聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
5 / 107
第一章 森の少女達

第4話 二人の再会

しおりを挟む
 クラウド様達が森に来てからもう3日。私は、あの時の言葉を後悔していた。

 いくら、この大切な場所を馬鹿にされたような発言をしたからと言って、あの扱いは良くなかったんじゃないか?もっと言い方があったんじゃないか?

 母様だったら、きっともっと上手くやった。怒ったとしても、相手を傷つけないように出来た。

『そんなに気にする事はない』

 突然、リーズの声が頭に響く。

『お前は充分優しかっただろ。私だったら、あの人間達を殺していたかもしれない』

 冗談だと思いたいけど、リーズは冗談は嫌う。本気なんだと悟って、少し体が震える。

『そんな事しないでよ』
『やらねぇよ。そんな事したら、父上達を殺した奴らと同じになるだろ』

 リーズの言葉に、私はあの人達を思い出す。

 今まで、いろんな人に会ってきた。その全てを覚えてはいないけど、あの人達は、何年経っても忘れる事は出来ないだろう。

『ねぇ、リーズ』
『何だ?』
『あの人達が生きてたらどうする?』
『当然、殺す……と言いたいが、カオルは望んでないんだろ?』
『うん』

 当たり前じゃない。殺されて嬉しいなんて思わない。どんな悪人でも、なるべく生きていて欲しいとは思う。

『お前のそういう所は母上にそっくりだな』
『でも、リーズは気遣ってくれるじゃない。リーズのそういう所も母様にそっくりだと思うけど?』

 ため息混じりにボソッと呟いてきたので、私もリーズに言い返す。

『まぁ、カオルが嫌がる事はやらないから安心しな。森を出たいなら好きにすれば良い』
『ありがとう、リーズ』

 私が、お礼を言うと、『フン』と言ってまた奥に引っ込んでしまった。

 本当に素直じゃないなぁ。リーズは、あまり表に出たがらない。

 私は体が丈夫な人間って感じだけど、リーズは、人間の体に翼と爪と角がついている感じ。空を一人で飛ぶ事が出来るのは、リーズだけ。多分、入れ替わる時に、リーズに宿っている邪龍の力が、体を龍に近づけちゃうんだと思う。

 表に出るのは、私が命の危機に瀕した時だけ。この前も、獣に襲われた時に助けてくれたし、根はすごく優しい。表に出たがらないのも、周りを傷つけたくないからだろうし。ただ、人間を信用出来ないだけ。

 でも、あの剣を向けられた時に出てこなかったのを見ると、多分、あの人達を少しは信用してたんじゃないかな?本当に剣で傷つけるつもりだったなら、変われって言ってくるし。

「カオルサマ」

 後ろから声が聞こえて、振り返る。

 精霊?確か、食糧を探しに行ってたはずだけど。

「アノニンゲン、キタ」
「あの人間?」

 誰の事かな?

「マエニキタオトコ。キゾクノオトコ」

 貴族の……あっ、もしかして……

「クラウド様?」

 私がたずねると精霊はコクンと頷く。

「でも、良く入れるのを許したわね。あなた達もかなり怒っていたのに……」

 あの時、精霊もかなり怒っていた。

 精霊は自然の化身。精霊の許可が無ければ、森を出る事すら出来ない。だから、外の世界では迷いの森と呼ばれているらしい。そんなだから、意地でもここに辿り着けないようにすると思っていたのに。

「アノニンゲン、アヤマル。ダカライレタ」

 アヤマル……謝るって事?もしかして、謝りに来たのかな?

 わざわざ、ここまで来て?私の言い方も悪かったのに。精霊術士の素質があるっていう私の事を諦めてないのかな?私を森から連れ出すために来たのかな?

 考えていても分からない。とりあえず、もてなしの準備をして、出迎えに行かないと。

「近くまで迎えに行ってくる」

 私がそう言うと、精霊達は慌てて止めてくる。

「カオルサマ、ココニイル」
「ボクタチ、ミニイク」
「えっ?でも……」

 私に会いに来るんだったら、私が直接出迎えないと失礼なんじゃない?精霊達に任せたら、クラウド様を怒らせてしまうかもしれない。相手を怒らせたりするのは駄目だって母様が言ってたし。

 何度私が行くと言っても、精霊達は聞いてくれない。お互い譲り合わない。いつになったら、この攻防戦が終わるのかと思っていたら、リーズが話しかけてきた。

『こいつらに任せても良いんじゃないか?』
『で、でも……』

 リーズは精霊達の味方なんだ。

『変な所で頑固なのは父上にそっくりだな。向こうは謝りに来る立場だろ?だったら、例えムカついてたって文句は言えないだろうさ』
『それは……そうかもしれないけど』

 でも、やっぱり私が直接出迎えた方が良いよね。もう一回精霊を説得してみようと周りを見ると、誰もいない。

 あれ?いつも、誰か一人は残っているはずなのに。

『あいつらなら、私と話している間にどっか行ったみたいだぞ』
『えっ?いつの間に……って何でリーズは知ってるの?』
『カオルの視界から見てたからな』

 そっか。そう言えば、私達は五感を共有出来るんだった。

 精霊達は、自分達で迎えに行ったのかな?なら、ここで待ってた方が良いよね。

 自分の椅子に座って精霊達の帰りを待っていると、入り口を精霊が通り抜けてきた。

「アノニンゲン、ツレテキタ」
「ありがとう」

 精霊の奥にいる人影は、やっぱりクラウド様だった。

『あいつ、何しに来たんだ?』
『私に謝りに来たんだって』

 リーズと会話しながら、クラウド様に椅子に座るように促す。

「カオル、もしかしたら、すでに精霊から聞いているかもしれないが、改めて言わせて欲しい。……すまなかった」

 開口一番、クラウド様は私に謝ってきた。

「お気になさらず。私も、あの態度は良くなかったと思いますし、お互い様というやつですよ」
「いや、君が怒るのは当然の事だ。私も逆の立場だったら許せなかっただろう」

 もう良いと言っているのに、クラウド様は一歩も譲らない。もしかして、さっきの私はこんな感じだったの?それなら、リーズに呆れられるのは当然か。

「なら、その謝罪を受け入れる代わりに、条件を飲んで頂けますか?」
「条件……かい?」
「はい。私の要求を飲んで頂けるなら、謝罪を受け入れ、森から出る事も視野に入れます」

 私がそう言うと、クラウド様は、目を見開いている。

 本当についてきてくれるとは思っていなかったのかな?

「分かった。それで、条件とは?」
「話すと長くなるので、場所を変えましょうか」

 クラウド様は顔に疑問を浮かべる。条件を話すだけだと思っていただろうから、当然だろう。

『リーズ、良いかな?』
『カオルの好きにすれば良いんじゃないか?父上も母上も許してくれるだろ』

 相変わらず素直じゃない。クラウド様は信用出来るって言えば良いのに。


 私の部屋に着いた。

 クラウド様に、椅子に座ってもらって、私は向かい側に座る。

「じゃあ、お話しします。私の……いえ、私達の・・・事を」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...