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第二章 神殿の少女達
第31話 狙われたカオル
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セレスティーナ様の部屋から自分達の部屋に戻ってきた。外はもう月が煌めいている。
「ルーフェミア様、セレスティーナ様は何と言っていたんですか?」
「それは本人の口から聞くべきですわよ」
ルーフェミア様は聞こえていそうだったので、聞いてみたらこう返された。
確かに、本人から聞いた方が良いのかもしれないけど、だからって、今から本人の口から聞くために、セレスティーナ様の所に行くのもおかしな話。
「それよりもカオルさん。ナルミス様には気をつけた方が良いと思いますわ。わたくしは何度でも言いますからね」
ルーフェミア様の言う通り、もうこの話は何度目だろう。
「でも、根っからの悪人ではないと思うんです。私がそう思いたいだけなのかもしれませんが……」
白いもやがあったし、まるっきり嘘とは思えない。だからと言って、信用しているかと言われれば、そうとは言いきれないけど。
「……カオルさん。少し、夜風に当たりに行きませんか?」
「構いませんが……」
急にどうしたんだろう?ルーフェミア様が突拍子もない事を言い出すのは良くある事だけど、こんな事は今まで無かった。
ルーフェミア様と一緒に、寮の近くの庭に出る。ほとんどの精霊は寝てしまっていたので、それぞれの属性の精霊が一人ずつついてきてくれた。ここは、男女共用の庭。
「わたくし、お友達らしいお友達を作るのは、カオルさんが初めてですの」
「セレスティーナ様はお友達では無いのですか?」
「友人関係とは違いますわ。家柄が同じですから、交流があるだけですもの。貴族とはそういうものですわ、カオルさん」
貴族……まだあまり自覚はない。準貴族は、そこまで貴族らしい振る舞いは必要ないらしいけど。
「……カオルさん。家名の理由をお聞きしても?」
「母様の家名から考えました。本当の家名は知りませんが……」
「“本当の”家名とは?」
……あっ。思わず口を滑らしてしまった。どうしよう……
思わず、うつむいて、しばらく黙っていると、ルーフェミア様が折れた。
「言いたくないのなら構いませんわ。ですが、社交界では失言は厳禁ですわよ。お気をつけくださいますよう」
「は、はい」
「では、話は変わりますが、そろそろお話くださいませんか?カオルさんの両親が亡くなった訳を」
「母様と父様……ですか?」
母様と父様が亡くなった理由は、私のせいだろう。だって、そもそもあの時に、私が欲張らなければ良かった。
「ずっと森に住んでいたのでしょう?自然死とは思えませんし、事故が起こるような場所はあの付近にはありませんし、精霊に好かれていたというあなた方に自然が危害を加えるとは思えませんわ。でしたら、何者かに危害を加えられたと考えるのが妥当でしょう?」
だいたい合っている。クラウド様とお話ししたのかな?
「両親は……私のせいで死んだようなものです」
「……どういう事ですの?」
「あの森では、迷い人が多かったんです。両親は、その人が弱っていたら元気になるまで看病していました。誰であっても、森の外に案内したんです」
いろんな人に会ったのを覚えている。中には、悪い人もいたけど、父様達はそんな人でも関係なく看病していた。さすがに、盗賊とかは、見張りも兼ねて父様だけで看病していたけど。
「お優しい両親ですのね」
「それで、私が3歳の頃に、森をもっと見てみたくなって、勝手に一人でいろいろな所に行ってしまったんです」
まだ私とリーズが完全に分離する前に、子供心からの興味心で、一人で森の中を走り回っていた。
「その時に、ある一人の男性に会いました」
その男性は、身綺麗で、森で遭難した人には見えなかった。だけど、もしかしたら迷ったばかりなのかもしれないと思って、森の出口まで案内した。
「その男性を森の出口まで連れていった後、少しお話したんです」
『ねぇねぇ、お兄さんは何しに来たの?』
『……山菜を採りにね』
『あのおいしいやつだよね!カオルも好き!』
あの時は、ただお話しするのが楽しかった。笑顔が一切耐える事はなかった。
『カオルちゃん。両親はどうしているんだ?』
『かあさまととうさまなら、ご飯の用意してるよ!かあさまの作るお料理おいしいの!』
『そうか。楽しみだね。なら、早くお家に帰らないとね。君を送り届けたいから、案内してくれるかい?』
『いいよ!』
了承してしまった。まだ、もやが見えなかった頃だから、この人が悪巧みをしているなんて考えもしなかった。
「それで、どうなったんですの?」
