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第一章 森の少女達
第14話 あなたがいるだけで
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カオルは話し始める。
ギルドに行って冒険者に登録した事。依頼を受けてあの森に行った事。そこで魔獣と遭遇した事。その時にリーズが話しかけてきた事。
「それで、彼女が記憶伝達という能力で父親の記憶を引き継いでいたという事かい?」
「リーズいわくそうみたいです。私も良く分かりませんが」
「そうか……」
クラウドは考える素振りをする。
何となく分かってきた。おそらく仲間外れのような感覚なのだろうと。同じ時に生まれ、同じ場所で同じ時間を過ごした自分自身とも言えるような存在が、自分の知らない事を知っている。父親の記憶を引き継いでいるので、カオルだけが知らない事だってあるかもしれない。
「カオルは、彼女の事をどう思っているんだい?」
「分かりません。自分の気持ちを律する事が出来ないんです。仲直りしたいのに許せない。そんな思いです」
「なら、その事を素直に話してみれば良い。自分の事は、自分以外は一番身近な存在が良く知っている。カオルにとっては、一番身近な存在は彼女じゃないか?」
クラウドにそう言われた時、今までの思い出がよみがえる。
山菜を採っていた自分を不思議そうに感じていた事。
獣に襲われた時に、入れ替わって助けてくれた事。
自分が作った料理を入れ替わって彼女に食べて貰った時に美味しいと喜んでいた事。
「今日ルーには私達の部屋で寝て貰うから、今日にも話してみると良い。一度しか会っていない私が言うのもなんだが、きっと分かってくれるはずだ。彼女も待っていると思う。今の今まで話しかけられていないのがその証拠なんじゃないか?」
リーズが待っている。その言葉に、カオルは少し期待する。本当にそうなら、リーズの気持ちに答えなくてはならない。
「……分かりました」
「では、私はこれで失礼するよ。良い夢を見てね」
クラウドはそう言って部屋から出ていった。
『……リーズ』
応答はない。それにカオルは少し恐怖する。やっぱり怒っているんじゃないか。だから自分の呼び掛けに応えてくれないんじゃないか。
そう思ったのもつかの間、しばらくしてリーズから返事があった。
『……何だ』
応えてはくれたが、いつもより声が低く感じる。怒っているのかもしれない。
『……怒ってる?』
『怒ってない……と言えば嘘になる』
その言葉にカオルは体を強ばらせる。
『でも、お前の気持ちも……分からなくはなかったから、怒りをぶつけるつもりはない』
『リーズ。私ね……悲しかったの。何で……話してくれなかったのかなって。私には……教えたくなかったのかなって』
カオルは涙ぐみながら、ポツリポツリと話す。
『そんな訳ないだろ!』
『じゃあ、何で?』
『……お前が余計に悲しむと思ったから……。父上と母上を亡くして泣いていたお前に、私が引き継いだ記憶の話をしたら、思い出して余計に悲しむかもしれないと……そう思っていたら、だんだん話すタイミングが分からなくなってな』
私のためだったんだ。そう思うと、余計に涙が出てくる。自分が泣いているのに気づいて、リーズが少し慌てている。
カオルは、それに気づいて涙を手で拭う。
『じゃあさ、今からでも話してくれないかな。母様の事でも、父様の事でも何でも良いから、リーズが引き継いだ記憶の事を教えて欲しい』
『……分かった。途中で寝るなよ?』
『……頑張る』
それからリーズはいろいろな話をした。父と母の出会いから、二人のちょっとした夫婦喧嘩まで。
カオルもだんだん笑顔になってきて、気づいた頃には涙は完全に止まっていた。
『で、高位の浄化魔法は聖女しか使えないんだってよ。弱いやつなら精霊術士も出来るがな。だから、私は浄化魔法は使えない』
『……えっ?そうなの?』
『妙に焦っているように感じるが……まさかお前──』
『浄化魔法使う事をルーフェミア様に話しちゃって……』
宿に来た初日、お風呂に入るのを拒否した時に、自分は浄化魔法を使うので入らなくても良いという事をルーフェミアに言っていた。その事は、クラウドがすでに精霊術として片づけているが、カオルは知るよしもない。
『……大丈夫な事を信じるしかないな。今から父上の記憶にある聖女の事を全部話すから良く聞いておけよ』
『……はい』
リーズは、聖女の役割から、使える能力まで話した。
『聖女は結界が張れる。その結界の力で、街に魔物が侵入するのを防いでいるんだ。力が強くなれば、大きさも変えられるらしい。父上が母上に聞いた事らしいから、詳しくは分からないが』
結界か。母様の力を引き継いでいるなら、私にも張れるのかな?……そう言えば、ルクスが結界を張っていたような……?
