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第二章 神殿の少女達
第26話 編入するまで
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屋敷にある仮の私の部屋にいると、クラウド様が帰って来て、部屋に入ってきた。
「クラウド様!」
「カオル、君には準貴族の身分が与えられる事になった」
「ジュンキゾク……ですか?」
貴族なら分かる。でも、ジュンキゾクは何なのか良く分からない。
「準貴族と言うのは、平民と貴族の間の身分の事だ」
「それを……私が?」
「後日、正式にそうなるだろう。それまでに、家名を考えておいてほしい」
「家名……ですか?」
家名は何なのか私にも分かる。確か、母様が家名を持っていたとリーズの記憶から知った。
確か、母様の家名は───
「あの、メレスティーヤにして貰えますか?」
「メレスティーヤ?その家名なら存在しないし、大丈夫だと思うけど、何でそれが良いんだい?」
「母様の家名がそうだったので……」
「なら、少し変えた方が良いかもしれない」
さっきは大丈夫と言っていたのに、母様の家名だと言うと、反対された。何でかな?
「聖女の事を知っている者も多いが、家名を知っている者は少ない。そうなると、家名から聖女の関係者だと思われてしまう。響きが似ている家名は存在するし、少しだけ変えようか」
そうなんだ……でも、どうすれば良いのか分からない。
「メレスティーヤが良いなら、少しだけ変えて、メレスティリアにしようか。響きも近いだろう?」
「は、はい。それで大丈夫です」
「では、陛下にはそのように言っておこう」
その三日後。再び王城に来て、準貴族の身分と、メレスティリアの家名を与えられた。そして、私の屋敷が建つまでは、クラウド様の所で預かって貰う事になった。
前の時も、今日の謁見でも、黒いもやを纏っている人が多かった。貴族だから、薄くかかっている分には仕方ないかもしれないけど、濃くかかっていた人もいた。
その中には、私の事を睨んでいた人もいた。本来なら、リーズが出てくるか、出てこなくても、私の視界を共有はするんだけど、あの寝てるという言葉から、リーズとは会話が出来ていない。
もしかしたら、怒ってるのかな?寂しいなんて思っちゃいけない。私が決断して、リーズに無理を言ったんだから。
「カオル、明日は学園に入学するために、学園長の元に向かう。そこで聞いておきたい事がある」
「何ですか?」
「学園長に君達の事を話すのはダメか?」
「学園長様に……ですか?」
国王様にも話さなかったと言っていたのに、学園長様には話すの?
「もしもの事があった時に、一人でも知っている存在がいれば心強いと思ったんだ。国王は腹黒いからな。カオル達の事を話してしまえば、聖女の娘として祭り上げられるのは目に見えている。それは嫌だろう?」
「……はい」
クラウド様は、しっかりと約束を守ろうとしている。約束を破ったと責められるかもしれないのに、しっかりと向き合って話してくれる。それがとても嬉しい。
「学園長は口が堅い事で有名だ。たとえ、国王からの命であっても、話す事はない」
クラウド様がここまで言うなら、良いのかもしれない。
『大丈夫か?そいつ』
『いきなり話しかけて来ないでよ!』
一体、いつから起きていたの?
