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第三章 学園の少女達
第82話 ただの杞憂なら
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もう言霊を無効化する方法が分かったので、もう手加減する必要はないと、リーズは女の首に手刀を入れて気絶させる。
そして、気絶した女の元に近づくと、腕輪のようなものがあった。
「何だこれ?」
それに、何らかの魔力がこもっているのはすぐに分かった。
「魔力強化と魔眼の付与がしてありますね」
リーズが声のする方を見ると、近くまでティレツィアが来ていた。
「分かるのか?」
「私は付与の加護がありますから。付与してあるものなら分かるんです。最初から宿っているものまでは分かりませんが」
ティレツィアの持っている付与の加護は、付与してあるものが鑑定できる能力もあった。
その素材に最初から宿っているものは見る事が出来ないが、後天的に宿ったものは分かる。
「じゃあ、このフードの効果も分かるか?」
「はい。封印と遮断がありますね」
(本当に分かるのか……)
リーズが表に出ている時の黒い布には、聖属性の封印と遮断が付与してあった。
そして、カオルが表に出ている時の白い布には、邪属性の封印と遮断が付与してあった。それを知っているのは、今ではリーズとカオルと精霊達のみだった。
それが分かるという事は、ティレツィアの言う事は本当だという事だ。
それなら、腕輪には、魔力強化と魔眼の付与がしてあるという事になる。
(魔憑きに勝ったのはそういう事か……)
本来なら、魔憑きはそうそう生まれるものでもないし、一般人が魔憑きの魔力に勝つ事はない。だが、この腕輪に付与してある魔力強化があれば、一般人でも魔憑きを上回ってもおかしくはない。
そして、精霊の魔力で姿を隠していたルドニークが見つかったのは、魔眼の力だ。
「消すか」
魔法がこもっているならと、結界を消したのと同じように、消滅魔法で消す事にした。消滅魔法は、手加減すれば魔力を消すだけですむ。
リーズは、左手に魔力を集めて、腕輪にぶつける。
「付与がなくなりましたね……」
「あぁ、消したからな。それよりも、まだいるのか?」
「親玉と思われるのはまだいると思いますが、見かけてはいませんね」
親玉がいるなら、そちらに向かうべきかと感じた。もしいないなら、言霊を無効化するために、人がいないところでカオルと入れ替わろうと思っていたが、いるならまだ自分が表にいた方がいいかもしれない。
「それじゃあ、そいつを探してくるか」
「いいんですか?」
あまりにも長く表に出ていたら、勘の良い人には気づかれる可能性がある。ティレツィアは不安そうにリーズにたずねた。
「まぁ、大丈夫だろ。目深に被ってれば」
あくびをしながら、リーズが返事する。
(眠い……)
今までこんなに長く表に出ていた事はなく、表に出ていない間の、9割は寝ていたので、一日の半分は寝ていないと調子が出ない。
先ほど男達を倒すために動いたのと、言霊にかかりながらも手加減しながら戦っていたので、そんなに疲れたと感じてはいないが、眠気が襲ってきている。
リーズは、目を擦りながらも、教室の外に出る。
(大丈夫かな……?)
そんなのんきな様子のリーズにはティレツィアは不安を抱えた。
ーーーーーーーーーーーーーー
(さて、どうするかな……)
ティレツィアの言った通り、まだいるようで、リーズは緩んでいた気を引き締める。
邪眼は、親玉にとっておきたいので、下っ端は、手刀で気絶させていく。
「あらあら……あなたは……」
聞き覚えのある声に、リーズは後ろを振り返る。
「……誰だっけ?お前」
「ここの学園長よ。覚えておきなさいな、リーズヴァルトさん」
(そういえば、学園長は知ってるんだったな……)
自分をリーズだと知っていた事に少し驚きながらも、クラウドが自分達の事を話していたのを思い出して、納得した。
自分は、カオルとは髪、瞳、フードの布の色が違うだけだ。それ以外は双子と言っても差し支えないほど瓜二つなので、リーズを知っている者は、見た事がなくても、彼女がリーズだと気づくだろう。
「それで、何をしに来たんだ?」
「親玉の居場所を教えておこうと思ってね」
「知ってるのか?」
リーズが少し興味を向けたようにたずねる。学園長は、小さくため息をつきながら答えた。
「学園長室よ。あの人、邪属性を持っていてね、なんとか精霊が守ってはくれたけど、逃げるので精一杯。学園長失格ね。生徒も守れないんだもの」
少し物悲しそうな目をしながら、リーズを見つめる。何を訴えているのか、リーズには嫌でも分かってしまった。
「それで、そいつの相手を私がしろって言うのか?自分は下っ端処理をして」
「そこまで分かっちゃうのね。邪属性は、それを上回る聖属性には効かないから、本当はカオルさんに頼みたいのだけど……」
「いや、確かに浄化できるのはカオルだけだが、負けたら危険なのもカオルだけだ」
聖属性と邪属性は表裏一体。邪属性を浄化できるのは、聖属性だけだが、邪属性の影響を一番受けやすいのも聖属性。
強い聖属性を持っているカオルがそれを喰らおうものなら、間違いなく暴走状態に近くなる。そうなれば、周りはもちろん、一番危険なのはカオルだった。
「私が片づけてくる。邪属性の私なら、そこまで影響は受けないからな」
邪属性の魔法は効果があるし、浄化も出来ない。だが、リーズが一番危険が少ない。
「それじゃあ、下っ端処理は任せるぞ」
「ええ、気をつけてね」
学園長は、ニッコリ微笑んで、リーズを見送る。
「…………」
リーズは、精霊に耳打ちした。
「学園長を守ってやってくれないか?」
「……?……ウン」
