【長編版】婚約破棄と言いますが、あなたとの婚約は解消済みです

りーさん

文字の大きさ
18 / 25

18. 代官邸

しおりを挟む
 お知らせとして乗せたままにしていたのですが、やっぱり引っかかったので、急遽短編を削除しました。なので、少し話の内容が変わるかもしれません。(大筋は変わりませんが)
 一応、警告メールにも削除したことを返信しておきます。一時期、非公開になってすみません。

ーーーーーーーーーーーーーー

 作業場の見学が終わり、一通り街は見終わったので、わたくしたちは代官邸へと向かうことになりました。
 代官邸と作業場はそこまで離れてはいないらしく、五分程度で到着しました。

(領主邸とはだいぶ趣が違いますわね……)

 領主邸は、きらびやかに飾り立てており、尊厳を全面に押し出しておりましたが、代官邸は、それなりの広さはあるものの、デザイン自体はありふれたもので、謙虚さを感じられます。
 代官は、あくまでも領主の代わりに過ぎないということでしょうか?

 周囲を確認しつつ、わたくしたちが建物の中へと入ると、一人の男性が出迎えます。
 周りに立っている統一感のある服を着ているのが使用人だとすると、唯一高級な生地を身に纏っているこの男性が代官なのでしょう。

「ようこそおいでくださいました」
「ああ。少しの間世話になる。今日は息子たちも一緒でな」

 養父さまに手で促されて、わたくしたちは少し前に出ます。

「エリスは初対面だろう。ルミニエの代官のロバートだ。ロバート、この子は先日に私の養女となったエリスだ」

 お互いに紹介された後、わたくしたちは視線を合わせます。
 先に頭を下げたのは、ロバート。

「初めまして、エリスお嬢さま。ロバート・クロークと申します」
「エリス・ルミナーラと申します。よろしくお願いしますね、ロバート」

 わたくしは、軽く会釈する程度で済ませておきました。こちらのほうが身分が高いことを示すためです。

 ライル王国と同じように、帝国でも通常は、初対面の相手と挨拶を交わすときは、身分が下の者から挨拶します。相手を紹介するときも同様で、身分が低い者から紹介します。
 そのために、養父さまはロバートを先に紹介したわけです。

 そして、身分が低い者は、相手よりも長く頭を下げることが求められます。そのため、身分が高いほうは、礼を短くする必要があるのです。

 わたくしは養子ですので、実子のルークよりは立場が低い傾向にあります。そして、養子だからという理由で見下すような人間は、一定数存在するのも確かなので、わたくしは自分の存在を示す必要があるのです。
 彼は、わたくしにもだいぶへりくだっているので、露骨すぎる必要はなさそうですが。

「エリス、ルーク。私はロバートから近況を聞いているから、二人は部屋で休んでいなさい。明日は少し早くに出発するからな」
「「はい」」

 どうやら、本日は代官邸に泊まり、翌日にここを出るようですわね。

「では、お二人を手の空いている者に案内させましょう」

 ロバートは、近くで待機している使用人に声をかけて、わたくしたちを案内するように伝えます。

 わたくしには一人の侍女が、ルークには執事が案内につくこととなりました。

 わたくしは、案内の道中で、内装を観察していると、その内部が領主邸と酷似していることに気づきます。
 代官邸も、外観は粗末なものでしたが、内装にはそれなりに手間をかけているようです。特産品を購入することで、経済を回しているのかもしれませんわね。

 わたくしも、もう少し購入しておくべきだったでしょうか。

「お嬢さまのお部屋は、こちらになります」

 そう言って、侍女が開けてくれたドアを通ると、そこはきらびやかな空間が広がっていました。

 ふんだんにレースを使って飾り立てたベッドや、金や銀で作られた装飾品の数々。
 その装飾品が、レースカーテンを通して部屋へと入ってきた陽光に照らされ、一層眩しく輝いています。

 この空間で、休まる気がしないのですけど……。部屋を用意してくれたロバートには申し訳ありませんが、少し装飾品を減らしたほうがよさそうですわね。
 でも、部屋に入って早々に文句をつけると、間違いなくわたくしの印象は悪くなるでしょうし、養父さまかルークが一緒にいる場で、それとなく話しておくことにしましょう。

「晩餐の時間にお呼びしますので、ごゆっくりおくつろぎください」
「ええ」

 晩餐の時間!
 おそらく、ロバートもその場にいるでしょうし、養父さまやルークも同席しているでしょうから、そのときに話に出してみましょう。

 晩餐の時間まで暇なことですし、領地についての勉強でもしましょうか。

「あなた、領地についての資料はあるかしら?」
「はい、ございますよ。ご覧になりますか?」
「ええ、お願い」
「かしこまりました」

 侍女は頭を下げて部屋から出ていきました。

 さて、久々の勉強を頑張るとしましょうか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

その支払い、どこから出ていると思ってまして?

ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。 でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!? 国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、 王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。 「愛で国は救えませんわ。 救えるのは――責任と実務能力です。」 金の力で国を支える公爵令嬢の、 爽快ザマァ逆転ストーリー! ⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

『親友』との時間を優先する婚約者に別れを告げたら

黒木メイ
恋愛
筆頭聖女の私にはルカという婚約者がいる。教会に入る際、ルカとは聖女の契りを交わした。会えない間、互いの不貞を疑う必要がないようにと。 最初は順調だった。燃えるような恋ではなかったけれど、少しずつ心の距離を縮めていけたように思う。 けれど、ルカは高等部に上がり、変わってしまった。その背景には二人の男女がいた。マルコとジュリア。ルカにとって初めてできた『親友』だ。身分も性別も超えた仲。『親友』が教えてくれる全てのものがルカには新鮮に映った。広がる世界。まるで生まれ変わった気分だった。けれど、同時に終わりがあることも理解していた。だからこそ、ルカは学生の間だけでも『親友』との時間を優先したいとステファニアに願い出た。馬鹿正直に。 そんなルカの願いに対して私はダメだとは言えなかった。ルカの気持ちもわかるような気がしたし、自分が心の狭い人間だとは思いたくなかったから。一ヶ月に一度あった逢瀬は数ヶ月に一度に減り、半年に一度になり、とうとう一年に一度まで減った。ようやく会えたとしてもルカの話題は『親友』のことばかり。さすがに堪えた。ルカにとって自分がどういう存在なのか痛いくらいにわかったから。 極めつけはルカと親友カップルの歪な三角関係についての噂。信じたくはないが、間違っているとも思えなかった。もう、半ば受け入れていた。ルカの心はもう自分にはないと。 それでも婚約解消に至らなかったのは、聖女の契りが継続していたから。 辛うじて繋がっていた絆。その絆は聖女の任期終了まで後数ヶ月というところで切れた。婚約はルカの有責で破棄。もう関わることはないだろう。そう思っていたのに、何故かルカは今更になって執着してくる。いったいどういうつもりなの? 戸惑いつつも情を捨てきれないステファニア。プライドは捨てて追い縋ろうとするルカ。さて、二人の未来はどうなる? ※曖昧設定。 ※別サイトにも掲載。

処理中です...