聖女と邪龍の娘

りーさん

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第三章 学園の少女達

第70話 笑わないのは

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「ふあ……」

 あくびをしながら私は起き上がる。隣を見ると、ルーフェミア様はまだ寝ているみたい。
 ベッドから出て、教科書の準備をする。今日は精霊学と、歴史と、午後に魔法の実技があって……

「カオルサマ」 

 準備していたら、精霊達が声をかけてくる。

「どうしたの?」
「ソト、デル」

 外に?こんな朝早い時間に外に出ろと言われるのは初めてかも。
 とりあえず、言われた通りに外に出る。

 すると、そこには一人の人物がいた。

「お久しぶりです」
「ナルミス様……!」

 そこには、壁にもたれるように、学園の制服を着たナルミス様がいた。

「あの……どうしてここに?謹慎は……」

 クラウド様やティルから謹慎が解けたという話は聞かない。
 謹慎が解けるまでは、当事者である私やルーフェミア様は会えないはずだったのに。
 でも、ナルミス様は制服を着てまでここにいる。

「残り一週間ほどですかね。ファルメール公爵から許可をいただきまして。カオル様はもう起きておられるだろうから、会うだけなら構わないと。ですが、女性の部屋に勝手に入るのは忍びないので、精霊に呼んできてもらいました」

 少し恥ずかしそうにナルミス様がそう言った。制服なのは、学園に私服で入るのは良くないと思ったらしい。
 精霊に呼んできてもらったの?と一瞬思ったけど、ティルがナルミス様は精霊が見えるって言っていたな。

「また通うんですか?」
「カオル様とルーフェミア様がお許しいただけるなら。ティルも気になりますしね」
「私は構いませんけど……」

 むしろ、会えたらいいなと思っていたくらいだし。
 私たちの許可がないとダメなのは、私達が当事者だからだ。私はともかく、ルーフェミア様は公爵家のお嬢様。
 そんな人を誘拐したんだから、本来なら、牢屋に入れられるレベルなのは、私でも分かっている。
 ナルミス様が無事なのは、脅されていた事、私達を助けるのを手伝った事があったから。

「そういえば、ティルはどうしていますか?」
「うまくやっているみたいですよ。あまり笑わないみたいですけど……」

 私に笑いかけていた時、みんなが驚いていたから、本当に笑わないんだろう。何で笑わないのか分からないけど……

「昔は年相応に笑っていたんですよ」
「そう……なんですか?」

 失礼かもしれないけど、今のティルを見ていると、想像が出来ない。

「ティルは両親を亡くして笑わなくなりました。ですが、カオル様とお話するのは楽しいみたいです」

 両親を亡くして……か。私と同じだな。私は精霊とリーズがいただけマシなんだろうけど。
 ずっと励ましてくれたし、ルーフェミア様が言ってくれたように、私のせいじゃないとずっと言ってくれた。

「それなら良いのですが……」
「本当は、私がしっかりしなければならなかったのですがね。あまり構ってやれなかったので、自分がしっかりしなくては、とか、兄さんには頼らない、という方向に行ってしまいまして……」

 なんとなく、分かるような気がする。リーズが多分そんな感じだ。私が一人落ち込んでいたから、自分は悲しむ暇なんてなかった。一人大人になろうとしていた。

「私達と似てますね」
「カオル様は幼い頃に亡くされたのでは……?」

 そんな事なんてナルミス様に話したっけ?もしかしたら、ティルから聞いたのかもしれない。ティルにはそんな感じの事を話したような気がするから。

「そうですよ。それで、私がずっと落ち込んでいたから、リーズがしっかり者になったのかな、と……」

『別にそんな事はないんだが』

 わっと!びっくりした……せめて会話していない時に話しかけてきてほしい……心臓に悪いから。

「カオル様?どうされましたか?」

 ナルミス様が心配そうにたずねてくる。周りに人がいないのを確認して、ナルミス様の質問に答えた。

「リーズが突然話しかけてきてびっくりしてしまって……」
「そうでしたか。では、私はそろそろ公爵家に戻ります」
「あっ、はい」

 私はナルミス様を見送って、部屋に戻った。すると、ドアの前にルーフェミア様がいた。

「ルーフェミア様おはようございます。起こしてしまいましたか?」
「い、いえ……大丈夫ですわ」

 なぜか少し慌てているように見える。訳をたずねても、はっきりとした返事は返ってこない。

「わたくしは、先に食堂に向かっておりますわ」
「えっ?」

 前までは学園長と二人で一緒にいるのも納得していなかったのに。
 ペコリと頭を下げて、少し急いで部屋を出ていってしまった。
 私はそれを、ただ見ているしか出来なかった。
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