『それよりも、その学園長は信用出来るのか?』
『クラウド様が言うから、多分……』
『それならダメだ。自分の目で確かめないと、私は信用しない』
リーズの言う事も一理あるか。
「クラウド様、学園長様と直接的会って決めさせてください」
「それもそうか。明日に備えて、ゆっくり寝ておきなさい」
「はい」
翌日。少し早めに目が覚めた。
ドアをノックする音が聞こえて、返事をすると、クラウド様が入ってきた。
「起きていたか。早速だが、向かうから着替えてくれ」
「はい」
クラウド様が出ていったので、服が入っている棚から、着替えを取り出して着替える。
部屋を出て、馬車に乗り込み、学園に向かう。今は学園は長いお休みに入っているらしくて、その学園に通っている人は見当たらない。
学園に着いて、馬車を降り、学園長様の部屋に向かう。
「そうだ、カオル。学園長には様づけしなくても良いからな」
「は、はい」
つい癖になってしまっていた。
「学園長、明日編入する予定の者を連れてきました」
「入ってちょうだい」
部屋の中からそんな声が聞こえて、私達は部屋の中に入る。
そこには、優しそうなおばあ様がいた。
「あなたが編入生かい?」
「は、はい!カオルと言います」
「座ってちょうだい」
学園長がソファを進めてきたので、お言葉に甘えて、座る。
「カオルさんは、精霊が見えるんだったね」
「はい、そうです」
「精霊に気に入られているんだね。周りに何人も飛んでいる」
えっ?その言い方はもしかして……
「学園長も精霊が見えるんですか?」
「うっすらとね。だから、数と光の色で属性が分かるだけで、どんな顔をしているかは分からないんだよ。あなたと違って、声も聞けないしね」
「精霊の声が聞こえる人っていないんですか?」
「少なくとも、私が聞いた事はないね」
じゃあ、聖女か邪龍の血のお陰で聞こえるのかもしれない。
「まぁ、安心しなさい。あなたがなぜ聞く事が出来るのかなんて、聞くつもりはないからね。話したかったら話すと良いよ」
緊張していて、見えていなかったけど、学園長は白いもやを濃く纏っている。心優しい人っていう証拠だ。
『リーズ、どう?』
『う~ん……まぁ、良いか。だが、お前も気をつけろよ?』
『うん、分かってる』
「カオル、どうだった?」
クラウド様が耳打ちしてくる。
「リーズが、話しても良いと言っていました」
同じくらいの音量で答える。
「じゃあ、私が話すとしようか」
「はい」
私がそう返事をすると、クラウド様は学園長の方に向き直る。
「学園長、カオルの事について、お話する事があります」
クラウド様は、私の事を説明し始めた。聖女と邪龍の娘というところから、リーズの事、このフードの役割まで全て。
「学園長だからお話ししましたが、この事は機密事項としていただきたい」
「……構いませんよ。カオルさんの悪くないようにしない事は約束しましょう」
「ありがとうございます、学園長」
お話が終わって、クラウド様の屋敷に戻った。
翌日、学園に編入する日になった。
「クラウド様!」
「カオル、君には準貴族の身分が与えられる事になった」
「ジュンキゾク……ですか?」
貴族なら分かる。でも、ジュンキゾクは何なのか良く分からない。
「準貴族と言うのは、平民と貴族の間の身分の事だ」
「それを……私が?」
「後日、正式にそうなるだろう。それまでに、家名を考えておいてほしい」
「家名……ですか?」
家名は何なのか私にも分かる。確か、母様が家名を持っていたとリーズの記憶から知った。
確か、母様の家名は───
「あの、メレスティーヤにして貰えますか?」
「メレスティーヤ?その家名なら存在しないし、大丈夫だと思うけど、何でそれが良いんだい?」
「母様の家名がそうだったので……」
「なら、少し変えた方が良いかもしれない」
さっきは大丈夫と言っていたのに、母様の家名だと言うと、反対された。何でかな?
「聖女の事を知っている者も多いが、家名を知っている者は少ない。そうなると、家名から聖女の関係者だと思われてしまう。響きが似ている家名は存在するし、少しだけ変えようか」
そうなんだ……でも、どうすれば良いのか分からない。
「メレスティーヤが良いなら、少しだけ変えて、メレスティリアにしようか。響きも近いだろう?」
「は、はい。それで大丈夫です」
「では、陛下にはそのように言っておこう」
その三日後。再び王城に来て、準貴族の身分と、メレスティリアの家名を与えられた。そして、私の屋敷が建つまでは、クラウド様の所で預かって貰う事になった。
前の時も、今日の謁見でも、黒いもやを纏っている人が多かった。貴族だから、薄くかかっている分には仕方ないかもしれないけど、濃くかかっていた人もいた。
その中には、私の事を睨んでいた人もいた。本来なら、リーズが出てくるか、出てこなくても、私の視界を共有はするんだけど、あの寝てるという言葉から、リーズとは会話が出来ていない。
もしかしたら、怒ってるのかな?寂しいなんて思っちゃいけない。私が決断して、リーズに無理を言ったんだから。
「カオル、明日は学園に入学するために、学園長の元に向かう。そこで聞いておきたい事がある」
「何ですか?」
「学園長に君達の事を話すのはダメか?」
「学園長様に……ですか?」
国王様にも話さなかったと言っていたのに、学園長様には話すの?
