聖女と邪龍の娘

りーさん

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第二章 神殿の少女達

第27話 登校初日

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「今日からこの学校に編入する事になりました、カオル・メレスティリアと言います」

 進級式を終えた後の教室で、私は自己紹介をしている。

 学園長が気を利かせてくれて、ルーフェミア様と同じクラス、席も隣どうしになった。

「カオルさん、制服が良くお似合いですわね」
「ありがとうございます」

 学園に行くなら、この服を着ないといけないらしい。これを着る事で、その学園の生徒だという事を証明するらしい。

「これからは自由時間ですので、学園内を見て回りませんか?」
「良いですよ」

 ホームルーム?というものが終わり、自由時間になった。ルーフェミア様は私の手を取って廊下に出ていく。

 ルーフェミア様は、いろいろな所を案内してくれた。まずは食堂。

「ここは、お昼に生徒が食事をする場所ですわ」
「みんなで食べるんですか?」
「はい、そうですわ」

 とっても楽しそう。

 その様子を想像すると、自然と笑みが溢れてくる。

 食堂から移動して、次は図書室に来た。

「ここは、様々な書物が置いてありますわ。貸し出しもやっておりますので、読みたいものがあったら借りてください」
「カシダシとは何ですか?」
「期限つきでここにある書物を借りる事が出来るという事ですわ。ちゃんと期限内には返却しないといけませんわよ」

 つまり、期限内には読みきらないといけないんだ。本が読めるとはいえ、まだゆっくりでしか読めないし、しばらく使う事はないかもしれない。

 そして、最後に訓練場に案内してくれた。

「この訓練場は何をするんですか?」
「魔法や剣の訓練ですわ。わたくしは魔法しかしませんが、カオルさんも使ってみると良いですわよ」
「あなたがカオル様ですか?」

 ルーフェミア様と話している途中で、急に声をかけられる。見覚えのない男性だ。

 ……?この人、不思議な感じがする。白いもやを纏ってはいるんだけど、少し黒くなっている。こんな人は初めて見た。

「そうですが……あなたは?」
「申し遅れました、私はナルミス・リー・レティアと申します」

 リー・レティアは確か、神官に使われる名字だとマナーの先生に少し教えて貰った。

「カオル様、あなたが精霊のお声を拝聴出来るというのはお聞きしております。それは事実でしょうか?」
「……はい」

 この人も、私が精霊の声が聞こえないと疑われているのかな?だったら、またあの時みたいに属性を当てれば……

「カオルサマ。コノニンゲン、ヘン」
「キミワルイ」

 この人って、神官か、その関係者なんだよね?なのに、精霊が気味悪いと言うなんて……やっぱり、少し怖いな。大丈夫かな?

「本当に素晴らしいです。カオル様はレティア神に愛された存在なのですね」

 レティア神……母様が加護を貰ったと言っていた神様だ。

 母様……確か、神官を無条件に信用してはいけないって言ってた気がするな。神官と言えども人間なのだから、利益を求める者。聖女という肩書きを利用する人が多かったと。もちろん、本当に神官という仕事に誇りを持っている人もいるけど、そんな人ばかりではないと。

「それは分かりません。でも、私は声が聞こえる事で自分が特別だとは思っていません。ナルミス様も、私をそういう目で見るのはお止めください」

 しっかりと自分の思いを言葉にしないと。何でもかんでも我慢しないで、言うべき事はきちんと口に出す。

「そのように思わせたのならすみません。私は、一度あなたにお会いしたくて……」
「そうでしたか」

 普通の貴族なら、もっと上手くやれるのかもしれないけど、私にはこれが限界だ。

『お前は優しすぎるぞ』
『うぅ……』

 リーズからも指摘されて、少し落ち込んでしまう。心配をかけないうちに、その場を立ち去った。壁にもたれてため息をつく。
 
 ルーフェミア様を置いていってしまった。大丈夫かな?

「カオル様、大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です」
「不快に思わせてしまったのならすみません。実は、神殿からあなたの事を見てくるように言われましたので……」

 良い人だな。私、母様やもやの色で判断してしまった。

 もしかしたら、何か企んでいて私に優しくしているのかもしれないけど、この言葉は嘘じゃないと信じたい。

「いえ、私も少し言い過ぎたと思っていましたし、私こそすみません。心配してくださりありがとうございました」

 心からの笑みを向けると、ナルミス様は少し顔を赤くしている。

 ……?どうしたんだろう?そう言えば、最初の頃のクラウド様も同じような反応をしていた気がする。この人も、熱があるのかな?

「大丈夫ですか?体調が悪いなら……」
「い、いえ……大丈夫です。私はこれで失礼しますね」

 そう言うと、スタコラと去っていった。

 本当にどうしたのかな?

ーーーーーーーーーーーーーー

「不思議な子だったな」

 ナルミスは、カオルから逃げた後、神殿に向かっていた。

(あんな風に笑いかけられると、良心が咎めてしまう)

 ナルミスは、最初はカオルの事を利用するつもりだった。完全な打算で近づいたのだ。でも、カオルはそんな事は微塵にも思っていないように見えた。

 初対面の相手を、すぐに信用している。それは、普通に利用しやすい存在だ。自分の思う通りに行動させる事も出来るかもしれない。ナルミスもそう思ってはいる。でも、無条件に信用されたのが初めてだったので、少し戸惑っているのだ。

(情に流されてはダメだ。計画を中止するつもりはない)

 自分の中の迷いを断ち切って、ナルミスは歩みを速めた。
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