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第三章 学園の少女達
第81話 言霊
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少し時間は戻り、リーズとルドニークが別れた時。
リーズは真正面の存在達と向き合う。
「蛇だかなんだか知らないが、さっさとやっちまうか」
『殺したりしないでよ』
『しないって言ってるだろ』
先ほどから、リーズの中でカオルがリーズを止めている。
リーズは、はっきりと否定したいが、リーズは人間を信用していないどころか、嫌っているので、あまり否定ができなかった。
「誰だ?あのガキ」
「フードを被った少女……噂の精霊術士だろ」
「なら、殺さずに捕まえるか」
向こうが殺さずに手加減してくれるという事実に、リーズは笑みがこぼれる。向こうに本気で来られたら、手加減が難しいが、向こうも手加減してくれるなら難易度は格段に下がる。
(手加減するなら、邪眼は使わなくてもいいな)
一日に一回しか使えず、回復するまでは表に出れないほど、体力も魔力も消耗してしまうので、できるだけ使わないようにしたかった。まだこれらよりも強い存在もいるかもしれないのに、切り札を使う訳にはいかなかった。
「光の精霊。いざとなればあいつらに電流浴びせられるか」
「デキル!」
「ボクモ!」
「アタシモ!」
精霊達の自信満々な声を聞いたリーズは、男達の方に近づく。
龍の身体能力は、並の男も凌駕しており、男達は何の反撃も出来ないまま、リーズの手刀を首に喰らう。
死角から狙われても、宙返りして後ろに回り込み、逆に返り討ちにした。
そして、ものの数分で、五人もいた男達、全員が、リーズの手刀により気絶した。
(さて、あいつの所に行くか)
リーズは、精霊達に案内してもらって、ルドニークの所に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「お前、何やってんだ?」
「コトダマダ!ソレデウゴケナイ」
ルドニークの方に近づいて、体を触ったりしていると、近くにいる精霊がリーズに事情を説明した。
(そういえば、父上がちょくちょく使ってたような気もするな。なんか、記憶によれば、それがきっかけで母上に興味を持ったんだったか……?)
言霊は、魔力をこめて発する事で、相手を従わせる魔法だ。欠点として、相手よりも強い魔力がないと発動しないが、逆に言えば、自分の方が魔力が強かったら、何でも言う事を聞かせられる。
邪龍であるガーノルドは、魔力がかなり強かったので、大抵の相手は従わせる事ができた。
そして、そんなガーノルドが唯一従わせられなかった存在が、聖女であるマリア。
(こいつは魔憑き。そんじょそこらの人間よりも魔力は強いはずだ。そんな奴でも従わせられるなら、あの女の魔力は……)
ルドニークは魔憑きなので、魔力は一般人よりも強い。そして、言霊は自分よりも強い魔力を持つ者には通じない。それなのに、ルドニークが言霊にかかっているのなら、魔憑きのルドニークよりも強い魔力を持っている事になる。
「よくもやったわね……!」
リーズが手加減していたので、死んではいないと思っていたが、思ったよりもすぐに立ち上がった。
リーズは、女の方に注意を向ける。
「フードを被った少女……噂の精霊術士ね」
まったく同じ事を言っているなという目で見ながらも、警戒は怠っていない。
噂の精霊術士は、正確にはリーズではなくカオルなのだが、色が違うだけでほぼ瓜二つで、容姿は詳しく知られてはいないので、リーズが精霊術士だと思っている。
「だとしたらどうする?」
「連れ帰るわよ。あんたもターゲットだからね!」
『なんで私を狙うのかな……』
リーズの中から話を聞いていたカオルが不安そうに呟く。
『知らないが、精霊術士としているなら、精霊術士として欲している可能性が高いな』
『そっか……』
カオルは、納得したような、少し落ち込んだような感じでそう言った。
(とりあえず、何とかして片づけるか)
「“止まれ”」
リーズが動こうとすると、女が言霊をぶつけてくる。リーズの動きはその言葉通りに止まる。だが、すぐに動き出した。
そして、女の腕を掴んで投げ飛ばす。
「あんた、何で動けるのよ!」
「さぁな。私にも分からん」
一瞬動けなくなったので、確かに言霊は効いていた。でも、すぐに動けたのだ。リーズにもその理由は分からなかった。少し考えて、ある答えに行き着く。
(もしかして、魔力の強さが拮抗してるのか?)
