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第三章 学園の少女達
第72話 いなくなったカオル
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「あれは何だったのでしょう……?」
セレスティーナは、先ほどのルーフェミアの反応に首をかしげていた。
ルーフェミアの印象としては、あどけなさは残るけど、普通の公爵令嬢といった感じだった。
自分にも、作り笑いで対応する。決して隙を見せようとはしない。それが、セレスティーナの抱く貴族としてのイメージだ。
セレスティーナは、自分が貴族である事に誇りを持っていた。なので、平民を見下すような発言も多々あった。あからさまにという訳ではなく、本人も無意識のうちで、という感じだった。
ルーフェミアも、そんな自分と似たような感じではないかと思った。
それが、カオルという少女と出会って、少し変わったような気がした。カオルと話している時のルーフェミアは、心の底から笑っているように見えた。
そんな様子を見ていたら、誰にだって、カオルはルーフェミアにとって大切な存在だと分かる。
そんな存在から、自分の意志で離れた事に疑問に思った。
(カオルさんとの間に、何かあったのは間違いありませんわ。ですが、カオルさんが問題を起こすようには思えませんわね……)
セレスティーナから見たカオルのイメージは、礼儀正しい少女という立ち位置だった。誰にでも敬語と様づけする。人の悪口なんて言ったりもしていないし、そんな話も聞かない。
そんなだから、喧嘩などの問題を起こすようには、到底思えなかった。彼女が何か言い返すような様も想像がつかないというのに。
「カオルさんに直接聞いてみましょうか」
カオルの部屋を聞いた訳ではないが、同じ公爵家であるルーフェミアの部屋は知っているので、道に迷う事はなかった。
カオルの部屋の前まで来て、ノックする。
「カオルさん、いらっしゃいますか?わたくし、セレスティーナですわ」
そうは言ったものの、中から返事はない。
「いらっしゃらないのでしょうか?」
使用人がセレスティーナに声をかける。
再びノックするも、やはり中から返事がない。
「失礼しますわ」
ドアを開けて、中の様子を見る。すると、そこにはカオルの姿はなかった。
「カオルさん!カオルさん!」
呼んでも返事はない。この部屋には誰もいないようだ。
部屋の中を調べてみると、教科書がいくつかなくなっており、カオルがいつも持ってくる鞄もない。
少なくとも、カオルは準備を終えて部屋から出たのであろう事は推測できた。
「一体、どこへ行かれたのでしょうか……」
食堂へは単純な道で、途中に階段があるくらいだ。間違える事なんてないだろう。
「ミューラ。カオルさんが行きそうな場所ってどこでしょうか?」
セレスティーナは自分の使用人にいてもたってもいられずにたずねる。
ミューラは、それを聞いて少し悲しい気持ちになる。自分よりも、主であるセレスティーナの方がカオルと過ごした時間は長いはずだ。カオルが神殿に誘拐された時も、真っ先に助けに行っていた。
「私には……わかりません」
本当に分からなかった。自分よりも長くカオルと接してきたセレスティーナが分からないなら当然だ。
「そうですか……では、とりあえずこのあたりを探ってみましょう」
「はい!」
そのままずっと探していたが、結局カオルは見つからなかった。そして、授業開始時間になっても現れなかった。
教室では、再びカオルが連れ去られたのではないかと噂になっている。だが、神殿の一件以来、持ち物検査も厳しくなり、セキュリティも強化されたから、簡単には誘拐など出来るはずもなかった。
(どうしましょう……わたくしは、いつも後手に回ってばかりですわ)
以前の誘拐も、自分がもう少し忠告したり、警戒したら大丈夫かと思っていた。
いくら加護を持っているとはいえ、加護の力は、その本人が望まなければ使えない。それくらいは、常識として知っている。
誘拐されそうになったとしても、威力の高い精霊術では、カオルも傷つけてしまう可能性があるから、精霊も迂闊には攻撃できない。
その可能性に思いいたっていたら、決して一人にはさせなかっただろう。
(おそらく、学園の外には出ていないはずですわ。転移石はもう持ち込めないようになっているはずですし、わずかな時間で連れ出せるとも思えませんし……)
学園内にいるはずなのに、誰も知らない。もしかしたら、外部の人ではないのではないかと感じた。でも、カオルの誹謗中傷は、よく聞くようになった。カオルに何かしている可能性もないとは言えないのだ。
