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第三章 休みくらい好きにさせて
第14話 お出かけ 2
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そんなわけで、私は転生してからは初めてとなる、領地の下町に来た。リリアンの記憶でなんとなく覚えているけど、とにかく威張り散らしていたような思い出しかないので、なるべく封印しておくことにした。
「それで、砂糖ってどこに売ってるのかしら?」
私が辺りを見渡しながらボソッと呟くと、ソフィアが目を見開く。
「知らないの?」
「だって、何か買いたいときは家に来てもらうスタイルだったんだもの。店の位置なんて把握してないわよ」
貴族は、わざわざ出歩いたりはしない。こちらから出向くのではなく、向こうから出向いてもらうのが当然と考えるから。
さっそく壁にぶち当たったと頭を悩ませると、足元から声が聞こえる。
「ここから西にまっすぐ行けばあるよ」
その声に聞き覚えがあって、おそるおそる視線を向けると、そこにはレアが立っていた。
うおーい!なんでいるんだお前は!部屋に置いてきたはずだろうが!
「あれ?この子は?」
ほら、ソフィアに見つかった!いや、前も見つかってたけどね!?でも、あのときはソフィアと私の二人しかいなかったからいいものの、さすがにこんな街中で精神魔法は使えないだろう。
それじゃあ、もうレアの存在を公にするしかない。なるべく話さないように……。
「この子は、レアっていうの。お父様がつけてくれた護衛」
間違ってはいない。元々は護衛ではないが、今は護衛をしてくれているし。
「えっ!?そうなの!?どう見ても子どもなんだけど!?」
ソフィアがそう言うと、レアがぴょんと軽々しくジャンプして、ソフィアの頭にチョップを喰らわせる。
「あた!」
結構衝撃が強かったようで、子どもがやったチョップなのに、ソフィアは頭を抑えている。
「ご主人のお友達だからこれくらいにしたげるけど、次は容赦しないからね!」
「ご、ごめん……」
この思わず頭を抑えてしまうようなチョップでも、レアにとっては“これくらい”らしい……。
まぁ、全体重をかけて足を踏んづけたりしなかっただけ、まだましかもしれない。
そして、本当に子ども扱いされると怒るんだな。私は怒られたことがなかったから、てっきりメイアたちが大げさに言っているものだと思っていた。
「護衛なのに攻撃しないの」
レアを怒らせるようなことをしたソフィアも、ちょっとは悪いと思ったので、形だけ注意しておく。
「はーい……」
レアは、あまり納得していないような表情だが、とりあえずは私の言うことには従ってくれるらしい。
レアは、手慣れたもので、私たちを砂糖が売っているところまで案内してくれる。
しばらく進むと、そこには一人のお兄さんがいる。このお兄さんが店主だろうな。お兄さんの近くには、天秤のようなものもある。これで量り売りをするのだろう。
「なんだ、嬢ちゃん。また奥さんのおつかいか?」
どうやら、顔見知りみたいで、レアを姿を見ると、少し崩れた態度で話しかけてきた。
「ううん。ご主人とそのお友達のお付き添い」
「ほぉ。ご主人ってのはどっちだ?」
「私よ」
私が小さく右手をあげると、店主は私の全体を軽く見ると、納得したようにうなずいている。
「面白いもの好きのお前さんが気に入るわけだ」
私の外見はそんなにおかしなことでもあるのだろうか。私が自分の体を調べていると、レアがちょっと不満げになる。
「ご主人を物みたいに言わないでよ」
「すまんすまん。そんなつもりはなかったんだがな。でもなぁ、こんなレア物だと、いろんな奴らに狙われないか?」
レア物?私が?ゲームにそんな設定はあったかと、ソフィアの方に視線を向けると、ソフィアもわからないという表情を私に向けてきた。
それなら、ゲームのリリアンにそんなヘンテコな設定はなかったということか。それじゃあ、麗香の方か?私が転生者ということに気づいたとでもいうの?精神を見られるレアでも気づいていないというのに!……気づいてないよね?内緒にしてくれているだけなのかな?
「そのためにレアたちがいるんだから!」
「そうか~?お前だと、むしろそのご主人様がやられる確率が高くならないか?」
「なぬっ!?」
レアは驚いているけど、私はあまり否定できない。いや、黒輝石騒動のときに守ってくれたけどね。でも、私を突撃という名の凶器で気絶させているのも事実だ。しかも、一度ではなく、何度も。大型犬みたいな?そんな感じなんだよな。もうちょっと理性的に行動してほしいなぁと願ってしまう。
それにしても、この店主、やけにレアのことに詳しいな。レアが普通の子どもではないことには気づいているみたいだし、七影のことを知っているのだろうか?いや、いくらレアでも、見ず知らずの人に七影のことを話すとは思えない。
それなら、この店主がレアが話したりするよりも前から知っていることになるけど、そっちの方がもっとあり得ない気がする。
「レアはこんなにもご主人を愛してるのに!死期を早める死神みたいな言い方をしないでよ!」
レアは、ほっぺをぷくーと膨らませて反論している。私をぎゅーっと抱きながら。レアの身長が低いので、親の足にしがみついている子どもみたいになっているけど。
いや、だから、あながち間違ってないわよね?私を好意的に思ってくれるのは嬉しいけど、その好意が全部裏に出てるような感じなのよ。もうちょっとおとなしくしていてくれ。
ふと、視線を感じて、そちらの方を見てみると、ソフィアが冷たい目で私を見ている。
「ど、どうしたの……?」
気づかないうちに、この人を怒らせるようなことをしてしまっただろうかと、私は額に汗を浮かべる。
「いや、相変わらずの人たらしだと思いまして……ね」
ふっと蔑むような笑みを向けられたが、私はソフィアが何を言っているのか、理解ができなかった。
「それで、砂糖ってどこに売ってるのかしら?」
私が辺りを見渡しながらボソッと呟くと、ソフィアが目を見開く。
「知らないの?」
「だって、何か買いたいときは家に来てもらうスタイルだったんだもの。店の位置なんて把握してないわよ」
貴族は、わざわざ出歩いたりはしない。こちらから出向くのではなく、向こうから出向いてもらうのが当然と考えるから。
さっそく壁にぶち当たったと頭を悩ませると、足元から声が聞こえる。
「ここから西にまっすぐ行けばあるよ」
その声に聞き覚えがあって、おそるおそる視線を向けると、そこにはレアが立っていた。
うおーい!なんでいるんだお前は!部屋に置いてきたはずだろうが!