言霊は効いたので、相手の方が魔力が強いのだろう。だが、すぐに動けたという事は、相手が自分よりも強すぎるという事もない。
それなら、なんとかなるかもしれない。でも、言霊の解き方が分からないには、無闇に倒す訳にもいかなかった。それに、やりすぎるとカオルが悲しむという点もある。
(記憶伝達で探ってみるか……?でも、頭が痛くなるんだよな、あれは……)
父親も使っていたので、記憶伝達で探れば分かるかもしれないが、頭痛という副作用のようなものがあった。
普通にカオルが表に出ている時は構わないが、今は自分が表に出ている。相手との実力にそこまで差がある訳ではないので、少しでも自分に不利な状況を作る訳にはいかない。
(まぁ、やるしかないか)
リーズは、記憶伝達で受け継がれた記憶を探りながら、女の相手をしている。女は、言霊で、自分の動きを操ってくるが、すぐに思い通りに動けるようになるので、そこまで問題ではなかった。
そして、探っているうちに、答えに辿り着く。
『マリアは強い聖属性を持っているから効かなかったのかもな』
『無意識のうちに浄化したのかもしれませんね。だからと言って、操っては欲しくなかったですけど』
『マリアが勝手に俺の縄張りに入ってくるからだな……』
ガーノルドとマリアの会話が脳内に響いた。
(聖属性で浄化すれば解除出来る……でも)
リーズが戸惑っているのは、自分ではなく、カオルにしか聖属性が使えないからだ。そして、聖属性を使うために入れ替わったら、この場にいる全員に自分達の事がバレてしまう。
(さて、どうするべきか……)
リーズは真正面の存在達と向き合う。
「蛇だかなんだか知らないが、さっさとやっちまうか」
『殺したりしないでよ』
『しないって言ってるだろ』
先ほどから、リーズの中でカオルがリーズを止めている。
リーズは、はっきりと否定したいが、リーズは人間を信用していないどころか、嫌っているので、あまり否定ができなかった。
「誰だ?あのガキ」
「フードを被った少女……噂の精霊術士だろ」
「なら、殺さずに捕まえるか」
向こうが殺さずに手加減してくれるという事実に、リーズは笑みがこぼれる。向こうに本気で来られたら、手加減が難しいが、向こうも手加減してくれるなら難易度は格段に下がる。
(手加減するなら、邪眼は使わなくてもいいな)
一日に一回しか使えず、回復するまでは表に出れないほど、体力も魔力も消耗してしまうので、できるだけ使わないようにしたかった。まだこれらよりも強い存在もいるかもしれないのに、切り札を使う訳にはいかなかった。
「光の精霊。いざとなればあいつらに電流浴びせられるか」
「デキル!」
「ボクモ!」
「アタシモ!」
精霊達の自信満々な声を聞いたリーズは、男達の方に近づく。
龍の身体能力は、並の男も凌駕しており、男達は何の反撃も出来ないまま、リーズの手刀を首に喰らう。
死角から狙われても、宙返りして後ろに回り込み、逆に返り討ちにした。
そして、ものの数分で、五人もいた男達、全員が、リーズの手刀により気絶した。
(さて、あいつの所に行くか)
リーズは、精霊達に案内してもらって、ルドニークの所に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーー
「お前、何やってんだ?」
「コトダマダ!ソレデウゴケナイ」
ルドニークの方に近づいて、体を触ったりしていると、近くにいる精霊がリーズに事情を説明した。
(そういえば、父上がちょくちょく使ってたような気もするな。なんか、記憶によれば、それがきっかけで母上に興味を持ったんだったか……?)