精霊は何でそんな事を言い出すのか分からないと言った顔で、了承した。
(ただの杞憂ならいいんだがな)
そう思いながら、リーズは学園長室に向かった。
そして、気絶した女の元に近づくと、腕輪のようなものがあった。
「何だこれ?」
それに、何らかの魔力がこもっているのはすぐに分かった。
「魔力強化と魔眼の付与がしてありますね」
リーズが声のする方を見ると、近くまでティレツィアが来ていた。
「分かるのか?」
「私は付与の加護がありますから。付与してあるものなら分かるんです。最初から宿っているものまでは分かりませんが」
ティレツィアの持っている付与の加護は、付与してあるものが鑑定できる能力もあった。
その素材に最初から宿っているものは見る事が出来ないが、後天的に宿ったものは分かる。
「じゃあ、このフードの効果も分かるか?」
「はい。封印と遮断がありますね」
(本当に分かるのか……)
リーズが表に出ている時の黒い布には、聖属性の封印と遮断が付与してあった。
そして、カオルが表に出ている時の白い布には、邪属性の封印と遮断が付与してあった。それを知っているのは、今ではリーズとカオルと精霊達のみだった。
それが分かるという事は、ティレツィアの言う事は本当だという事だ。
それなら、腕輪には、魔力強化と魔眼の付与がしてあるという事になる。
(魔憑きに勝ったのはそういう事か……)
本来なら、魔憑きはそうそう生まれるものでもないし、一般人が魔憑きの魔力に勝つ事はない。だが、この腕輪に付与してある魔力強化があれば、一般人でも魔憑きを上回ってもおかしくはない。
そして、精霊の魔力で姿を隠していたルドニークが見つかったのは、魔眼の力だ。
「消すか」
魔法がこもっているならと、結界を消したのと同じように、消滅魔法で消す事にした。消滅魔法は、手加減すれば魔力を消すだけですむ。
リーズは、左手に魔力を集めて、腕輪にぶつける。
「付与がなくなりましたね……」
「あぁ、消したからな。それよりも、まだいるのか?」
「親玉と思われるのはまだいると思いますが、見かけてはいませんね」
親玉がいるなら、そちらに向かうべきかと感じた。もしいないなら、言霊を無効化するために、人がいないところでカオルと入れ替わろうと思っていたが、いるならまだ自分が表にいた方がいいかもしれない。
「それじゃあ、そいつを探してくるか」
「いいんですか?」
あまりにも長く表に出ていたら、勘の良い人には気づかれる可能性がある。ティレツィアは不安そうにリーズにたずねた。
「まぁ、大丈夫だろ。目深に被ってれば」
あくびをしながら、リーズが返事する。
(眠い……)
今までこんなに長く表に出ていた事はなく、表に出ていない間の、9割は寝ていたので、一日の半分は寝ていないと調子が出ない。
先ほど男達を倒すために動いたのと、言霊にかかりながらも手加減しながら戦っていたので、そんなに疲れたと感じてはいないが、眠気が襲ってきている。
リーズは、目を擦りながらも、教室の外に出る。
(大丈夫かな……?)
そんなのんきな様子のリーズにはティレツィアは不安を抱えた。
ーーーーーーーーーーーーーー
(さて、どうするかな……)
ティレツィアの言った通り、まだいるようで、リーズは緩んでいた気を引き締める。
邪眼は、親玉にとっておきたいので、下っ端は、手刀で気絶させていく。
「あらあら……あなたは……」
聞き覚えのある声に、リーズは後ろを振り返る。
「……誰だっけ?お前」
「ここの学園長よ。覚えておきなさいな、リーズヴァルトさん」
(そういえば、学園長は知ってるんだったな……)
自分をリーズだと知っていた事に少し驚きながらも、クラウドが自分達の事を話していたのを思い出して、納得した。
自分は、カオルとは髪、瞳、フードの布の色が違うだけだ。それ以外は双子と言っても差し支えないほど瓜二つなので、リーズを知っている者は、見た事がなくても、彼女がリーズだと気づくだろう。
「それで、何をしに来たんだ?」
「親玉の居場所を教えておこうと思ってね」
「知ってるのか?」
リーズが少し興味を向けたようにたずねる。学園長は、小さくため息をつきながら答えた。
「学園長室よ。あの人、邪属性を持っていてね、なんとか精霊が守ってはくれたけど、逃げるので精一杯。学園長失格ね。生徒も守れないんだもの」
少し物悲しそうな目をしながら、リーズを見つめる。何を訴えているのか、リーズには嫌でも分かってしまった。
「それで、そいつの相手を私がしろって言うのか?自分は下っ端処理をして」
「そこまで分かっちゃうのね。邪属性は、それを上回る聖属性には効かないから、本当はカオルさんに頼みたいのだけど……」
「いや、確かに浄化できるのはカオルだけだが、負けたら危険なのもカオルだけだ」
聖属性と邪属性は表裏一体。邪属性を浄化できるのは、聖属性だけだが、邪属性の影響を一番受けやすいのも聖属性。
強い聖属性を持っているカオルがそれを喰らおうものなら、間違いなく暴走状態に近くなる。そうなれば、周りはもちろん、一番危険なのはカオルだった。
「私が片づけてくる。邪属性の私なら、そこまで影響は受けないからな」
邪属性の魔法は効果があるし、浄化も出来ない。だが、リーズが一番危険が少ない。
「それじゃあ、下っ端処理は任せるぞ」
「ええ、気をつけてね」
学園長は、ニッコリ微笑んで、リーズを見送る。
「…………」
リーズは、精霊に耳打ちした。
「学園長を守ってやってくれないか?」
「……?……ウン」
精霊は何でそんな事を言い出すのか分からないと言った顔で、了承した。
(ただの杞憂ならいいんだがな)
そう思いながら、リーズは学園長室に向かった。
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