21 / 107
第一章 森の少女達
第20話 寝てる間に
しおりを挟む
《ごめんね。カオル……》
この声は……母様?でも、母様はもう……
《あなた達だけを残していくのを許してちょうだい》
《かあさま。やだよ、死なないでよぉ》
……これは……昔の私?何でこんな昔の事を……
《大丈夫よ。予知したの。あなたがもう少し大きくなったら、あなたの事を……》
あの時の母様、何て言ってたかな……?
『……ル』
……誰かが呼んでいる気がする。母様?父様?
『カオル!』
ハッキリと名前を呼ばれてハッとなる。目を開けると、そこは宿のベッドだった。周りには誰もいない。なら、話しかけてきたのは……
『……リーズ?』
『やっと起きたか。お前、一週間も目を覚まさなかったんだぞ』
……えっ!?一週間?
確か、私は誘拐されて、そこで……ダメだ。思い出そうとすると、頭が痛くなる。それに、なんか眠くて、再び目を閉じてしまう。
目を閉じていても、意識はハッキリしているから、リーズと会話は出来る。
『覚えてないのか?私が寝てたから、そのせいでフードを脱がされて“聖”と“邪”が暴走したんだ』
そうだ。体が熱くなって、痛くなって……そのまま気を失ったんだ。でも、もう痛くない。誰かが治してくれたのかも。
ほんの微かに話し声が聞こえ始めた。
誰か来たのかな?
目を開けようと思っても開かない。あれ?さっきは開いたのに……
『まだ疲れてるんだろ。起こした私が言うのもなんだが、もう少し寝てろ。起きたのが見つかったらしばらくは寝られなくなる』
そう言われたので、お言葉に甘えてまた眠る。
ーーーーーーーーーーーーーー
(さて、どうするか)
カオルが眠っているので、今の体の支配権はリーズが持っている。来た人物が誰なのか確かめはしたいが、起きてるのが見つかると厄介でしかない。
(“透視”しても良いんだが……あれも結構疲れるからな……)
リーズはまだ力を完璧には使いこなせないので、邪龍としての能力を使うと、かなりの体力を消耗する。同じく、カオルも聖女としての能力を使うと、かなりの体力を消耗するが、長時間は使っていないので、少し休息を取るだけで済む。
(私ももう少し休んでるか)
ーーーーーーーーーーーーーー
「カオルちゃんはまだ目覚めないの?」
部屋の近くに来ていたのは、公爵一家だった。
「外傷もかなり酷かったからな。体力が戻ってないんだろう」
実際は、外傷よりも内側からのダメージの方が大きい。姿も、目立つ傷はあまり無く、内臓や筋肉、骨などのみが傷ついていた。でも、それは不自然だ。
クラウドは家族や部下に上手いこと話をごまかしていた。倉庫の爆発に巻き込まれた事にしたのだ。
「カオルさん、大丈夫でしょうか。わたくしが置いていかなければ……」
ルーフェミアは、先程からずっとこの調子だ。もちろん、周りはルーフェミアのせいではないと言っているが、ルーフェミアは自分を責めずにはいられない。
「ルーは悪くないわよ。悪いのはあの者達ですもの」
「そうだよ。そんなに気にする事はない。カオルも怒ってはいないと思うよ」
「そうかもしれませんが……」
そうやって励まされても、立ち直る事が出来ない。
そんな公爵一家に「まあまあ」とアウベルクが口を挟む。
「ひとまず、ご飯だけ置いて行きましょう。体力を回復させるために寝ているのでしたら、余計に起こしてはいけませんから」
アウベルクの言葉に同意し、静かに扉を開け、脇にあるテーブルに食事を置いておく。
「ただ寝ているだけですわよね……?」
ルーフェミアは不安を拭えなくて、何度も同じ事をルクスとアクアに聞く。
ルクスとアクアは二人とも頷く。ルーフェミアは、精霊の姿が見えているだけで、声は聞こえないので、ルクスとアクアはジェスチャーでルーフェミアとコミュニケーションを取るしかない。