言霊は、魔力をこめて発する事で、相手を従わせる魔法だ。欠点として、相手よりも強い魔力がないと発動しないが、逆に言えば、自分の方が魔力が強かったら、何でも言う事を聞かせられる。
邪龍であるガーノルドは、魔力がかなり強かったので、大抵の相手は従わせる事ができた。
そして、そんなガーノルドが唯一従わせられなかった存在が、聖女であるマリア。
(こいつは魔憑き。そんじょそこらの人間よりも魔力は強いはずだ。そんな奴でも従わせられるなら、あの女の魔力は……)
ルドニークは魔憑きなので、魔力は一般人よりも強い。そして、言霊は自分よりも強い魔力を持つ者には通じない。それなのに、ルドニークが言霊にかかっているのなら、魔憑きのルドニークよりも強い魔力を持っている事になる。
「よくもやったわね……!」
リーズが手加減していたので、死んではいないと思っていたが、思ったよりもすぐに立ち上がった。
リーズは、女の方に注意を向ける。
「フードを被った少女……噂の精霊術士ね」
まったく同じ事を言っているなという目で見ながらも、警戒は怠っていない。
噂の精霊術士は、正確にはリーズではなくカオルなのだが、色が違うだけでほぼ瓜二つで、容姿は詳しく知られてはいないので、リーズが精霊術士だと思っている。
「だとしたらどうする?」
「連れ帰るわよ。あんたもターゲットだからね!」
『なんで私を狙うのかな……』
リーズの中から話を聞いていたカオルが不安そうに呟く。
『知らないが、精霊術士としているなら、精霊術士として欲している可能性が高いな』
『そっか……』
カオルは、納得したような、少し落ち込んだような感じでそう言った。
(とりあえず、何とかして片づけるか)
「“止まれ”」
リーズが動こうとすると、女が言霊をぶつけてくる。リーズの動きはその言葉通りに止まる。だが、すぐに動き出した。
そして、女の腕を掴んで投げ飛ばす。
「あんた、何で動けるのよ!」
「さぁな。私にも分からん」
一瞬動けなくなったので、確かに言霊は効いていた。でも、すぐに動けたのだ。リーズにもその理由は分からなかった。少し考えて、ある答えに行き着く。
(もしかして、魔力の強さが拮抗してるのか?)
言霊は効いたので、相手の方が魔力が強いのだろう。だが、すぐに動けたという事は、相手が自分よりも強すぎるという事もない。
それなら、なんとかなるかもしれない。でも、言霊の解き方が分からないには、無闇に倒す訳にもいかなかった。それに、やりすぎるとカオルが悲しむという点もある。
(記憶伝達で探ってみるか……?でも、頭が痛くなるんだよな、あれは……)
父親も使っていたので、記憶伝達で探れば分かるかもしれないが、頭痛という副作用のようなものがあった。
普通にカオルが表に出ている時は構わないが、今は自分が表に出ている。相手との実力にそこまで差がある訳ではないので、少しでも自分に不利な状況を作る訳にはいかない。
(まぁ、やるしかないか)
リーズは、記憶伝達で受け継がれた記憶を探りながら、女の相手をしている。女は、言霊で、自分の動きを操ってくるが、すぐに思い通りに動けるようになるので、そこまで問題ではなかった。
そして、探っているうちに、答えに辿り着く。
『マリアは強い聖属性を持っているから効かなかったのかもな』
『無意識のうちに浄化したのかもしれませんね。だからと言って、操っては欲しくなかったですけど』
『マリアが勝手に俺の縄張りに入ってくるからだな……』
ガーノルドとマリアの会話が脳内に響いた。
(聖属性で浄化すれば解除出来る……でも)
リーズが戸惑っているのは、自分ではなく、カオルにしか聖属性が使えないからだ。そして、聖属性を使うために入れ替わったら、この場にいる全員に自分達の事がバレてしまう。
(さて、どうするべきか……)
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