聖女と邪龍の娘

りーさん

文字の大きさ
80 / 107
第三章 学園の少女達

第78話 一体何者

しおりを挟む
(どうしましょうか……)

 ルーフェミアとセレスティーナは、教室に閉じ込められていた。
 本来なら、魔法などで対抗するのだが、その魔法が効かなかった。相手の結界が、自分達の使う魔法を弾くし、物理攻撃は多少は通じるものの、ほとんど防いでしまう。
 二人は魔法攻撃しか出来ないので、すぐに拘束された。と言っても、手が縛られているだけだが。

「セレスティーナ様。どうしましょうか」
「精霊と契約しているわたくし達でも敵わないのならば、おそらくここの生徒達は誰も敵わないと思いますわ。なんとかなりそうなのは、カオルさんとヴァレリーフ様くらいでしょうが……」

 セレスティーナは、カオルと同じくルドニークも今日は見かけていない。それなら、また授業をサボってどこかにいるのだと思う。
 少なくとも、カオルもルドニークもこの場にいない事は事実だった。

「カオルさんはヴァレリーフ様とお知り合いのようですし、お二人は一緒にいるのかもしれませんわね。カオルさんが何も言わずにいなくなったのならば、ヴァレリーフ様に無理やり付き合わされているような状態なのでしょう」
「う~ん……それなら、いつ戻るか分かりませんわね……外に行っているのだとすれば、入ってこれないかもしれませんわ」

 これだけの事をするような者達が、助けが来れるようにする訳がない。結界か何かで入れないようにするはずだ。
 考えを巡らせている時、服を引っ張る存在がいる。
 それは、自分よりも小さい存在。ベントスだ。

「どうしたのですか?」

 ベントスは、窓の方を指差している。セレスティーナも精霊が見えるだけで会話は出来ないので、ベントスも手振りで知らせるしかない。

(外に何かあるのでしょうか?)

「ルーフェミア様。少し窓の方に移動しませんか?」
「分かりましたわ」

 見張りは廊下にいるので、足をうまく使って、窓の方まで移動する。
 当然、警戒も忘れないが、魔法攻撃しか手段がない自分達の事はそこまで警戒していないように見えた。
 そして、壁を背にして、立ち上がって窓の外を見る。

「どうしましたの?」

(水の精霊ですわね)

 ルーフェミアだけには、窓の外にいる精霊が見えていた。
 そこには、一人の精霊がいる。水の精霊は、壁をすり抜けてきた。

「どうしましたの?」
「ルーフェミア様。何か見えておいでですか?」
「水の精霊がおりますわ」

 水の精霊は、水を生み出して文字を作った。文字の勉強をしていたカオルの側にいた精霊は、会話だけでなく、簡単な文なら人間の言葉でも書く事が出来るようになっていた。
 精霊が浮かべた文字は、カオルサマ、ルドニーク、そと、いるだった。

「お二人は結界外におられるのですね?」

 ルーフェミアがそう聞くと、水の精霊はコクンとうなずいた。
 そして、けっかい、なか、はいれない。なに、あった、みてきて、いわれたと書いている。

「何があったかですか……反対勢力が攻めてきた……という所ですわね」

 精霊は、ルーフェミアの話を聞いて、つたえるという文字を浮かべてから、また壁をすり抜けていった。

「カオルさんには何事もなかったようで何よりですが……セレスティーナ様?どうされましたの?」

 さっきから考え込んでいるセレスティーナの顔を伺うようにたずねる。

「あの精霊は、カオルさんの事をカオルサマとしていましたわ。それなら、精霊からはカオルサマと呼ばれている事になりますわよね」

 ルーフェミアは、言われてみればそうだと思った。
 以前のリーズという存在が誰なのかも気になるが、精霊にカオルサマと呼ばれる理由も気になる。でも、それを知ったら、カオルが遠い存在になるような気がした。
 聞きたいのに、聞きたくなくなっていた。

(カオルさん。あなたは、一体何者なのですか)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...