ルクスはカオルの方を指差す。カオルではなく、カオルの近くをを指差している。カオルの周りにいる精霊達を指差しているのだ。ルーフェミアも、水の精霊と光の精霊の姿は見る事が出来る。
「何ですの?」
ルーフェミアには伝わっていない。それに業を煮やしたのか、ルクスはルーフェミアの服をグイグイと引っ張る。
ついてこいと言わんばかりに服を引っ張りながら、カオルの精霊を指差す。仕方ないので、ルーフェミアはルクスについていく。
「ルー。どうしたんだい?」
「ルクスがついてきて欲しいと合図してるので……」
そう言って、カオルの方に近寄るルーフェミアの後を、クラウド達もついていく。
「一体、何ですの?」
ルーフェミア達が近づいてきたのに気がついて、カオルの周りにいる精霊達もルーフェミア達の方を見る。
「ナニシニキタ?」
「ルーフェミアガ、カオルサマノ、ブジキキタイ」
当然、この声はルーフェミア達には聞こえていない。
「ダイジョウブ。ボクタチ、ナオシタカラ」
「イマ、ネテルダケ」
やはり問題ないようだったので、ルーフェミア達にその事を伝えようと振り返るも、どう伝えたら良いのか分からない。言葉は通じないので、体で教えるしかないのだが、どうすれば伝わるのか分からない。
「ルクス、どうしたんですの?やはり危険なのですか?」
ルクスが急に黙り込んだので、ルーフェミアは慌ててルクスにたずねる。
ルクスは首を振って否定する。
「では、本当に眠ってらっしゃるだけなんですの?」
今度は何度も頷く。
「そうですか……」
ルクス達だけではなく、カオルの側にいる精霊達も大丈夫だと言っているので、ルーフェミアも安心した。
「大丈夫だったかい?」
「はい……」
ルーフェミアのこの様子を見て、また不安がらないで欲しいとクラウドは思った。
「もし、カオルが目覚めたらすぐに教えてくれないか?」
カオルの周りにいる精霊達は頷く。ルーフェミアはそれが見えているので、精霊達の反応に不安よりも、喜びが勝った。
「本当ですの?約束ですわよ!」
タタタと部屋から出ていくルーフェミアを、クラウド達は追いかける。
「カオルサマ、モウメザメテルケド、イワナクテイイ?」
「カンゼンニ、メザメタトキガ、イイ。カオルサマガ、マタネタラ、アノショウジョ、シンパイスル」
ルーフェミアは喜ばせるためにも、早く目が覚めて欲しいと願う精霊達だった。
この声は……母様?でも、母様はもう……
《あなた達だけを残していくのを許してちょうだい》
《かあさま。やだよ、死なないでよぉ》
……これは……昔の私?何でこんな昔の事を……
《大丈夫よ。予知したの。あなたがもう少し大きくなったら、あなたの事を……》
あの時の母様、何て言ってたかな……?
『……ル』
……誰かが呼んでいる気がする。母様?父様?
『カオル!』
ハッキリと名前を呼ばれてハッとなる。目を開けると、そこは宿のベッドだった。周りには誰もいない。なら、話しかけてきたのは……
『……リーズ?』
『やっと起きたか。お前、一週間も目を覚まさなかったんだぞ』
……えっ!?一週間?
確か、私は誘拐されて、そこで……ダメだ。思い出そうとすると、頭が痛くなる。それに、なんか眠くて、再び目を閉じてしまう。
目を閉じていても、意識はハッキリしているから、リーズと会話は出来る。
『覚えてないのか?私が寝てたから、そのせいでフードを脱がされて“聖”と“邪”が暴走したんだ』
そうだ。体が熱くなって、痛くなって……そのまま気を失ったんだ。でも、もう痛くない。誰かが治してくれたのかも。
ほんの微かに話し声が聞こえ始めた。
誰か来たのかな?
