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第二章 神殿の少女達
第47話 取り引き
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先ほどの爆発で気づかれたのだろう。ここは行き止まりだから、袋小路になったという事になる。
「精霊を置いてきて良かったのですか?あなた自身に攻撃手段はないというのに」
司教様の言う通り。一応、リーズがいるけど、話しかけてこないから、まだ回復していないんだと思う。精霊が何人かここにいるとはいえ、あの魔獣みたいな存在がまた出てきたら、無傷では済まないと思う。
私は必要だと思うし、ティルの能力がないと、司教様は精霊術士になれないから、ティルを殺すような事はしないと思う。でも、ナルミス様は分からない。ここに閉じ込めていた所から、ナルミス様をどう扱っているのかは、想像がつく。
……いや、魔獣で殺されかけたんだから、私とティルの扱いも良くはないかな。
「精霊はいますよ。それで、なぜ戻ってきたんですか?」
「さすがに地下から大きな物音がすれば疑問に思いますよ。おそらく、あなたの精霊術でしょう?」
やはり、あの爆発で気づかれていたみたい。
「あなたは本当に魅力的だ。数少ないはずなのに、あそこまでの精霊術を起こせるほど、愛されているのですね」
「何が言いたいんですか?」
そう言ったら、こちらに近づいてきた。こっちには道がないので、後ずさりしても追いつかれてしまう。
「あなたの顔は美しい。マリア聖女の再来ですよ。マリア聖女と瓜二つの顔に、引けをとらない精霊術の強さ。そして、意思の強さまで。マリア聖女が若返ったと言われても信じてしまいそうだ」
……怖い。この人の目は普通じゃない。母様はきれいな人だったから、そんな人に似ていると言うのなら、私も美しいと言われる部類に入るのかもしれない。でも、母様と似ているのは外見だけだ。
私はちっとも強くない。実力的にも、精神的にも。心を鬼にするとか言うけれど、私には出来ないから。
母様を狙う人は大勢いたと思う。聖女としても、一人の女性としても。でも、全部父様が守ってた。母様に夢中だったのは、父様も一緒だから。母様が望んだら、一緒に会っていたらしいけど、決して一人にはしなかった。
……もしかしたら、そのせいで裏切りとか言われたのかもしれないけど……
ううん。考えるのは後回しだ。今は、この状況をどうにかしないといけない。私に注意を引けば、ティルとナルミス様は逃がす事が出来るかもしれない。風で飛ばせるなら、先ほどの爆発魔法で穴を開けて、そこから逃がせば良いから。
よし、そうしよう。
「みんな」
小さく呼びかけた。多分、司教様には聞こえている。誰に呼びかけたのかも、分かっていると思う。
「どうにかするつもりですか?カオル嬢。確かに、ここは神殿ですから、精霊の力はいつも以上に強くなっているかもしれない。ですが、逆にここまで近づいていれば、あなたも巻き込む事になる。精霊は、あなたが傷つく事をよしとしないのは、あなたが一番分かっているでしょう」
そんなのは分かっている。ずっと一緒に過ごしてきた友達だから。私だって、誰かを傷つける力があっても、精霊にだけは絶対に使いたくない。私もそう思うから、この子達も同じだと思う。事実、こんなに悪意を持って私の近くにいるのに、私を助けようとはせずに、司教様を睨んでいる。
「他に方法があるとでも言うのですか?」
「では、こうしましょう。あなたとティレツィアが黙ってついてきてくれるなら、そこにいるナルミス神官は逃がしましょう。ですが、あなたが反抗するようなら、たとえあなたに傷がついても、ティレツィアとナルミスを亡き者にします」
「だめですカオル様!私の事は気にせずとも……」
そこまで言ったナルミス様の顔を見るために、後ろを振り返ると、まだ何か言いたそうだったけど、口をつぐんだ。
自分をこんな目に合わせた元凶だから、無視しろとでも言い出すの?あなたは、利用されていただけなのに。一度も許されないのは、おかしい気がする。偽善者でも、馬鹿者でも何でも良い。連れ去ったのはナルミス様でも、助ける手助けをしてくれたのもナルミス様だから、あの人には生きていて欲しい。
「……分かりました。抵抗はしません。どうぞご自由に」
「カオルさんがそう言うなら分かりました。癪ではありますが、私も共に行きましょう」
「カオル様!ティル!」
「その代わり、ナルミス様は逃がしてください。それと……」
ナルミス様の事もそうだけど、これも約束させないといけない。
「このフードは外さないでください。命の保証はありませんので」
「……良いでしょう。私も命は惜しい。その二つの条件を飲みます」
そう言うと指をパチンと鳴らす。すると、どこからともなく、神官達が現れた。ナルミス様の見張りだったのかもしれない。魔法で隠れていたのだろうか。私がいいえと言ったら、この人達に始末させるつもりだったのかも。
「彼らに責任を持って送らせます。ご安心を。騙して処分するような事はいたしません。そんな事をすれば、あなたの精霊が牙を剥きそうなので」
確かに、精霊も私が(脅されているとはいえ)心から望んでついていっているのだから、司教様に手出しをしていない。でも、約束を破られたら、容赦なく攻撃するだろう。
司教様が歩きだしたので、後ろをついていく。気になって、ナルミス様の方を見てみると、神官の一人が壁に触れていて、魔法陣のようなものが浮かんだ。隠し通路なのかな?