「母様は、その男性の国から追われていた身らしく、私を使って、居場所を探ったんです」
「……なるほど。それで?」
「その時に、母様が裏切り者だと思われて、殺されてしまいました。父様も一緒に」
母様が邪龍である父様との間に、私という子供を産んでしまった。それは、あの人達にとっては、ひどい裏切り行為だったらしい。
「そう……だったのですか。ですが、その話だと、最初から知っていたように思えるんです。その男性が、カオルさんの親が自分達が探している人物だとなぜ分かったのでしょうか?」
「顔が似ているからだと思います。父様からは、母様に似ているとよく言われていたので」
顔つきは、母様に似ている。でも、体格とかは、人間状態の父様に似ているみたい。
「だから、私のせいなんです。今でも後悔しているんです。顔を見せなければとか、案内しなければとか、そもそも一人で出歩かなければとか」
「カオルさんのせいではありませんわ!カオルさんを騙したその男性が悪いのです!」
むくっと膨れている。自分の事でもないのに、こんなにも怒ってくれている。その事実がとても嬉しい。
「カオルさ──」
ルーフェミア様がそこまで言った時、辺りが暗くなる。お月様が雲に隠れてしまったのかな?
──ザッザッザ……
草を踏むような音が聞こえる。誰か来るのかもしれない。どっちにしても、明るくしないと。
「光の精霊。明かりをつけられる?ルーフェミア様に被害が出ないように、明るく照らすだけで良いから」
「ワカッタ!」
光の精霊はそう言うと、小さな光の珠を生み出す。ちゃんと手加減してくれたみたい。
明かりが灯って、ルーフェミア様がいた方を見ると、そこにルーフェミア様はいなかった。
「ルーフェミア様!?ルーフェミア様!どこですか!」
ルーフェミア様がいた所の近くを探してみる。見当たらない。精霊達も探してくれているけど、見つからないみたい。
「ルーフェ──んぐっ!」
何か布のような物で口を塞がれる。これは、あの時と同じような……
その布で、あの時のようにまた眠ってしまう時に、悲しそうな、決意をした顔で、ナルミス様が立っていた。
「ルーフェミア様、セレスティーナ様は何と言っていたんですか?」
「それは本人の口から聞くべきですわよ」
ルーフェミア様は聞こえていそうだったので、聞いてみたらこう返された。
確かに、本人から聞いた方が良いのかもしれないけど、だからって、今から本人の口から聞くために、セレスティーナ様の所に行くのもおかしな話。
「それよりもカオルさん。ナルミス様には気をつけた方が良いと思いますわ。わたくしは何度でも言いますからね」
ルーフェミア様の言う通り、もうこの話は何度目だろう。
「でも、根っからの悪人ではないと思うんです。私がそう思いたいだけなのかもしれませんが……」
白いもやがあったし、まるっきり嘘とは思えない。だからと言って、信用しているかと言われれば、そうとは言いきれないけど。
「……カオルさん。少し、夜風に当たりに行きませんか?」
「構いませんが……」
急にどうしたんだろう?ルーフェミア様が突拍子もない事を言い出すのは良くある事だけど、こんな事は今まで無かった。
ルーフェミア様と一緒に、寮の近くの庭に出る。ほとんどの精霊は寝てしまっていたので、それぞれの属性の精霊が一人ずつついてきてくれた。ここは、男女共用の庭。
「わたくし、お友達らしいお友達を作るのは、カオルさんが初めてですの」
「セレスティーナ様はお友達では無いのですか?」
「友人関係とは違いますわ。家柄が同じですから、交流があるだけですもの。貴族とはそういうものですわ、カオルさん」
貴族……まだあまり自覚はない。準貴族は、そこまで貴族らしい振る舞いは必要ないらしいけど。
「……カオルさん。家名の理由をお聞きしても?」
「母様の家名から考えました。本当の家名は知りませんが……」
「“本当の”家名とは?」
……あっ。思わず口を滑らしてしまった。どうしよう……
思わず、うつむいて、しばらく黙っていると、ルーフェミア様が折れた。
「言いたくないのなら構いませんわ。ですが、社交界では失言は厳禁ですわよ。お気をつけくださいますよう」
「は、はい」
「では、話は変わりますが、そろそろお話くださいませんか?カオルさんの両親が亡くなった訳を」
「母様と父様……ですか?」
母様と父様が亡くなった理由は、私のせいだろう。だって、そもそもあの時に、私が欲張らなければ良かった。
「ずっと森に住んでいたのでしょう?自然死とは思えませんし、事故が起こるような場所はあの付近にはありませんし、精霊に好かれていたというあなた方に自然が危害を加えるとは思えませんわ。でしたら、何者かに危害を加えられたと考えるのが妥当でしょう?」
だいたい合っている。クラウド様とお話ししたのかな?
