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17. 領地視察 5
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次にわたくしたちが来たのは、木工の作業場です。わたくしが購入した木箱も、ここで作られているとか。
木を加工する作業を行う場所だからか、作業している人数にしては、作業場は広めになっています。
その近くには、いくつか丸太も積まれております。すでに乾燥しているのか、伐採されたものを運んだだけなのかはわかりませんが。
養父さまは、ここの責任者とお話しすることになってしまったので、作業場の見学は、わたくしとルークだけで行うこととなりました。
少し見て回るだけでも、すべてが新鮮に映りますわね。
「……あら?あの作業は……」
わたくしが、邪魔にならないように距離を開けながら周回していると、ある作業が目に止まりました。
それは、魔石を嵌め込むための窪みを作る彫りの作業です。
時間にして、一分ほどだったと思いますが、あっという間にわたくしの持っている木箱と同じような窪みができあがり、それを近くに置くと、新しいものを手に取りました。
魔石が嵌め込めるかの確認は必要ないのでしょうか?それとも、そんなことをする必要などないほどに手慣れているのかもしれません。
一連の流れすらも、手に取るように速いです。
屋敷で見た調度品で素晴らしい腕前なのは知っておりましたが、速さもなかなかのものですわ。
でも、少し気になるのが。
「ルーク、ここの方たちは魔術付与はなさらないのですか?」
魔術付与というのは、道具に魔術を付与することで、効能をあげたり、新たな効果を付属する技術のことです。
彫り師の腕前はなかなかのものですが、もし道具に鋭利化の魔術を付与すれば、作業はさらに速くなりますし、できあがった木箱を硬化すれば、弱いものでも石と同等以上に頑丈にすることができます。
「魔術付与は、誰もができるわけではないからな。それに、作業は流れのようになっているから、途中から魔術付与をしてしまえば、感覚が狂うだろうから、エリスがかけるのもやめたほうがいい」
「……そうですわね」
確かに、各々のやり方があるのでしょうし、何も知らない素人がとやかく口を出すべきではありません。
「申し訳ありません。何も知らなくて」
ルークの言う通り、領地に来るまでに少しでも勉強しておくべきでしたわね。
学園に通っていたころは、ちゃんと予習なども行っていたというのに、最近は変わった環境に慣れるまでに時間がかかったお陰で、いろいろと後回しになっています。
それではいけませんね。早く慣れないと。
「確かに知らなすぎだとは思うが、それなら知ればいいだけだ」
「……はい」
ルークの言う通りですわね。領地滞在が一日だけで終わることはないでしょうし、屋敷に戻ったら書庫で調べてみることとしましょう。
養父さまにもいろいろとお聞きするのもいいかもしれません。
「まぁ、今日だけは気になることがあれば、僕が答えられる範囲で答えてやる。ただし、一度しか言わないからな」
ルークは、少し厳しい口調でそう言って、駆け足で養父さまの元に戻ります。
わたくしは、少し笑いながらルークの後を追いかけました。
木を加工する作業を行う場所だからか、作業している人数にしては、作業場は広めになっています。
その近くには、いくつか丸太も積まれております。すでに乾燥しているのか、伐採されたものを運んだだけなのかはわかりませんが。
養父さまは、ここの責任者とお話しすることになってしまったので、作業場の見学は、わたくしとルークだけで行うこととなりました。
少し見て回るだけでも、すべてが新鮮に映りますわね。
「……あら?あの作業は……」
わたくしが、邪魔にならないように距離を開けながら周回していると、ある作業が目に止まりました。
それは、魔石を嵌め込むための窪みを作る彫りの作業です。
時間にして、一分ほどだったと思いますが、あっという間にわたくしの持っている木箱と同じような窪みができあがり、それを近くに置くと、新しいものを手に取りました。
魔石が嵌め込めるかの確認は必要ないのでしょうか?それとも、そんなことをする必要などないほどに手慣れているのかもしれません。
一連の流れすらも、手に取るように速いです。
屋敷で見た調度品で素晴らしい腕前なのは知っておりましたが、速さもなかなかのものですわ。
でも、少し気になるのが。
「ルーク、ここの方たちは魔術付与はなさらないのですか?」
魔術付与というのは、道具に魔術を付与することで、効能をあげたり、新たな効果を付属する技術のことです。
彫り師の腕前はなかなかのものですが、もし道具に鋭利化の魔術を付与すれば、作業はさらに速くなりますし、できあがった木箱を硬化すれば、弱いものでも石と同等以上に頑丈にすることができます。
「魔術付与は、誰もができるわけではないからな。それに、作業は流れのようになっているから、途中から魔術付与をしてしまえば、感覚が狂うだろうから、エリスがかけるのもやめたほうがいい」
「……そうですわね」
確かに、各々のやり方があるのでしょうし、何も知らない素人がとやかく口を出すべきではありません。
「申し訳ありません。何も知らなくて」
ルークの言う通り、領地に来るまでに少しでも勉強しておくべきでしたわね。
学園に通っていたころは、ちゃんと予習なども行っていたというのに、最近は変わった環境に慣れるまでに時間がかかったお陰で、いろいろと後回しになっています。
それではいけませんね。早く慣れないと。
「確かに知らなすぎだとは思うが、それなら知ればいいだけだ」
「……はい」
ルークの言う通りですわね。領地滞在が一日だけで終わることはないでしょうし、屋敷に戻ったら書庫で調べてみることとしましょう。
養父さまにもいろいろとお聞きするのもいいかもしれません。
「まぁ、今日だけは気になることがあれば、僕が答えられる範囲で答えてやる。ただし、一度しか言わないからな」
ルークは、少し厳しい口調でそう言って、駆け足で養父さまの元に戻ります。
わたくしは、少し笑いながらルークの後を追いかけました。
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