「カオルさん。兄は本当に大丈夫でしょうか……」
いつもはしっかりしているティルがそんな事を聞いてきた。
「大丈夫だと思うしかありません。司教様の言う通り、約束を破れば精霊達は容赦なく攻撃します。下手をすれば、向こうの方が命が危ない訳ですから」
「……そうですよね。すみません。弱気なのは、私らしくありませんね」
「そんな事はありませんよ。私も、不安なのは同じですから」
でも、向こうを信じるしかない。クラウド様達も必死になって探してくれているだろうし、もう少しの辛抱だから。
神殿の地下にいるのは気づかないかもしれないけど……そういえば、母様が神殿の地下の話をしていた気がするな。
『カオル。神殿にはね、地下があるの。もし神殿に行く事になっても、絶対に入ってはいけないわ』
『どうして?』
『危ないからよ。神官は、心がきれいな人だけではないの。心が醜い人が、よく集まっているのよ。カオルが迷い込んだら、連れていかれてしまうわ』
『入っちゃったらどうするの?』
『それはね──』
……あれ?ここからが思い出せない。母様は、何て言ってたんだっけ……頑張って思い出さないと……
『それはね、✕✕が、✕✕で──祈るのよ』
……祈る?どうやって──
「着きましたよ」
司教様の言葉で、一瞬で現実に戻された。そこは、最初に私達が落ちた場所に似ているけど、少し違うように思える。
ここで、一体何をしようと言うんだろう。
「精霊を置いてきて良かったのですか?あなた自身に攻撃手段はないというのに」
司教様の言う通り。一応、リーズがいるけど、話しかけてこないから、まだ回復していないんだと思う。精霊が何人かここにいるとはいえ、あの魔獣みたいな存在がまた出てきたら、無傷では済まないと思う。
私は必要だと思うし、ティルの能力がないと、司教様は精霊術士になれないから、ティルを殺すような事はしないと思う。でも、ナルミス様は分からない。ここに閉じ込めていた所から、ナルミス様をどう扱っているのかは、想像がつく。
……いや、魔獣で殺されかけたんだから、私とティルの扱いも良くはないかな。
「精霊はいますよ。それで、なぜ戻ってきたんですか?」
「さすがに地下から大きな物音がすれば疑問に思いますよ。おそらく、あなたの精霊術でしょう?」
やはり、あの爆発で気づかれていたみたい。
「あなたは本当に魅力的だ。数少ないはずなのに、あそこまでの精霊術を起こせるほど、愛されているのですね」
「何が言いたいんですか?」
そう言ったら、こちらに近づいてきた。こっちには道がないので、後ずさりしても追いつかれてしまう。
「あなたの顔は美しい。マリア聖女の再来ですよ。マリア聖女と瓜二つの顔に、引けをとらない精霊術の強さ。そして、意思の強さまで。マリア聖女が若返ったと言われても信じてしまいそうだ」
……怖い。この人の目は普通じゃない。母様はきれいな人だったから、そんな人に似ていると言うのなら、私も美しいと言われる部類に入るのかもしれない。でも、母様と似ているのは外見だけだ。
私はちっとも強くない。実力的にも、精神的にも。心を鬼にするとか言うけれど、私には出来ないから。
母様を狙う人は大勢いたと思う。聖女としても、一人の女性としても。でも、全部父様が守ってた。母様に夢中だったのは、父様も一緒だから。母様が望んだら、一緒に会っていたらしいけど、決して一人にはしなかった。
……もしかしたら、そのせいで裏切りとか言われたのかもしれないけど……
ううん。考えるのは後回しだ。今は、この状況をどうにかしないといけない。私に注意を引けば、ティルとナルミス様は逃がす事が出来るかもしれない。風で飛ばせるなら、先ほどの爆発魔法で穴を開けて、そこから逃がせば良いから。
よし、そうしよう。
「みんな」
小さく呼びかけた。多分、司教様には聞こえている。誰に呼びかけたのかも、分かっていると思う。
