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第二章 神殿の少女達
第48話 書かれているもの
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「ここは祭壇だ」
奥の方まで歩いていって、司教様はそう言った。祭壇は、神に祈る事が出来る場所。私も、自分から話しかけるには、祭壇がないといけない。祭壇として力を持っているものでもないといけない。
「あなたは知らないでしょうが、神官もおなじ精霊術士なのですよ」
知ってます。……って、何でこの人が知ってるの?レティア神の話では、人間は精霊術士と神官を区別していると言っていたのに。レティア神があれだけ嫌っているから、レティア神の声が聞けたとも思えないし。
「神官も、精霊……術士……?」
ティルも知らなかったようで、司教様の言葉に動揺している。
「調べあげたからなぁ。知ってるだろう?神殿で祈らねば魔法は使えない事など……さすがに貴族などに手を出す訳にはいかないが、平民なら簡単だ。“魔憑き”としてしまえば、我が子であっても簡単に手放す。神殿で浄化するとしてな」
“魔憑き”……?魔憑きって何なんだろう?
「精霊術士の素養があるものを魔憑きとして連れ去ったのですか?」
「連れ去ったとは人聞きが悪い。親が預けていったんだ。引き取ると言った者は素直に返してあげたさ」
「意味合いでは同じでしょう。騙って子供と親を離したのには変わりないではないですか」
話にあまりついていけない。ティルは知っているみたいだけど、魔憑きって何なの?
魔憑き……魔憑き……あっ!母様の聖女の時の話であった!
魔憑きは、魅入られた者を意味する。何に魅入られたのかは、地域によって違うとの事。なぜ生まれるのか、どうして魔憑きになるのか、全く分かっていない。レティア神も、良く分からないとの事。そんな事があり得るのかと思うけど、知らないと言われれば、無理に聞く事は出来ない。
魔憑きは、魔力が強すぎて、制御が出来ない、または、そうなる可能性がある人を指す。魔憑きは、神殿で祈らなくても、魔法が使えるらしい。母様は、聖属性の魔力を持っているので、魔力を浄化出来たらしい。
この制御が出来ない魔力は、私達の、“聖”と“邪”が暴走するのと、似たような感じらしい。だから、私達の事も、すぐに受け入れられたのかもしれない。
魔力は、暴走すると、邪属性に近くなるらしく、聖属性で浄化すれば、ある程度はマシになるらしい。でも、マシになるだけで、根本的な解決にはならないのだとか。
でも、楽になる事には変わりないので、大金を払ってでも浄化を頼みに来る者も少なくはなかったらしい。中には貴族もいたという。
魔力が強いかどうかは、神殿で祈れば分かるらしいけど……私は父様に教えて貰って知っている。父様は、魔力の強さが分かるらしく、聖女の母様と、邪龍の父様の血を引いているからか、聖属性も、邪属性も強いらしい。だから、暴走した時の被害が大きいのだとか。
弱ければ良かったのにな。そんな事を聞いたら、どうしてもそんな風に思ってしまう。別に、フードを被りたくない訳ではない。両親が残してくれた唯一の物だし、暴走しないとしても、身につけたい。
でも、周りに迷惑はかけたくない。一度、街で脱がされたせいで、迷惑をかけてしまった。
「カオル嬢、こちらに来て貰えますか?」
司教様の言葉に、また現実に戻された。さっきまでティルと何か話していたようだけど、もう終わったのかな?
ひとまず、言われた通りに司教様の方に向かって、歩いていく。
「……やはり、ダメですね。あなたの顔をしっかり見たい。フードに隠れていては、見えるものも見えない」
その目は、本当に怖い。怖いけど、ここで下手に抵抗して、ナルミス様に危害が加えられるのは嫌だ。多分、手は震えている。でも、一挙手一投足まで見逃してなるものかと思い、目はそらさない。
「そろそろ、ナルミス神官は神殿の外に出ているでしょう。つまりは、あなたとの約束はもう、守る必要はない」
思わず、反射的に後ろに下がろうとするけど、がっちり掴まれてて、離れられない。
「カオルさん!」
ティルが近づいてこようとするけど、その足はすぐに止まった。それと同時に、私の首に何か冷たいものが当たる。これは……短剣?
「動かないで貰おうか。本当は傷をつけたくはないが、精霊術士になるには、血が必要だ。それに、なれなかったとしても、そのマリア聖女と瓜二つの顔が手に入れば良い」
この人、何を言っているの?もしかして、短剣で私の首を斬る気なの?この人は、最初は母様を信仰しているだけの人かと思っていたけど、これは違う。狂信的に惚れているんだ。
「精霊が手を出しても同じだ。お前達が手を出すよりも、私が首に刃を入れる方が速いのだからな」
……?まるで、精霊が見えているとでも言いたげな言い方だ。おかしな方向を向いているようにも見えないし、もしかして、見えているの?どうして?
「……なぜ、精霊がいると?」
「ここは祭壇があるからなぁ。力を持った祭壇がある空間ならば、誰でも精霊の光は見えるのだ」
祭壇に、そんな効果があるんだ。それなら、私がレティア神に祈っていた時は、ナルミス様も精霊が見えていたのだろうか。
「では、カオル嬢。そのまま更にこちらに来て貰います」
短剣を突きつけたままなのは変わらず、私を祭壇の方に近づける。目線だけ後ろに向けると、ティルと精霊達は、悔しそうな顔をしながらも、そこから動いてはいない。
リーズが起きていれば良いのに。そしたら、短剣なんて気にせずに、何とかしてくれるのに。
やっぱり私は、リーズがいないとダメなんだな。こんなに長い間話しかけられないのは、初めてだから、不安になっているのかも。
「思ったんですよ。あなた、精霊と話せるなら、精霊語が分かるのではないですか?」
分からない、と言えば嘘になる。でも、単語が少し分かるだけ。
「この祭壇に書かれているものが読めますか?」
そう言って、ある場所を指差した。そこは、ただのきずのように見えるけど、確かに文字だ。
読み進めてみると、驚きの内容が書いてあった。
「……分かります。少しだけなら」
「言ってみてください」
「彼ノ者……祈リ、捧ゲタリ。サスレバ……西ノ……扉、開カン……です」
奥の方まで歩いていって、司教様はそう言った。祭壇は、神に祈る事が出来る場所。私も、自分から話しかけるには、祭壇がないといけない。祭壇として力を持っているものでもないといけない。
「あなたは知らないでしょうが、神官もおなじ精霊術士なのですよ」
知ってます。……って、何でこの人が知ってるの?レティア神の話では、人間は精霊術士と神官を区別していると言っていたのに。レティア神があれだけ嫌っているから、レティア神の声が聞けたとも思えないし。
「神官も、精霊……術士……?」
ティルも知らなかったようで、司教様の言葉に動揺している。
「調べあげたからなぁ。知ってるだろう?神殿で祈らねば魔法は使えない事など……さすがに貴族などに手を出す訳にはいかないが、平民なら簡単だ。“魔憑き”としてしまえば、我が子であっても簡単に手放す。神殿で浄化するとしてな」
“魔憑き”……?魔憑きって何なんだろう?
「精霊術士の素養があるものを魔憑きとして連れ去ったのですか?」
「連れ去ったとは人聞きが悪い。親が預けていったんだ。引き取ると言った者は素直に返してあげたさ」
「意味合いでは同じでしょう。騙って子供と親を離したのには変わりないではないですか」
話にあまりついていけない。ティルは知っているみたいだけど、魔憑きって何なの?
魔憑き……魔憑き……あっ!母様の聖女の時の話であった!
魔憑きは、魅入られた者を意味する。何に魅入られたのかは、地域によって違うとの事。なぜ生まれるのか、どうして魔憑きになるのか、全く分かっていない。レティア神も、良く分からないとの事。そんな事があり得るのかと思うけど、知らないと言われれば、無理に聞く事は出来ない。
魔憑きは、魔力が強すぎて、制御が出来ない、または、そうなる可能性がある人を指す。魔憑きは、神殿で祈らなくても、魔法が使えるらしい。母様は、聖属性の魔力を持っているので、魔力を浄化出来たらしい。
この制御が出来ない魔力は、私達の、“聖”と“邪”が暴走するのと、似たような感じらしい。だから、私達の事も、すぐに受け入れられたのかもしれない。
魔力は、暴走すると、邪属性に近くなるらしく、聖属性で浄化すれば、ある程度はマシになるらしい。でも、マシになるだけで、根本的な解決にはならないのだとか。
でも、楽になる事には変わりないので、大金を払ってでも浄化を頼みに来る者も少なくはなかったらしい。中には貴族もいたという。
魔力が強いかどうかは、神殿で祈れば分かるらしいけど……私は父様に教えて貰って知っている。父様は、魔力の強さが分かるらしく、聖女の母様と、邪龍の父様の血を引いているからか、聖属性も、邪属性も強いらしい。だから、暴走した時の被害が大きいのだとか。
弱ければ良かったのにな。そんな事を聞いたら、どうしてもそんな風に思ってしまう。別に、フードを被りたくない訳ではない。両親が残してくれた唯一の物だし、暴走しないとしても、身につけたい。
でも、周りに迷惑はかけたくない。一度、街で脱がされたせいで、迷惑をかけてしまった。
「カオル嬢、こちらに来て貰えますか?」
司教様の言葉に、また現実に戻された。さっきまでティルと何か話していたようだけど、もう終わったのかな?
ひとまず、言われた通りに司教様の方に向かって、歩いていく。
「……やはり、ダメですね。あなたの顔をしっかり見たい。フードに隠れていては、見えるものも見えない」
その目は、本当に怖い。怖いけど、ここで下手に抵抗して、ナルミス様に危害が加えられるのは嫌だ。多分、手は震えている。でも、一挙手一投足まで見逃してなるものかと思い、目はそらさない。
「そろそろ、ナルミス神官は神殿の外に出ているでしょう。つまりは、あなたとの約束はもう、守る必要はない」
思わず、反射的に後ろに下がろうとするけど、がっちり掴まれてて、離れられない。
「カオルさん!」
ティルが近づいてこようとするけど、その足はすぐに止まった。それと同時に、私の首に何か冷たいものが当たる。これは……短剣?
「動かないで貰おうか。本当は傷をつけたくはないが、精霊術士になるには、血が必要だ。それに、なれなかったとしても、そのマリア聖女と瓜二つの顔が手に入れば良い」
この人、何を言っているの?もしかして、短剣で私の首を斬る気なの?この人は、最初は母様を信仰しているだけの人かと思っていたけど、これは違う。狂信的に惚れているんだ。
「精霊が手を出しても同じだ。お前達が手を出すよりも、私が首に刃を入れる方が速いのだからな」
……?まるで、精霊が見えているとでも言いたげな言い方だ。おかしな方向を向いているようにも見えないし、もしかして、見えているの?どうして?
「……なぜ、精霊がいると?」
「ここは祭壇があるからなぁ。力を持った祭壇がある空間ならば、誰でも精霊の光は見えるのだ」
祭壇に、そんな効果があるんだ。それなら、私がレティア神に祈っていた時は、ナルミス様も精霊が見えていたのだろうか。
「では、カオル嬢。そのまま更にこちらに来て貰います」
短剣を突きつけたままなのは変わらず、私を祭壇の方に近づける。目線だけ後ろに向けると、ティルと精霊達は、悔しそうな顔をしながらも、そこから動いてはいない。
リーズが起きていれば良いのに。そしたら、短剣なんて気にせずに、何とかしてくれるのに。
やっぱり私は、リーズがいないとダメなんだな。こんなに長い間話しかけられないのは、初めてだから、不安になっているのかも。
「思ったんですよ。あなた、精霊と話せるなら、精霊語が分かるのではないですか?」
分からない、と言えば嘘になる。でも、単語が少し分かるだけ。
「この祭壇に書かれているものが読めますか?」
そう言って、ある場所を指差した。そこは、ただのきずのように見えるけど、確かに文字だ。
読み進めてみると、驚きの内容が書いてあった。
「……分かります。少しだけなら」
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