言っているようにも見えないのよね。王子殿下だからかしら)
アドリアンネは、セルネスが気になりじっと見つめてしまう。
そんなとき、セルネス殿下の瞳が少し揺れ動いたように見えた。
そのとき、アドリアンネは焦り出す。
(何か失礼なことを?あまりにも素っ気ない答え方だったのかしら。でも、紙に書く文字にどうやって真心を込めれば……)
そんな思考を巡らせて、アドリアンネが出した答えを紙に書いて、セルネス殿下に見せる。
『殿下、私が何か?』
少し遠回しにはなるが、自分が原因なのかもしれないと、アドリアンネはおそるおそる尋ねる。
セルネス殿下は、一瞬きょとんとしたように見えたが、すぐにクスクス笑い出す。
「いえ、そんなことはありませんよ。どうしたのですか?」
そう聞かれてしまうと、アドリアンネは何も言えない。
瞳が揺れ動いたように見えたので、何か不愉快に思わせるようなことをしたのではないかと思ってしまったからと言おうものなら、それこそ不愉快にさせてしまう。
だからといって、王族の質疑に答えないのは不敬罪に当たる。
『セルネス殿下の瞳が揺れ動いたように見えたので、少し気になったのです』
危ないかもしれないが、なるべく素直に話すことにした。下手にごまかすよりはいいと感じたから。
「あぁ、令嬢が見つめてこられるので、少し気になっただけですよ、お気になさらず」
『それは失礼しました』
いくらよくわからなかったとはいえ、確かにじっと見つめるのはいくらなんでも失礼すぎる。不躾なんてものではない。
「いえ、悪気はなかったのでしょう。そんなに申し訳ないと思うなら、次からお気をつけくださればかまいません」
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