「両親は……私のせいで死んだようなものです」
「……どういう事ですの?」
「あの森では、迷い人が多かったんです。両親は、その人が弱っていたら元気になるまで看病していました。誰であっても、森の外に案内したんです」
いろんな人に会ったのを覚えている。中には、悪い人もいたけど、父様達はそんな人でも関係なく看病していた。さすがに、盗賊とかは、見張りも兼ねて父様だけで看病していたけど。
「お優しい両親ですのね」
「それで、私が3歳の頃に、森をもっと見てみたくなって、勝手に一人でいろいろな所に行ってしまったんです」
まだ私とリーズが完全に分離する前に、子供心からの興味心で、一人で森の中を走り回っていた。
「その時に、ある一人の男性に会いました」
その男性は、身綺麗で、森で遭難した人には見えなかった。だけど、もしかしたら迷ったばかりなのかもしれないと思って、森の出口まで案内した。
「その男性を森の出口まで連れていった後、少しお話したんです」
『ねぇねぇ、お兄さんは何しに来たの?』
『……山菜を採りにね』
『あのおいしいやつだよね!カオルも好き!』
あの時は、ただお話しするのが楽しかった。笑顔が一切耐える事はなかった。
『カオルちゃん。両親はどうしているんだ?』
『かあさまととうさまなら、ご飯の用意してるよ!かあさまの作るお料理おいしいの!』
『そうか。楽しみだね。なら、早くお家に帰らないとね。君を送り届けたいから、案内してくれるかい?』
『いいよ!』
了承してしまった。まだ、もやが見えなかった頃だから、この人が悪巧みをしているなんて考えもしなかった。
「それで、どうなったんですの?」
「母様は、その男性の国から追われていた身らしく、私を使って、居場所を探ったんです」
「……なるほど。それで?」
「その時に、母様が裏切り者だと思われて、殺されてしまいました。父様も一緒に」
母様が邪龍である父様との間に、私という子供を産んでしまった。それは、あの人達にとっては、ひどい裏切り行為だったらしい。
「そう……だったのですか。ですが、その話だと、最初から知っていたように思えるんです。その男性が、カオルさんの親が自分達が探している人物だとなぜ分かったのでしょうか?」
「顔が似ているからだと思います。父様からは、母様に似ているとよく言われていたので」
顔つきは、母様に似ている。でも、体格とかは、人間状態の父様に似ているみたい。
「だから、私のせいなんです。今でも後悔しているんです。顔を見せなければとか、案内しなければとか、そもそも一人で出歩かなければとか」
「カオルさんのせいではありませんわ!カオルさんを騙したその男性が悪いのです!」
むくっと膨れている。自分の事でもないのに、こんなにも怒ってくれている。その事実がとても嬉しい。
「カオルさ──」
ルーフェミア様がそこまで言った時、辺りが暗くなる。お月様が雲に隠れてしまったのかな?
──ザッザッザ……
草を踏むような音が聞こえる。誰か来るのかもしれない。どっちにしても、明るくしないと。
「光の精霊。明かりをつけられる?ルーフェミア様に被害が出ないように、明るく照らすだけで良いから」
「ワカッタ!」
光の精霊はそう言うと、小さな光の珠を生み出す。ちゃんと手加減してくれたみたい。
明かりが灯って、ルーフェミア様がいた方を見ると、そこにルーフェミア様はいなかった。
「ルーフェミア様!?ルーフェミア様!どこですか!」
ルーフェミア様がいた所の近くを探してみる。見当たらない。精霊達も探してくれているけど、見つからないみたい。
「ルーフェ──んぐっ!」
何か布のような物で口を塞がれる。これは、あの時と同じような……
その布で、あの時のようにまた眠ってしまう時に、悲しそうな、決意をした顔で、ナルミス様が立っていた。
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