「もしもの事があった時に、一人でも知っている存在がいれば心強いと思ったんだ。国王は腹黒いからな。カオル達の事を話してしまえば、聖女の娘として祭り上げられるのは目に見えている。それは嫌だろう?」
「……はい」
クラウド様は、しっかりと約束を守ろうとしている。約束を破ったと責められるかもしれないのに、しっかりと向き合って話してくれる。それがとても嬉しい。
「学園長は口が堅い事で有名だ。たとえ、国王からの命であっても、話す事はない」
クラウド様がここまで言うなら、良いのかもしれない。
『大丈夫か?そいつ』
『いきなり話しかけて来ないでよ!』
一体、いつから起きていたの?
『それよりも、その学園長は信用出来るのか?』
『クラウド様が言うから、多分……』
『それならダメだ。自分の目で確かめないと、私は信用しない』
リーズの言う事も一理あるか。
「クラウド様、学園長様と直接的会って決めさせてください」
「それもそうか。明日に備えて、ゆっくり寝ておきなさい」
「はい」
翌日。少し早めに目が覚めた。
ドアをノックする音が聞こえて、返事をすると、クラウド様が入ってきた。
「起きていたか。早速だが、向かうから着替えてくれ」
「はい」
クラウド様が出ていったので、服が入っている棚から、着替えを取り出して着替える。
部屋を出て、馬車に乗り込み、学園に向かう。今は学園は長いお休みに入っているらしくて、その学園に通っている人は見当たらない。
学園に着いて、馬車を降り、学園長様の部屋に向かう。
「そうだ、カオル。学園長には様づけしなくても良いからな」
「は、はい」
つい癖になってしまっていた。
「学園長、明日編入する予定の者を連れてきました」
「入ってちょうだい」
部屋の中からそんな声が聞こえて、私達は部屋の中に入る。
そこには、優しそうなおばあ様がいた。
「あなたが編入生かい?」
「は、はい!カオルと言います」
「座ってちょうだい」
学園長がソファを進めてきたので、お言葉に甘えて、座る。
「カオルさんは、精霊が見えるんだったね」
「はい、そうです」
「精霊に気に入られているんだね。周りに何人も飛んでいる」
えっ?その言い方はもしかして……
「学園長も精霊が見えるんですか?」
「うっすらとね。だから、数と光の色で属性が分かるだけで、どんな顔をしているかは分からないんだよ。あなたと違って、声も聞けないしね」
「精霊の声が聞こえる人っていないんですか?」
「少なくとも、私が聞いた事はないね」
じゃあ、聖女か邪龍の血のお陰で聞こえるのかもしれない。
「まぁ、安心しなさい。あなたがなぜ聞く事が出来るのかなんて、聞くつもりはないからね。話したかったら話すと良いよ」
緊張していて、見えていなかったけど、学園長は白いもやを濃く纏っている。心優しい人っていう証拠だ。
『リーズ、どう?』
『う~ん……まぁ、良いか。だが、お前も気をつけろよ?』
『うん、分かってる』
「カオル、どうだった?」
クラウド様が耳打ちしてくる。
「リーズが、話しても良いと言っていました」
同じくらいの音量で答える。
「じゃあ、私が話すとしようか」
「はい」
私がそう返事をすると、クラウド様は学園長の方に向き直る。
「学園長、カオルの事について、お話する事があります」
クラウド様は、私の事を説明し始めた。聖女と邪龍の娘というところから、リーズの事、このフードの役割まで全て。
「学園長だからお話ししましたが、この事は機密事項としていただきたい」
「……構いませんよ。カオルさんの悪くないようにしない事は約束しましょう」
「ありがとうございます、学園長」
お話が終わって、クラウド様の屋敷に戻った。
翌日、学園に編入する日になった。
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