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第三章 学園の少女達
第74話 買い叩き
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「そういえば、これはどこで買ったんだ?」
「え~っと……」
あれ?お店の名前って何だったっけ?ルーフェミア様が連れていってくれた場所だから、分からないな。
「お店の名前が分からなくて……王都で有名なお店で、庶民も買える場所だったのは覚えてるんですけど……」
「それなら、パル・ルノークか」
それがお店の名前なんだ。そういえば、そんな名前のお店だったような気もする。
「なら、そちらの方に向かおう。ちょうど行こうと思っていたからな」
ルドニーク様と一緒に、そのパル・ルノークというアクセサリー店に向かう。
それにしても、まだ貴族様が行くような場所は良かったかもしれないけど、庶民も来るような場所で私達だけでいても大丈夫なのかな。
「あの……ルドニーク様」
「なんだ?」
「私達だけで庶民が来るような場所まで来ても良いんですか?」
「問題ない。護衛ならいる」
……?護衛?周りを見ても、そんな人はどこにも見当たらない。もしかして、護衛に見えないけど護衛なのかもしれない。
そう思ったら、街中を歩いている人が、全員そんな風に見えてきた。
私はあたりをキョロキョロ見渡しながら、パル・ルノークというアクセサリー店についた。
そこでは、やけに人が集まっていた。
「何かあったのでしょうか?」
「さぁな。見に行ってみるか」
私とルドニーク様はお店に近づく。周りが私達に気がつくと、途端に離れていった。
「どうしたのでしょう」
「俺が魔憑きなのは有名だからな。近寄りたくないんだろ」
それが当然であるかのように言いきった。もしかして、これが普通なのかな。魔憑きは、避けられるのが。
私は聖女の娘だから、あまり気にした事はないけど、外の世界はこれが普通。
だから、司教様が魔憑きだって言った時に、置いていく人が多かったのかもしれない。
『人間は、自分と違うものや理解できないものを恐れる』
父様がよく言っていた。今思えば、邪龍というだけで、恐れていたのかもしれない。父様は母様といるために、よく人化していたけど、普段は大きな黒い龍の姿。
そんな存在は、怖がられてもおかしくないのかもしれない。私は、父様が優しいって知ってるから、怖くないと分かっていたけど、父様をよく知らない人間からすれば、自分達をすぐに殺せる存在なんだから、怖がるよね。
魔憑きも同じなのかも。強い魔法が使えるから。感情的になったりすると、魔力が暴走するから。自分が傷つくと怖いのかもしれない。自分とは違うから。
「……ル。おい、どうした?」
「あっ、いえ、なんでもありません」
「何か考え事でもしてたのか?ずっと上の空だったが」
「すみません……」
ずっと呼び掛けてくれていたんだな。なんか、おいの前に何か聞こえた気がするけど、なんて言ってたんだろう。
「店主。何があった?」
ドアを開けて、中にいる店主さんに声をかけている。
お店を見渡すと、ほとんどのアクセサリーがなくなっていた。
店主さんは、少し悲しそうに沈んでいたけど、声をかけられて私達の存在に気づいたみたい。
「ヴァレリーフ様!いかがなさいましたか」
さっきまで少し沈んでいるように見えた店主さんが、ビシッと背筋を伸ばした。そういえば、ルドニーク様の家名は、ヴァレリーフだったな。そして、ルドニーク様は、本当に悪い意味で有名みたい。
さっきまで沈んでいた店主さんの背筋がいきなり伸びたから。
「何かあったのかと聞いているんだ。泥棒が入った訳ではなさそうだな」
ルドニーク様はあたりを見回しながらそう言った。泥棒が何なのかは私にも分かる。確かに、お店の中は荒らされてはいないから、泥棒がいた訳ではないみたい。
「実は、魔道具に加工出来るものをすべて買い叩かれまして……」
えっ?魔道具って、出来るものと出来ないものがあるの?それじゃあ、私は運よくそのアクセサリーを買ったんだ。
「買い叩かれるくらいなら、売らなければ良いだろう」
それは私もそう思う。売れませんって断れば良いのに。
「相手が相手ですから……」
「貴族か?」
「いえ、商業ギルド本部長の娘でして……」
ショウギョウギルドって何なんだろう?ギルドなら知っている。黒いもやを纏った人がたくさんいたから、はっきりと覚えている。
「売らなければ店を取り上げるとでも言われたのか」
「はい。それで、売るしかなく……」
それって脅しじゃないの!?いくら良い立場でも、そんな風に脅したりするのは良くないのに。
「じゃあ、そこにいって交渉してくる事にしよう。買い叩かれた分の金額は代わりに払っておいてやる」
ルドニーク様がパチンと指を鳴らすと、どこからともなく一人の男の人が現れる。
えっ!?どこにいたの?もしかして、護衛ってこの人!?
ルドニーク様はまったく驚いていない。どうやら、そもそも知っていたみたい。
『ずっとお前らの後をつけてきてただろうが』
まさかのリーズまで気づいていた。私の中にいるのに、どうやって気づいたのかな?
