聖女と邪龍の娘

りーさん

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第三章 学園の少女達

第76話 商会長と本部長の娘 (遅れました)

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「ここに娘がおりますが……」
「行くぞ」
「はい」

 ルドニーク様は、ノックもせずに入った。えっ?まずくないですか?
 中には、ソファのど真ん中に座っている少女がいる。私と同い年くらいかな。ノックもせずに入ってきたのに、彼女は怒ったりするような様子もない。

「あら、ヴァレリーフ様。ノックもせずに入るなど」
「お前以外にそんなことはしない」
「相変わらず私を女とは見てくれないのね」

 相変わらず……?どうやら、昔から交流があるみたい。

「それで、後ろのお嬢様はあなたのこれかしら?」

 彼女は、小指だけを立てる動作をする。どういう意味だろうと思っていると、とたんに、ルドニーク様が慌て出す。

「そんな訳ないだろ!」
「慌てるとは怪しいわね~」

 彼女はクスクスと笑っている。

「お前が変なことを言うからだ」
「まぁ、いいわ。初めまして。私はエルル・ゲネルティー。ゲネルティー商会の会長の娘であり、商業ギルド本部長の娘でもあるわ」
「カオル・テレスティリアです。よろしくお願いします、エルル様」
「あら、ずいぶんと礼儀正しいのね。どこぞの坊っちゃんとは大違い」

 エルル様はチラッとグレニール様を見ながらそう言った。
 ルドニーク様はふんとそっぽを向く。

「テレスティリア……っていうと、準貴族で神殿とトラブったお嬢様ね!」

 間違ってはいないけど……その言い方だと、私達も悪い事をしたみたいに聞こえる。
 一応、私達は被害者というくくりだから、大丈夫だと思うけど……

「それで、お前が買い占めたやつはどこにある」

 ルドニーク様が辺りをキョロキョロと見渡す。

「あっ!また私から買い叩く気ね!そうはいかないんだから!」

 最初にアクセサリー店から買い叩いたのはエルル様の方なのに……自分が買い叩かれるのは嫌みたい。

「何言ってるんだ?買い叩かないぞ」
「えっ?」
「俺が適正の値段を払ったから持っていくんだ」
「それはドロボーよ!ドロボー!」

 指差しながらエルル様が叫んでいる。そんな事は気にも止めずに、ルドニーク様は引き出しを開けたりしている。
 確かに、状況を知らない人が見れば、泥棒みたいに見えるかもしれない。

「そもそも、なんで買い叩いたんですか……」

 私が思わずそう呟いてしまった。それが、エルル様には聞こえていたらしく、「決まってるじゃない」と胸を張る。

「高額で売りさばくためよ!」

 ……ルドニーク様が様をつける価値がないって言った理由が分かったような気がする。なぜかは言えないけど……

『とんでもないバカだな、こいつ』

 リーズが言っちゃったー!さすがの私でも、それでは成功しないのは分かる。商売がそんな単純なんかじゃないという事くらいは。

「お前はまたそんな理由で……」

 コジット様も頭を抱えている。またって事は、前にもやった事があるんだろうな。

「よし、見つけたから帰るぞ、テレスティリア」
「……あっ、はい!」
「ちょっと!見つけたって事は私のアクセサリーを盗んだっていうの!?返しなさいよドロボー!」

 エルル様が走ってくる。

「お前の魔力を借りるぞ」
「えっ?」

 私が戸惑っていると、何かふっと抜けたような感覚になった。そして、伸ばした手がグレニール様に触れようとした時、バチッと電流が走る。

「痛っ……!なんであんたが結界を使えるのよ!あんた、聖属性も、光の加護も持ってないじゃない!」
「テレスティリアが持ってるからな。借りた」

 ……えっ?多分、私だけじゃなくてこの場にいるほとんどの人が思ったと思う。

『そういえば、吸収の加護とかいうのがあったような……』
『何それ?』
『自分が望んだものを一時的に体に取り込めるんだ。お前の聖属性の魔力を取り込んだんだろうな』

 そんな加護があるの!?……あれ?という事は、私の中に邪属性があるのも気づかれたんじゃ……だって、分かってないと聖属性だけを取り出すのは出来ないはずだから。

「テレスティリア。戻るぞ」
「……はい」

 少し不安になりながら、私とルドニーク様は部屋を出た。
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