(どうか、ご無事で……)
セレスティーナは、ただ祈るしか出来なかった。
セレスティーナは、先ほどのルーフェミアの反応に首をかしげていた。
ルーフェミアの印象としては、あどけなさは残るけど、普通の公爵令嬢といった感じだった。
自分にも、作り笑いで対応する。決して隙を見せようとはしない。それが、セレスティーナの抱く貴族としてのイメージだ。
セレスティーナは、自分が貴族である事に誇りを持っていた。なので、平民を見下すような発言も多々あった。あからさまにという訳ではなく、本人も無意識のうちで、という感じだった。
ルーフェミアも、そんな自分と似たような感じではないかと思った。
それが、カオルという少女と出会って、少し変わったような気がした。カオルと話している時のルーフェミアは、心の底から笑っているように見えた。
そんな様子を見ていたら、誰にだって、カオルはルーフェミアにとって大切な存在だと分かる。
そんな存在から、自分の意志で離れた事に疑問に思った。
(カオルさんとの間に、何かあったのは間違いありませんわ。ですが、カオルさんが問題を起こすようには思えませんわね……)
セレスティーナから見たカオルのイメージは、礼儀正しい少女という立ち位置だった。誰にでも敬語と様づけする。人の悪口なんて言ったりもしていないし、そんな話も聞かない。
そんなだから、喧嘩などの問題を起こすようには、到底思えなかった。彼女が何か言い返すような様も想像がつかないというのに。
「カオルさんに直接聞いてみましょうか」
カオルの部屋を聞いた訳ではないが、同じ公爵家であるルーフェミアの部屋は知っているので、道に迷う事はなかった。
カオルの部屋の前まで来て、ノックする。
「カオルさん、いらっしゃいますか?わたくし、セレスティーナですわ」
そうは言ったものの、中から返事はない。
「いらっしゃらないのでしょうか?」
使用人がセレスティーナに声をかける。
再びノックするも、やはり中から返事がない。
「失礼しますわ」
ドアを開けて、中の様子を見る。すると、そこにはカオルの姿はなかった。
「カオルさん!カオルさん!」
呼んでも返事はない。この部屋には誰もいないようだ。
部屋の中を調べてみると、教科書がいくつかなくなっており、カオルがいつも持ってくる鞄もない。
少なくとも、カオルは準備を終えて部屋から出たのであろう事は推測できた。
「一体、どこへ行かれたのでしょうか……」
食堂へは単純な道で、途中に階段があるくらいだ。間違える事なんてないだろう。
「ミューラ。カオルさんが行きそうな場所ってどこでしょうか?」
セレスティーナは自分の使用人にいてもたってもいられずにたずねる。
ミューラは、それを聞いて少し悲しい気持ちになる。自分よりも、主であるセレスティーナの方がカオルと過ごした時間は長いはずだ。カオルが神殿に誘拐された時も、真っ先に助けに行っていた。
「私には……わかりません」
本当に分からなかった。自分よりも長くカオルと接してきたセレスティーナが分からないなら当然だ。
「そうですか……では、とりあえずこのあたりを探ってみましょう」
「はい!」
そのままずっと探していたが、結局カオルは見つからなかった。そして、授業開始時間になっても現れなかった。
教室では、再びカオルが連れ去られたのではないかと噂になっている。だが、神殿の一件以来、持ち物検査も厳しくなり、セキュリティも強化されたから、簡単には誘拐など出来るはずもなかった。
(どうしましょう……わたくしは、いつも後手に回ってばかりですわ)
以前の誘拐も、自分がもう少し忠告したり、警戒したら大丈夫かと思っていた。
いくら加護を持っているとはいえ、加護の力は、その本人が望まなければ使えない。それくらいは、常識として知っている。
誘拐されそうになったとしても、威力の高い精霊術では、カオルも傷つけてしまう可能性があるから、精霊も迂闊には攻撃できない。
その可能性に思いいたっていたら、決して一人にはさせなかっただろう。
(おそらく、学園の外には出ていないはずですわ。転移石はもう持ち込めないようになっているはずですし、わずかな時間で連れ出せるとも思えませんし……)
学園内にいるはずなのに、誰も知らない。もしかしたら、外部の人ではないのではないかと感じた。でも、カオルの誹謗中傷は、よく聞くようになった。カオルに何かしている可能性もないとは言えないのだ。
(どうか、ご無事で……)
セレスティーナは、ただ祈るしか出来なかった。
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