「とりあえず、この場はアゼルに任せて、俺らは商業ギルドに行くぞ」
「えっ……あっ、はい」
私がついていけないでいると、ルドニーク様は私の手を引っ張って店の外に出ていく。アゼルさんと呼ばれた人が気になって後ろを見るけど、なんか微笑みを向けられた。
一体、何なの?その疑問に答えてくれる人はいなかった。
「え~っと……」
あれ?お店の名前って何だったっけ?ルーフェミア様が連れていってくれた場所だから、分からないな。
「お店の名前が分からなくて……王都で有名なお店で、庶民も買える場所だったのは覚えてるんですけど……」
「それなら、パル・ルノークか」
それがお店の名前なんだ。そういえば、そんな名前のお店だったような気もする。
「なら、そちらの方に向かおう。ちょうど行こうと思っていたからな」
ルドニーク様と一緒に、そのパル・ルノークというアクセサリー店に向かう。
それにしても、まだ貴族様が行くような場所は良かったかもしれないけど、庶民も来るような場所で私達だけでいても大丈夫なのかな。
「あの……ルドニーク様」
「なんだ?」
「私達だけで庶民が来るような場所まで来ても良いんですか?」
「問題ない。護衛ならいる」
……?護衛?周りを見ても、そんな人はどこにも見当たらない。もしかして、護衛に見えないけど護衛なのかもしれない。
そう思ったら、街中を歩いている人が、全員そんな風に見えてきた。
私はあたりをキョロキョロ見渡しながら、パル・ルノークというアクセサリー店についた。
そこでは、やけに人が集まっていた。
「何かあったのでしょうか?」
「さぁな。見に行ってみるか」
私とルドニーク様はお店に近づく。周りが私達に気がつくと、途端に離れていった。
「どうしたのでしょう」
「俺が魔憑きなのは有名だからな。近寄りたくないんだろ」
それが当然であるかのように言いきった。もしかして、これが普通なのかな。魔憑きは、避けられるのが。
私は聖女の娘だから、あまり気にした事はないけど、外の世界はこれが普通。
だから、司教様が魔憑きだって言った時に、置いていく人が多かったのかもしれない。
『人間は、自分と違うものや理解できないものを恐れる』
父様がよく言っていた。今思えば、邪龍というだけで、恐れていたのかもしれない。父様は母様といるために、よく人化していたけど、普段は大きな黒い龍の姿。
そんな存在は、怖がられてもおかしくないのかもしれない。私は、父様が優しいって知ってるから、怖くないと分かっていたけど、父様をよく知らない人間からすれば、自分達をすぐに殺せる存在なんだから、怖がるよね。
魔憑きも同じなのかも。強い魔法が使えるから。感情的になったりすると、魔力が暴走するから。自分が傷つくと怖いのかもしれない。自分とは違うから。
「……ル。おい、どうした?」
「あっ、いえ、なんでもありません」
「何か考え事でもしてたのか?ずっと上の空だったが」
「すみません……」
ずっと呼び掛けてくれていたんだな。なんか、おいの前に何か聞こえた気がするけど、なんて言ってたんだろう。
「店主。何があった?」
ドアを開けて、中にいる店主さんに声をかけている。
お店を見渡すと、ほとんどのアクセサリーがなくなっていた。
店主さんは、少し悲しそうに沈んでいたけど、声をかけられて私達の存在に気づいたみたい。
「ヴァレリーフ様!いかがなさいましたか」
さっきまで少し沈んでいるように見えた店主さんが、ビシッと背筋を伸ばした。そういえば、ルドニーク様の家名は、ヴァレリーフだったな。そして、ルドニーク様は、本当に悪い意味で有名みたい。
さっきまで沈んでいた店主さんの背筋がいきなり伸びたから。
「何かあったのかと聞いているんだ。泥棒が入った訳ではなさそうだな」
ルドニーク様はあたりを見回しながらそう言った。泥棒が何なのかは私にも分かる。確かに、お店の中は荒らされてはいないから、泥棒がいた訳ではないみたい。
「実は、魔道具に加工出来るものをすべて買い叩かれまして……」
えっ?魔道具って、出来るものと出来ないものがあるの?それじゃあ、私は運よくそのアクセサリーを買ったんだ。
「買い叩かれるくらいなら、売らなければ良いだろう」
それは私もそう思う。売れませんって断れば良いのに。
「相手が相手ですから……」
「貴族か?」
「いえ、商業ギルド本部長の娘でして……」
ショウギョウギルドって何なんだろう?ギルドなら知っている。黒いもやを纏った人がたくさんいたから、はっきりと覚えている。
「売らなければ店を取り上げるとでも言われたのか」
「はい。それで、売るしかなく……」
それって脅しじゃないの!?いくら良い立場でも、そんな風に脅したりするのは良くないのに。
「じゃあ、そこにいって交渉してくる事にしよう。買い叩かれた分の金額は代わりに払っておいてやる」
ルドニーク様がパチンと指を鳴らすと、どこからともなく一人の男の人が現れる。
えっ!?どこにいたの?もしかして、護衛ってこの人!?
ルドニーク様はまったく驚いていない。どうやら、そもそも知っていたみたい。
『ずっとお前らの後をつけてきてただろうが』
まさかのリーズまで気づいていた。私の中にいるのに、どうやって気づいたのかな?
「とりあえず、この場はアゼルに任せて、俺らは商業ギルドに行くぞ」
「えっ……あっ、はい」
私がついていけないでいると、ルドニーク様は私の手を引っ張って店の外に出ていく。アゼルさんと呼ばれた人が気になって後ろを見るけど、なんか微笑みを向けられた。
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