『ルクスも結界を張ってたよ?』
『精霊と聖女じゃ性能が違うんだ。精霊のはあくまでも攻撃……そこから入るのをを防ぐだけ。聖女の結界は、それとは別に、魔獣が存在する事が出来ないらしいんだ』
魔獣が存在できない……?そう言えば、母様が良くやっていた。確か、名前は……
『その結界の名前は聖域。その中では、魔力が消えてしまうから、魔獣もただの動物になってしまう』
『母様が良く使ってたよね』
『多分、私達がまだ小さかったから、どこで歩いても良いようにって事だと思うぞ』
『リーズやんちゃだったもんね~』
『うるさい!』
この感じ、久しぶりな感じがする。少し話さなかっただけなのに、何日も会ってすらいないかのような感覚だった。
やっぱり私は、一人だと無理なんだ。あなたがいるだけで、こんなにも違う。
『……何だよ。急に黙り込んで』
『な~んでもな~い』
『教えろよ!!』
父様、母様。フードを作ってくれてありがとう。そのお陰で、私は、とっても大切な存在が出来たよ。
ギルドに行って冒険者に登録した事。依頼を受けてあの森に行った事。そこで魔獣と遭遇した事。その時にリーズが話しかけてきた事。
「それで、彼女が記憶伝達という能力で父親の記憶を引き継いでいたという事かい?」
「リーズいわくそうみたいです。私も良く分かりませんが」
「そうか……」
クラウドは考える素振りをする。
何となく分かってきた。おそらく仲間外れのような感覚なのだろうと。同じ時に生まれ、同じ場所で同じ時間を過ごした自分自身とも言えるような存在が、自分の知らない事を知っている。父親の記憶を引き継いでいるので、カオルだけが知らない事だってあるかもしれない。
「カオルは、彼女の事をどう思っているんだい?」
「分かりません。自分の気持ちを律する事が出来ないんです。仲直りしたいのに許せない。そんな思いです」
「なら、その事を素直に話してみれば良い。自分の事は、自分以外は一番身近な存在が良く知っている。カオルにとっては、一番身近な存在は彼女じゃないか?」
クラウドにそう言われた時、今までの思い出がよみがえる。
山菜を採っていた自分を不思議そうに感じていた事。
獣に襲われた時に、入れ替わって助けてくれた事。
自分が作った料理を入れ替わって彼女に食べて貰った時に美味しいと喜んでいた事。
「今日ルーには私達の部屋で寝て貰うから、今日にも話してみると良い。一度しか会っていない私が言うのもなんだが、きっと分かってくれるはずだ。彼女も待っていると思う。今の今まで話しかけられていないのがその証拠なんじゃないか?」
リーズが待っている。その言葉に、カオルは少し期待する。本当にそうなら、リーズの気持ちに答えなくてはならない。
「……分かりました」
「では、私はこれで失礼するよ。良い夢を見てね」
クラウドはそう言って部屋から出ていった。
『……リーズ』
応答はない。それにカオルは少し恐怖する。やっぱり怒っているんじゃないか。だから自分の呼び掛けに応えてくれないんじゃないか。
そう思ったのもつかの間、しばらくしてリーズから返事があった。
『……何だ』
応えてはくれたが、いつもより声が低く感じる。怒っているのかもしれない。
『……怒ってる?』
『怒ってない……と言えば嘘になる』
その言葉にカオルは体を強ばらせる。
『でも、お前の気持ちも……分からなくはなかったから、怒りをぶつけるつもりはない』
『リーズ。私ね……悲しかったの。何で……話してくれなかったのかなって。私には……教えたくなかったのかなって』
カオルは涙ぐみながら、ポツリポツリと話す。
『そんな訳ないだろ!』
『じゃあ、何で?』
『……お前が余計に悲しむと思ったから……。父上と母上を亡くして泣いていたお前に、私が引き継いだ記憶の話をしたら、思い出して余計に悲しむかもしれないと……そう思っていたら、だんだん話すタイミングが分からなくなってな』
私のためだったんだ。そう思うと、余計に涙が出てくる。自分が泣いているのに気づいて、リーズが少し慌てている。
カオルは、それに気づいて涙を手で拭う。
『じゃあさ、今からでも話してくれないかな。母様の事でも、父様の事でも何でも良いから、リーズが引き継いだ記憶の事を教えて欲しい』
『……分かった。途中で寝るなよ?』
『……頑張る』
それからリーズはいろいろな話をした。父と母の出会いから、二人のちょっとした夫婦喧嘩まで。
カオルもだんだん笑顔になってきて、気づいた頃には涙は完全に止まっていた。
『で、高位の浄化魔法は聖女しか使えないんだってよ。弱いやつなら精霊術士も出来るがな。だから、私は浄化魔法は使えない』
『……えっ?そうなの?』
『妙に焦っているように感じるが……まさかお前──』
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宿に来た初日、お風呂に入るのを拒否した時に、自分は浄化魔法を使うので入らなくても良いという事をルーフェミアに言っていた。その事は、クラウドがすでに精霊術として片づけているが、カオルは知るよしもない。
『……大丈夫な事を信じるしかないな。今から父上の記憶にある聖女の事を全部話すから良く聞いておけよ』
『……はい』
リーズは、聖女の役割から、使える能力まで話した。
『聖女は結界が張れる。その結界の力で、街に魔物が侵入するのを防いでいるんだ。力が強くなれば、大きさも変えられるらしい。父上が母上に聞いた事らしいから、詳しくは分からないが』
結界か。母様の力を引き継いでいるなら、私にも張れるのかな?……そう言えば、ルクスが結界を張っていたような……?
『ルクスも結界を張ってたよ?』
『精霊と聖女じゃ性能が違うんだ。精霊のはあくまでも攻撃……そこから入るのをを防ぐだけ。聖女の結界は、それとは別に、魔獣が存在する事が出来ないらしいんだ』
魔獣が存在できない……?そう言えば、母様が良くやっていた。確か、名前は……
『その結界の名前は聖域。その中では、魔力が消えてしまうから、魔獣もただの動物になってしまう』
『母様が良く使ってたよね』
『多分、私達がまだ小さかったから、どこで歩いても良いようにって事だと思うぞ』
『リーズやんちゃだったもんね~』
『うるさい!』
この感じ、久しぶりな感じがする。少し話さなかっただけなのに、何日も会ってすらいないかのような感覚だった。
やっぱり私は、一人だと無理なんだ。あなたがいるだけで、こんなにも違う。
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