「あれ?この子は?」
ほら、ソフィアに見つかった!いや、前も見つかってたけどね!?でも、あのときはソフィアと私の二人しかいなかったからいいものの、さすがにこんな街中で精神魔法は使えないだろう。
それじゃあ、もうレアの存在を公にするしかない。なるべく話さないように……。
「この子は、レアっていうの。お父様がつけてくれた護衛」
間違ってはいない。元々は護衛ではないが、今は護衛をしてくれているし。
「えっ!?そうなの!?どう見ても子どもなんだけど!?」
ソフィアがそう言うと、レアがぴょんと軽々しくジャンプして、ソフィアの頭にチョップを喰らわせる。
「あた!」
結構衝撃が強かったようで、子どもがやったチョップなのに、ソフィアは頭を抑えている。
「ご主人のお友達だからこれくらいにしたげるけど、次は容赦しないからね!」
「ご、ごめん……」
この思わず頭を抑えてしまうようなチョップでも、レアにとっては“これくらい”らしい……。
まぁ、全体重をかけて足を踏んづけたりしなかっただけ、まだましかもしれない。
そして、本当に子ども扱いされると怒るんだな。私は怒られたことがなかったから、てっきりメイアたちが大げさに言っているものだと思っていた。
「護衛なのに攻撃しないの」
レアを怒らせるようなことをしたソフィアも、ちょっとは悪いと思ったので、形だけ注意しておく。
「はーい……」
レアは、あまり納得していないような表情だが、とりあえずは私の言うことには従ってくれるらしい。
レアは、手慣れたもので、私たちを砂糖が売っているところまで案内してくれる。
しばらく進むと、そこには一人のお兄さんがいる。このお兄さんが店主だろうな。お兄さんの近くには、天秤のようなものもある。これで量り売りをするのだろう。
「なんだ、嬢ちゃん。また奥さんのおつかいか?」
どうやら、顔見知りみたいで、レアを姿を見ると、少し崩れた態度で話しかけてきた。
「ううん。ご主人とそのお友達のお付き添い」
「ほぉ。ご主人ってのはどっちだ?」
「私よ」
私が小さく右手をあげると、店主は私の全体を軽く見ると、納得したようにうなずいている。
「面白いもの好きのお前さんが気に入るわけだ」
私の外見はそんなにおかしなことでもあるのだろうか。私が自分の体を調べていると、レアがちょっと不満げになる。
「ご主人を物みたいに言わないでよ」
「すまんすまん。そんなつもりはなかったんだがな。でもなぁ、こんなレア物だと、いろんな奴らに狙われないか?」
レア物?私が?ゲームにそんな設定はあったかと、ソフィアの方に視線を向けると、ソフィアもわからないという表情を私に向けてきた。
それなら、ゲームのリリアンにそんなヘンテコな設定はなかったということか。それじゃあ、麗香の方か?私が転生者ということに気づいたとでもいうの?精神を見られるレアでも気づいていないというのに!……気づいてないよね?内緒にしてくれているだけなのかな?
「そのためにレアたちがいるんだから!」
「そうか~?お前だと、むしろそのご主人様がやられる確率が高くならないか?」
「なぬっ!?」
レアは驚いているけど、私はあまり否定できない。いや、黒輝石騒動のときに守ってくれたけどね。でも、私を突撃という名の凶器で気絶させているのも事実だ。しかも、一度ではなく、何度も。大型犬みたいな?そんな感じなんだよな。もうちょっと理性的に行動してほしいなぁと願ってしまう。
それにしても、この店主、やけにレアのことに詳しいな。レアが普通の子どもではないことには気づいているみたいだし、七影のことを知っているのだろうか?いや、いくらレアでも、見ず知らずの人に七影のことを話すとは思えない。
それなら、この店主がレアが話したりするよりも前から知っていることになるけど、そっちの方がもっとあり得ない気がする。
「レアはこんなにもご主人を愛してるのに!死期を早める死神みたいな言い方をしないでよ!」
レアは、ほっぺをぷくーと膨らませて反論している。私をぎゅーっと抱きながら。レアの身長が低いので、親の足にしがみついている子どもみたいになっているけど。
いや、だから、あながち間違ってないわよね?私を好意的に思ってくれるのは嬉しいけど、その好意が全部裏に出てるような感じなのよ。もうちょっとおとなしくしていてくれ。
ふと、視線を感じて、そちらの方を見てみると、ソフィアが冷たい目で私を見ている。
「ど、どうしたの……?」
気づかないうちに、この人を怒らせるようなことをしてしまっただろうかと、私は額に汗を浮かべる。
「いや、相変わらずの人たらしだと思いまして……ね」
ふっと蔑むような笑みを向けられたが、私はソフィアが何を言っているのか、理解ができなかった。
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