聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
14 / 107
第一章 森の少女達

第13話 分からない

しおりを挟む
 薬草を精霊達も含めた全員で持って帰り、来た道を戻ってギルドについた。その間も、リーズは話しかけてこなかった。

「……さん」

 やっぱり怒ってるのかな?無理やり奥に引っ込めさせたから。

「……ルさん」

 でも、教えてくれないリーズも悪い気が──

「カオルさん!」
「はっ、はい!」
「先ほどから呼んでいるのに、なぜ返事をしてくれないのですか」

 えっ、嘘。全然気づかなかった。

「すみません……」
「ずっと上の空ですが、何かありましたの?わたくしには心当たりがないのですが……」
「いえ、何でもないです。少しボーっとしていただけで」

 ルーフェミア様もレナード様も私達の事は知らない。なので、話せる訳もない。クラウド様なら良いかもしれないけど……

 ……帰ったら、相談してみようかな?一人で考えても仕方ないし。

「ひとまず、査定をしますわよ」
「サテイ……ですか?」

 また知らない言葉が出てきた。“サテイ”って何?
他の人を見ても、何の反応もないから、ここでは当たり前に使われているのかな?

「カオルさん?どうしましたの?」
「お嬢様、おそらく査定の意味をご存じないかと……」
「そうでしたの?」
「はい、知りません……」
「薬草採取に向かう前に説明があったでしょう?五本で銅貨一枚ですから、本数や本物かどうか確かめるんですよ」

 つまり、鑑定するって事かな?確かに、そういう事をしないと、不正とかがあるかもしれない。
 
 数えて貰った所、全部本物で、1000本ほどあった。私の精霊が色々な所から採ってきてくれたので、数が多かったみたい。

 五本で銅貨一枚なので、銅貨二百枚になる。もしこの場で貰うんだとしたらどうしよう。二百枚一気に貰っても困るんだけど。

「はい。こちらが報酬になります」

 そう言って、お姉さんは銀色の小さく丸い物を二枚渡してくる。見た感じ銀で出来ているから、銀貨って呼ばれるものじゃないかな?銅貨じゃないの?

 報酬を受け取って、ギルドから出て宿の部屋に戻る。部屋で、ルーフェミア様にさっきの事を聞いてみる。

「さっきは何で銅貨じゃなかったんですか?」
「銅貨だと数が多すぎるからですわ。お金にも種類がありまして、全部で10種類ありますわ。小さいものから、小銅貨、中銅貨、大銅貨、小銀貨、中銀貨、大銀貨、小金貨、中金貨、大金貨、白金貨になりますわ」

 銅貨、銀貨、金貨がそれぞれ三種類ずつあって、一番価値があるのは白金貨になるのか。

「中の貨幣は中をつけずに呼ばれる事が多いんですのよ。ですので、さっきの銅貨は中銅貨という意味ですわ」
「それで、なぜ銀貨だったんですか?」
「あれは中銀貨ではなく小銀貨ですわ。銅貨十枚で大銅貨一枚。そうやって上がっていくんですの。先ほどは銅貨二百枚でしたから、小銀貨二枚で渡されたのですわ」

 同じものを十枚で一つ上の価値になるって事か。つまり、小銀貨は銅貨百枚分って事ね。

「では、話を戻して配分したい所ですが、わたくしは貰えませんわね」
「なぜですか?」
「ほとんどカオルさんの手柄ですもの。貢献度に応じて配分するのが当然ですわ」

 “コウケンド”……?また知らない言葉が出てきた。 何回知らない言葉を聞く事になるんだろう?

「あっ……貢献度というのは、複数で仕事をした時に、どれだけ役に立ったかという事ですわ。この薬草採取でいうと、採取した薬草の数という事ですわね」

 貢献度が薬草の数なら、確かに私の方がルーフェミア様よりも多い。でも、ルーフェミア様よりも多いのは、私の方が協力してくれる精霊が圧倒的に多かったからだし、私の力だけではない。

 そう言っても、真面目なルーフェミア様は受け取ろうとしないかもしれない。だからといって、私だけ多く貰うのも申し訳ない。どうしよう……私が折れるかルーフェミア様を説得するか……

「どうしましたか?今日は上の空になる事が多いですわね」
「あっ……えっと……」
「……疲れているようですわね。今日はわたくしは別室で休みますから、ゆっくりとお休みください」

 何も言う暇無く、バタンとドアが閉まる。

 ……何か、私らしくないな。リーズにも変な所で優しかったり、頑固だって言われてたのに。

 何でだろう。リーズの事を考えると、胸がモヤモヤする。今まで、こんな事は無かったのに。何の意識もなしに、手のひらを見てみる。すると、わずかに黒いもやがある。それにハッとなるけど、思ったよりは驚かなかった。何で黒いもやを纏っているのか、何となく分かる。多分、リーズの事が許せないから。

 でも、分かっててもどうすれば良いのか分からない。許せば良いだけ。でも許せない。リーズだけずるい。知ってたんなら、両親の事が恋しかった時に、聞かせてくれれば良かったのに。

 そんな思いが消えてくれない。母様なら、どうしたのかな?いつも笑っていたけど、人間なんだから、辛かった事なんてたくさんあったはず。私みたいに、怒った事もあるはず。

 母様、私はどうすれば良いのでしょうか?このまま仲違いはしたくないのです。でも、私の醜い感情がリーズと話す事すら許してくれない。

 父様、私にも記憶伝達は出来なかったのですか?なぜ、リーズにだけ引き継がれられたのですか?

 リーズは、何で教えてくれなかったの?私に教えたくなかったの?リーズが寂しくなかったのは、強かったのは、母様と父様の事をたくさん知っていたからなの?

 分からない。分からない。自分の事なのに。

 何かが頬を伝う。撫でてみると、冷たいものが流れている。

 これは……涙?

 泣いたのなんて、両親を亡くして、親が恋しかったあの時以来。泣くなんて、悲しいのかな?何で悲しいのかな?

 その時、誰かが来た気配がした。思わず布団を深く被る。

「カオル、私だ。入っても良いかい?」
「…………どうぞ」

 私がそう言うと、ドアの開く音がする。その人物の足音は、こちらに近づいてくる。

「ルーから相談を受けてね。魔獣が出てからカオルの様子が変だって。何か、悩み事があるんなら聞くよ」
「……」

 私一人で考えても分からないなら、相談した方が良いのかな?でも……

「もちろん、無理にとは言わない。カオルが言いたくなった時で構わないよ。君の悪いようにはしないと誓ったからね」

 その言葉を聞いて、森での事を思い出す。私でも忘れかけていたのに、覚えていてくれたんだ。ここまで言ってくれてるし、相談してみようかな。

「あの……」

 布団から少し顔を出す。

「お話を聞いてくれますか?クラウド様」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について

国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”  人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

処理中です...