目を開けようと思っても開かない。あれ?さっきは開いたのに……
『まだ疲れてるんだろ。起こした私が言うのもなんだが、もう少し寝てろ。起きたのが見つかったらしばらくは寝られなくなる』
そう言われたので、お言葉に甘えてまた眠る。
ーーーーーーーーーーーーーー
(さて、どうするか)
カオルが眠っているので、今の体の支配権はリーズが持っている。来た人物が誰なのか確かめはしたいが、起きてるのが見つかると厄介でしかない。
(“透視”しても良いんだが……あれも結構疲れるからな……)
リーズはまだ力を完璧には使いこなせないので、邪龍としての能力を使うと、かなりの体力を消耗する。同じく、カオルも聖女としての能力を使うと、かなりの体力を消耗するが、長時間は使っていないので、少し休息を取るだけで済む。
(私ももう少し休んでるか)
ーーーーーーーーーーーーーー
「カオルちゃんはまだ目覚めないの?」
部屋の近くに来ていたのは、公爵一家だった。
「外傷もかなり酷かったからな。体力が戻ってないんだろう」
実際は、外傷よりも内側からのダメージの方が大きい。姿も、目立つ傷はあまり無く、内臓や筋肉、骨などのみが傷ついていた。でも、それは不自然だ。
クラウドは家族や部下に上手いこと話をごまかしていた。倉庫の爆発に巻き込まれた事にしたのだ。
「カオルさん、大丈夫でしょうか。わたくしが置いていかなければ……」
ルーフェミアは、先程からずっとこの調子だ。もちろん、周りはルーフェミアのせいではないと言っているが、ルーフェミアは自分を責めずにはいられない。
「ルーは悪くないわよ。悪いのはあの者達ですもの」
「そうだよ。そんなに気にする事はない。カオルも怒ってはいないと思うよ」
「そうかもしれませんが……」
そうやって励まされても、立ち直る事が出来ない。
そんな公爵一家に「まあまあ」とアウベルクが口を挟む。
「ひとまず、ご飯だけ置いて行きましょう。体力を回復させるために寝ているのでしたら、余計に起こしてはいけませんから」
アウベルクの言葉に同意し、静かに扉を開け、脇にあるテーブルに食事を置いておく。
「ただ寝ているだけですわよね……?」
ルーフェミアは不安を拭えなくて、何度も同じ事をルクスとアクアに聞く。
ルクスとアクアは二人とも頷く。ルーフェミアは、精霊の姿が見えているだけで、声は聞こえないので、ルクスとアクアはジェスチャーでルーフェミアとコミュニケーションを取るしかない。
ルクスはカオルの方を指差す。カオルではなく、カオルの近くをを指差している。カオルの周りにいる精霊達を指差しているのだ。ルーフェミアも、水の精霊と光の精霊の姿は見る事が出来る。
「何ですの?」
ルーフェミアには伝わっていない。それに業を煮やしたのか、ルクスはルーフェミアの服をグイグイと引っ張る。
ついてこいと言わんばかりに服を引っ張りながら、カオルの精霊を指差す。仕方ないので、ルーフェミアはルクスについていく。
「ルー。どうしたんだい?」
「ルクスがついてきて欲しいと合図してるので……」
そう言って、カオルの方に近寄るルーフェミアの後を、クラウド達もついていく。
「一体、何ですの?」
ルーフェミア達が近づいてきたのに気がついて、カオルの周りにいる精霊達もルーフェミア達の方を見る。
「ナニシニキタ?」
「ルーフェミアガ、カオルサマノ、ブジキキタイ」
当然、この声はルーフェミア達には聞こえていない。
「ダイジョウブ。ボクタチ、ナオシタカラ」
「イマ、ネテルダケ」
やはり問題ないようだったので、ルーフェミア達にその事を伝えようと振り返るも、どう伝えたら良いのか分からない。言葉は通じないので、体で教えるしかないのだが、どうすれば伝わるのか分からない。
「ルクス、どうしたんですの?やはり危険なのですか?」
ルクスが急に黙り込んだので、ルーフェミアは慌ててルクスにたずねる。
ルクスは首を振って否定する。
「では、本当に眠ってらっしゃるだけなんですの?」
今度は何度も頷く。
「そうですか……」
ルクス達だけではなく、カオルの側にいる精霊達も大丈夫だと言っているので、ルーフェミアも安心した。
「大丈夫だったかい?」
「はい……」
ルーフェミアのこの様子を見て、また不安がらないで欲しいとクラウドは思った。
「もし、カオルが目覚めたらすぐに教えてくれないか?」
カオルの周りにいる精霊達は頷く。ルーフェミアはそれが見えているので、精霊達の反応に不安よりも、喜びが勝った。
「本当ですの?約束ですわよ!」
タタタと部屋から出ていくルーフェミアを、クラウド達は追いかける。
「カオルサマ、モウメザメテルケド、イワナクテイイ?」
「カンゼンニ、メザメタトキガ、イイ。カオルサマガ、マタネタラ、アノショウジョ、シンパイスル」
ルーフェミアは喜ばせるためにも、早く目が覚めて欲しいと願う精霊達だった。
10
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる