61 / 107
第三章 学園の少女達
第59話 ティルは後輩に
しおりを挟む
「契約の手伝い……ですか?」
「カオルさんはご存じないと思われますが、毎年各学年から、五人ずつ代表を出して、国際で対抗戦を行うのです。そして、あなたを代表として出そうという動きがあります」
あんな精霊術を使ってしまえば、私が強いのは分かるだろう。国際で対抗戦という事は、他国の人も来るって事だよね……?あっ、もしかして───
「お気づきかもしれませんが、ラクエルシェンドからも出場者が出ます。そして、今回の会場はラクエルシェンドですから、そこの国王も見に来ます」
つまり、私が出るような事があれば、国王に私が姪だという事がバレてしまう可能性がある。
でも、私が王女の娘である事は、ここの教師達は知らない。だから、普通に優秀な生徒を出そうとしているんだろう。自分が優秀だとは思わないけど、精霊術が強いのは間違いない。
「カオルさんが参加しないためには、カオルさんよりも優れた人が必要です。ですが、あなた以上に優れている者を探すのは難しい。それに、私もあなたには出てほしいと思っています。ですので、嫌なら今のうちにそう言ってください」
嫌?ううん、そんなに嫌だとは思っていない。嫌なのは、この当たり前の日常が突然なくなるんじゃないかという事。バレたらどうなるかなんて、さすがの私でも分かる。王女の娘であると気づかれたら、多分引き渡すように言われると思う。
そうしたら、この当たり前がなくなってしまう。
「嫌……ですか?」
「……はい。私は、ファルメール公爵家の方達や、セレスティーナ様。ナルミス様やティルといたいんです」
「そう。ならば、出来るだけ出ないようにしましょう。ですが、確約は出来ませんよ?」
「……分かりました。それで、契約の手伝いというのは……」
「ええ。それで、あなたよりも優秀な人材が見つかれば、あなたは出ないですむかもしれませんからね」
どうやら、契約の手伝いをして、契約して、私よりも強い人が生まれたら、私は出なくても良くなるかもしれないらしい。これは、学園長なりの気遣いだろう。
「あなたは、二人の契約者を生み出した実績があります。反対意見は出ないでしょう。むしろ、精霊と契約出来るとなれば、ほとんどの者が喜びますからね」
言われてみれば、ルーフェミア様も嬉しそうだったし、セレスティーナ様はずっと契約したがっていた。
それほどまでに、契約は嬉しい事なんだ。私が、その手伝いが出来るなら……
「分かりました。やります」
「ありがとう。では、明日からお願いいたします」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーー
「そういう訳で、皆さんの契約のお手伝いをする事になりました」
「そうなのですか」
ルーフェミア様が聞きたがったので、王女の娘だという部分は隠して、ルーフェミア様に学園長との会話を話した。
「カオルさんと学園長は、虹の加護というもので精霊が見えるのですね」
「そうみたいです」
「会話が出来るのはなぜなのでしょう?」
「それは分かりません」
聖女である母様の血筋か、邪龍の父様の血筋かもと思っているけど、分からない。リーズに聞けば教えてくれるかもしれないけど、自分を知っている人以外では、人前で話しかけてくる事も、応える事も滅多にない。
自分の存在がバレないために、私がいる時にしか話しかけてこないみたい。
「ですが、カオルさんが代表となるのなら、わたくしもなれるようにいたしますわ」
ルーフェミア様は普通になれそうな気がするのは、私だけかな。
しばらくルーフェミア様と会話していると、ドアをノックする音が聞こえる。
「誰ですかね?」
「多分、あの子ですわよ。入っても構いませんわ」
ルーフェミア様がそう言うと、ノックした人物が入ってくる。
「お久しぶりです。カオルさん」
「ティル!」
入ってきたのは、ティルだった。ティルは、私と同じ制服を着ている。もしかして──
「私も、カオルさんやルーフェミア様とともに学園に通う事になりました」
しばらく会っていなかったら、どうしているかと思ったけど、クラウド様や学園長とかとお話して、学園に編入する準備をしていたらしい。
「そういえば、ナルミス様は……?」
「兄なら謹慎を終えたら通う事になると思いますよ。情状酌量の余地はあると……」
笑ってはいるけど、少し悲しそうに見える。ティルからしてみれば複雑なんだろう。
ナルミス様は、ティルを人質にとられていたから、司教様の言う事に従っていた。自分から望んでいた事ではないけど、準貴族である私と公爵令嬢であるルーフェミア様を誘拐した事には違いないので、謹慎になったらしい。
私達は当事者なので、ナルミス様と会ってはいけないそうだ。
いつになるか分からないけど……ナルミス様に会いたいな。
「カオルさんはご存じないと思われますが、毎年各学年から、五人ずつ代表を出して、国際で対抗戦を行うのです。そして、あなたを代表として出そうという動きがあります」
あんな精霊術を使ってしまえば、私が強いのは分かるだろう。国際で対抗戦という事は、他国の人も来るって事だよね……?あっ、もしかして───
「お気づきかもしれませんが、ラクエルシェンドからも出場者が出ます。そして、今回の会場はラクエルシェンドですから、そこの国王も見に来ます」
つまり、私が出るような事があれば、国王に私が姪だという事がバレてしまう可能性がある。
でも、私が王女の娘である事は、ここの教師達は知らない。だから、普通に優秀な生徒を出そうとしているんだろう。自分が優秀だとは思わないけど、精霊術が強いのは間違いない。
「カオルさんが参加しないためには、カオルさんよりも優れた人が必要です。ですが、あなた以上に優れている者を探すのは難しい。それに、私もあなたには出てほしいと思っています。ですので、嫌なら今のうちにそう言ってください」
嫌?ううん、そんなに嫌だとは思っていない。嫌なのは、この当たり前の日常が突然なくなるんじゃないかという事。バレたらどうなるかなんて、さすがの私でも分かる。王女の娘であると気づかれたら、多分引き渡すように言われると思う。
そうしたら、この当たり前がなくなってしまう。
「嫌……ですか?」
「……はい。私は、ファルメール公爵家の方達や、セレスティーナ様。ナルミス様やティルといたいんです」
「そう。ならば、出来るだけ出ないようにしましょう。ですが、確約は出来ませんよ?」
「……分かりました。それで、契約の手伝いというのは……」
「ええ。それで、あなたよりも優秀な人材が見つかれば、あなたは出ないですむかもしれませんからね」
どうやら、契約の手伝いをして、契約して、私よりも強い人が生まれたら、私は出なくても良くなるかもしれないらしい。これは、学園長なりの気遣いだろう。
「あなたは、二人の契約者を生み出した実績があります。反対意見は出ないでしょう。むしろ、精霊と契約出来るとなれば、ほとんどの者が喜びますからね」
言われてみれば、ルーフェミア様も嬉しそうだったし、セレスティーナ様はずっと契約したがっていた。
それほどまでに、契約は嬉しい事なんだ。私が、その手伝いが出来るなら……
「分かりました。やります」
「ありがとう。では、明日からお願いいたします」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーー
「そういう訳で、皆さんの契約のお手伝いをする事になりました」
「そうなのですか」
ルーフェミア様が聞きたがったので、王女の娘だという部分は隠して、ルーフェミア様に学園長との会話を話した。
「カオルさんと学園長は、虹の加護というもので精霊が見えるのですね」
「そうみたいです」
「会話が出来るのはなぜなのでしょう?」
「それは分かりません」
聖女である母様の血筋か、邪龍の父様の血筋かもと思っているけど、分からない。リーズに聞けば教えてくれるかもしれないけど、自分を知っている人以外では、人前で話しかけてくる事も、応える事も滅多にない。
自分の存在がバレないために、私がいる時にしか話しかけてこないみたい。
「ですが、カオルさんが代表となるのなら、わたくしもなれるようにいたしますわ」
ルーフェミア様は普通になれそうな気がするのは、私だけかな。
しばらくルーフェミア様と会話していると、ドアをノックする音が聞こえる。
「誰ですかね?」
「多分、あの子ですわよ。入っても構いませんわ」
ルーフェミア様がそう言うと、ノックした人物が入ってくる。
「お久しぶりです。カオルさん」
「ティル!」
入ってきたのは、ティルだった。ティルは、私と同じ制服を着ている。もしかして──
「私も、カオルさんやルーフェミア様とともに学園に通う事になりました」
しばらく会っていなかったら、どうしているかと思ったけど、クラウド様や学園長とかとお話して、学園に編入する準備をしていたらしい。
「そういえば、ナルミス様は……?」
「兄なら謹慎を終えたら通う事になると思いますよ。情状酌量の余地はあると……」
笑ってはいるけど、少し悲しそうに見える。ティルからしてみれば複雑なんだろう。
ナルミス様は、ティルを人質にとられていたから、司教様の言う事に従っていた。自分から望んでいた事ではないけど、準貴族である私と公爵令嬢であるルーフェミア様を誘拐した事には違いないので、謹慎になったらしい。
私達は当事者なので、ナルミス様と会ってはいけないそうだ。
いつになるか分からないけど……ナルミス様に会いたいな。
0
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います
あきた
ファンタジー
明治大正風味のファンタジー恋愛もの。
化物みたいな能力を持ったせいでいじめられていたキイロは、強引に知らない家へ嫁入りすることに。
所が嫁入り先は火事だし、なんか子供を拾ってしまうしで、友人宅へ一旦避難。
親もいなさそうだし子供は私が育てようかな、どうせすぐに離縁されるだろうし。
そう呑気に考えていたキイロ、ところが嫁ぎ先の夫はキイロが行方不明で発狂寸前。
実は夫になる『薄氷の君』と呼ばれる銀髪の軍人、やんごとなき御家柄のしかも軍でも出世頭。
おまけに超美形。その彼はキイロに夢中。どうやら過去になにかあったようなのだが。
そしてその彼は、怒ったらとんでもない存在になってしまって。
※タイトルはそのうち変更するかもしれません※
※お気に入り登録お願いします!※
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる