聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
31 / 107
第二章 神殿の少女達

第30話 新たなお友達

しおりを挟む
 私がとんでもない威力の魔法を使った。

 その話は、瞬く間に広がった。目が合うたびに怯えられるか、尊敬の眼差しで見られるかのどちらかになってしまった。

 私は普通に学園生活を送りたかっただけなのに……

「カオルさん」

 後ろから声をかけられた。この人は確か……

「あら、ごきげんよう、セレスティーナ様」
「ごきげんよう、ルーフェミア様」

 セレスティーナ様は確か、ルーフェミア様と同じ公爵家だったはず。だから、ルーフェミア様も知ってるのかな?

「ルーフェミア様、今回はカオルさんに用があるのですわ。お連れしてもよろしいかしら?」
「あら、そうですの?では、わたくしがご一緒してもよろしくて?」
「あの……私に用とは……」
「少し頼み事があるだけですわ。ルーフェミア様もどうぞご一緒に」

 そう言われたので、私とルーフェミア様はセレスティーナ様の後についていく。案内されたのは、寮の部屋の一室。ここは、セレスティーナ様のお部屋かも。

「どうぞ、お掛けになってくださいな」

 私達がソファに座ると、セレスティーナ様は話し始めた。

「わたくし、ルーフェミア様とカオルさんが強力な魔法を使ったのを見ましたわ」

 あの時、一緒の授業を受けていたのかな?

「あれは、精霊の力ですわよね?」
「そうですわ。わたくしの魔法が強くなったのも、わたくしが精霊と契約したからですわ」
「わたくしも契約したいのですわ。どうしたらよろしいかしら?」

 あっ、私の強力な精霊術に関してでは無かったんだ。最近は、その事でしか話しかけられなかったからなぁ。

「カオルさん、分かりますか?」

 セレスティーナ様の周りにも精霊はいる。学園長は、発光している色で分かると言っていた。精霊達が使っていた魔法と、その時の発光していた色を考えれば、赤が火属性。青が水属性。黄色が地属性。緑が風属性。白が光属性。紫が闇属性だろうな。

 そして、セレスティーナ様の周りに飛んでいる精霊の光の色は、それぞれ赤、緑。火属性と風属性の精霊だ。

「セレスティーナ様の周りには火属性と風属性の精霊がいます。発光が強いのもいるので、その子と契約すれば、魔法も強くなりますし、火属性と風属性だけですが、精霊の姿も見えますよ」
「本当ですの!?どこにいるのかしら?」

 辺りをたくさん飛んでいるけど、強い精霊がいるのは……

「セレスティーナ様の肩に乗っている子と、手の近くにいる子が強い精霊です。契約するには、名前を与える必要があります」
「わたくしもルクスとアクアという名前を与えて契約しましたわ」
「肩に乗っているのが火の精霊。手元にいるのが風の精霊です」
「分かりましたわ。もう名は決めておりますの」

 あれ?今さっき精霊がいるのを知ったのに、もう名前が決まっているの?

 そう感じたのは、ルーフェミア様も同じようで、「なぜもう決まっているのですか?」と聞いていた。

「わたくしは、絶対に精霊と契約すると決めておりましたわ。ですので、すぐに契約出来るように、名は昔から考えていたんですの」

 昔からずっと……かぁ。夢があって良いなぁ。私は夢がないし。クラウド様が来るまでは、ずっと森にいるつもりだったから、あそこでの夢は外の世界に出る事だった。

 それが叶っている今、次の夢は決まっていない。

「火の精霊がイグニス。風の精霊がベントスですわ」

 そうセレスティーナ様が言った時、精霊達の光は一瞬だけ強くなる。

「まぁ……本当に見えますわ!わたくしも、精霊術士となれるかしら?」
「契約するだけではダメなのですか?」
「そうですわ。精霊術士は、もっともっと威力が高いですもの。カオルさんほどまではいかなくても、あの的くらい壊せないといけませんわ」

 そんなに強くないといけないんだ。でも、本当にそれだけなのかな?魔法と精霊術は、少し違う気がする。私は精霊が使ってくれたけど、ルーフェミア様達は、自分の力で使っている。クラウド様が、普通の魔法使いと、精霊術士では、天と地ほどの差が出るって言っていた。それは、自分の魔力と、精霊達の魔力にとてつもない差があるからじゃないんだろうか。

 あくまでも、私の憶測だけど、精霊と契約する事で、魔力と威力が増えるだけで、自分の魔力を使うという事には変わり無いと思う。精霊術士は、精霊が魔力を使う事で、魔法の威力が大幅に上がるという仕組みじゃないかな?

 それだったら、精霊術士と、精霊と契約した魔法使いとの間に、差が生まれる事の説明がつく。

「カオルさん、ありがとうございます!」
「セレスティーナ様、この事は内密に頼めますか?」
「どうしてですの?」
「出来る限り、目立ちたくはないんです。私に相談すれば精霊と契約出来るなんて噂が流れたら……」
「下手をすれば、誘拐などの可能性も出てきますわね。分かりましたわ。この事は内密にいたします」

 さすがに誘拐までは考えていなかったけど、内緒にしてくれるなら別に良いか。これ以上目立つと、快適に学園生活が送れなくなってしまう。

「ですが、カオルさん。先程の言葉は冗談ではありませんわ。あり得る話です。周りには注意した方がよろしくてよ?」
「警告してくださってありがとうございます。一人で行動しないようにはしていますので……」
「それは賢明な判断ですわね。わたくしも、出来得る限り、周りに気を配っておきますわ」
「……良いんですか?」

 セレスティーナ様は関係ないはずなのに。そこまでして貰っても良いのかな?

「わたくしがやりたいと思ってやっている事ですわ。素性不明の平民と聞いて、どんな子かと思っていたら、こんなにも……その……」

 途中から、言葉がつまり始めた。

 えっ?どうしたの?

「……可愛らしい方だとは思わなかったんですもの」

 ……?ボソボソと何か小さい声で何か言っていたみたいだけど、良く聞こえなかった。

「すみません、良く聞こえなくて。もう一度言ってくれませんか?」
「な、何でもありませんわ!!よ、用はこれだけですから、お帰りになってもよろしくてよ!」

 えぇ~……気になるのに……

 でも、こんな風に言われて、部屋にとどまる事は出来ない。

「カオルさん、行きましょうか」

 なぜか、クスクス笑っているルーフェミア様の後についていって、セレスティーナ様の元を立ち去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。 化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。 所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。 親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。 そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。 実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。 おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。 そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。 ※タイトルはそのうち変更するかもしれません※ ※お気に入り登録お願いします!※

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」 ────何言ってんのコイツ? あれ? 私に言ってるんじゃないの? ていうか、ここはどこ? ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ! 推しに会いに行かねばならんのだよ!!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...