「どうにかするつもりですか?カオル嬢。確かに、ここは神殿ですから、精霊の力はいつも以上に強くなっているかもしれない。ですが、逆にここまで近づいていれば、あなたも巻き込む事になる。精霊は、あなたが傷つく事をよしとしないのは、あなたが一番分かっているでしょう」
そんなのは分かっている。ずっと一緒に過ごしてきた友達だから。私だって、誰かを傷つける力があっても、精霊にだけは絶対に使いたくない。私もそう思うから、この子達も同じだと思う。事実、こんなに悪意を持って私の近くにいるのに、私を助けようとはせずに、司教様を睨んでいる。
「他に方法があるとでも言うのですか?」
「では、こうしましょう。あなたとティレツィアが黙ってついてきてくれるなら、そこにいるナルミス神官は逃がしましょう。ですが、あなたが反抗するようなら、たとえあなたに傷がついても、ティレツィアとナルミスを亡き者にします」
「だめですカオル様!私の事は気にせずとも……」
そこまで言ったナルミス様の顔を見るために、後ろを振り返ると、まだ何か言いたそうだったけど、口をつぐんだ。
自分をこんな目に合わせた元凶だから、無視しろとでも言い出すの?あなたは、利用されていただけなのに。一度も許されないのは、おかしい気がする。偽善者でも、馬鹿者でも何でも良い。連れ去ったのはナルミス様でも、助ける手助けをしてくれたのもナルミス様だから、あの人には生きていて欲しい。
「……分かりました。抵抗はしません。どうぞご自由に」
「カオルさんがそう言うなら分かりました。癪ではありますが、私も共に行きましょう」
「カオル様!ティル!」
「その代わり、ナルミス様は逃がしてください。それと……」
ナルミス様の事もそうだけど、これも約束させないといけない。
「このフードは外さないでください。命の保証はありませんので」
「……良いでしょう。私も命は惜しい。その二つの条件を飲みます」
そう言うと指をパチンと鳴らす。すると、どこからともなく、神官達が現れた。ナルミス様の見張りだったのかもしれない。魔法で隠れていたのだろうか。私がいいえと言ったら、この人達に始末させるつもりだったのかも。
「彼らに責任を持って送らせます。ご安心を。騙して処分するような事はいたしません。そんな事をすれば、あなたの精霊が牙を剥きそうなので」
確かに、精霊も私が(脅されているとはいえ)心から望んでついていっているのだから、司教様に手出しをしていない。でも、約束を破られたら、容赦なく攻撃するだろう。
司教様が歩きだしたので、後ろをついていく。気になって、ナルミス様の方を見てみると、神官の一人が壁に触れていて、魔法陣のようなものが浮かんだ。隠し通路なのかな?
「カオルさん。兄は本当に大丈夫でしょうか……」
いつもはしっかりしているティルがそんな事を聞いてきた。
「大丈夫だと思うしかありません。司教様の言う通り、約束を破れば精霊達は容赦なく攻撃します。下手をすれば、向こうの方が命が危ない訳ですから」
「……そうですよね。すみません。弱気なのは、私らしくありませんね」
「そんな事はありませんよ。私も、不安なのは同じですから」
でも、向こうを信じるしかない。クラウド様達も必死になって探してくれているだろうし、もう少しの辛抱だから。
神殿の地下にいるのは気づかないかもしれないけど……そういえば、母様が神殿の地下の話をしていた気がするな。
『カオル。神殿にはね、地下があるの。もし神殿に行く事になっても、絶対に入ってはいけないわ』
『どうして?』
『危ないからよ。神官は、心がきれいな人だけではないの。心が醜い人が、よく集まっているのよ。カオルが迷い込んだら、連れていかれてしまうわ』
『入っちゃったらどうするの?』
『それはね──』
……あれ?ここからが思い出せない。母様は、何て言ってたんだっけ……頑張って思い出さないと……
『それはね、✕✕が、✕✕で──祈るのよ』
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