聖女と邪龍の娘

りーさん

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第四章 隣国の少女達

第91話 戻った日常と変わった日常

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※最終章です!ちょっと長くなる可能性があります。でも、今年中には終わらせます!応援していてください。

 ↓本編

 リーズが別れてから、数日後。リーズは同じクラスに編入してきた。リーズヴァルトとして。
 ちなみに、リーズはあのあとボロボロになって帰ってきて、父様は母様にお説教されていた。オーヴェ様が「カオルちゃんが尻に敷かれるって言ってた理由が分かったよ」と、ボソッと言っていた。そして、なぜか父様と母様はクラウド様のお屋敷に住む事になったそうだ。
 そして、リーズに私と同じ家名がついていないのは、国王様は私達の事を知らないから、同じ名字にする訳にはいかないらしい。のちのち話すことになるかもしれないとのことだった。貴族って複雑なんだなぁと思った。リーズは、私と同じ精霊術士としてここに通うらしい。顔がまったく同じだから、ほとんどの人には血縁だと気づかれているだろうけど。

「リーズ。普通に通って良かったの?」

 私は、後ろに座ったリーズに耳打ちで聞いてみる。私と違って、リーズは角とか翼がはっきりとある。フードをしっかりと被っているから、隠しているんだろう。隠しているなら、バレるとまずいというのは私でも分かる事だ。
 それに、リーズは人間嫌いでもある。みんなと同じ格好をして、一緒に過ごすのは嫌なんじゃないだろうか。

「別に構わねぇよ。むしろ、お前が一人の方が心配だからな」

 リーズはそっぽを向きながら、ぶっきらぼうにそう言った。
 リーズは、やっぱり優しい。認めないだろうけど。

 そして、一つだけ悲しい事がある。それはーー

「というわけで、満点はリーズヴァルトさんだけですね」

 学園で勉強している期間は、私の方が長いはずなのに、筆記でも実技でもぜんぜん勝てない。テストとなれば、満点を出すのは当たり前。実技も、同じく精霊術が使えるリーズが圧倒的。
 加護の強さは同じのはずなんだけどなぁ……リーズの方が邪龍である父様の血が濃いのが原因だろうか。

「なんで分かるの?」

 私は、自分の点数と比べながらそう聞いた。すると、リーズはなんて事ないように言い放つ。

「いつも見てたし」

 つまりは、授業を私の中から見ていたから、何の問題もないということだろう。
 でも、見るだけなのと、実際に受けるのでは違うのではないだろうか。

「リーズさんは頭が良いのですわね」
「そんな事もーー」
「ありますわよ」

 ルーフェミア様の言葉をリーズが否定しようとすると、ピシャリとセレスティーナ様が止めてきた。

「それで大した事はないと片づけられては、わたくし達の尊厳に傷がつきますわ」
「そういうものか?」
「そういうものですわ」
「ふーん」

 納得したのか、適当にあしらったのか、リーズはそれだけ言って、自分に帰ってきた返答をただ見ていた。

ーーーーーーーーーーーーーー

 カオルとリーズが学園生活を終えて、ファルメール家の屋敷に戻っている。あの騒動のせいで、結界を強化することになり、それまでは寮が使えないためだ。王都に屋敷を持っている者は、屋敷から通うように言われている。
 ガーノルドを除いた全員が応接室に集まっているとき、マリアはふわぁとあくびしていた。本来なら、リヴィエルドのところに帰る予定だったのだが、マリアがまだ一緒にいたいとわがままを言ってしまったので、そのままここにいる。
 聖女であるマリアは、レティアでさえ、簡単には干渉できない存在。自分の力を分け与えている唯一の存在なので、聖女がいなくなってしまうと、世界の統制をとるのが困難となる。だからこそ、多少の要望は聞くようにしている。
 神でも行動を縛ることができない。そして、その気になれば世界を滅ぼすことも可能な力を持つ。そんな歩く時限爆弾のような存在が、今のマリアとガーノルドだった。

「な~んで私たちは学園に行っては行けないのでしょうね~」

 マリアがぶーぶーと文句を言っていると、クラウドが何度目かも分からない定型文を言う。

「カオルの両親は亡くなった事になっていますから。お二方の存在を公には出来ないでしょう?」

 この定型文は、もう5回は言ったような記憶がある。マリア聖女がまったく同じセリフを言うから。

「オーくんにも会いに行ってはいけないというじゃないですか!それに、それなら心配は無用です!神殿関係者でもなければ、私の顔も知りませんから!」
「逆に言えば、神殿関係者には顔が割れているという事っすよね?」

 マリアの文句に、今度はアウベルクが言い返した。その言葉に、マリアは笑顔で返す。

「大丈夫です。神殿関係者と言っても、上層部だけですから!リーンくんとか、シューくんとか、ランくんとか……」

 神殿の上層部で、リーン。シュー。ラン。こう言われてしまえば、それぞれ誰なのかはすぐにわかる。
 大司教であるリーンゴナー。枢機卿であるシュトルベン。教皇であるランクゥートだ。
 でも、それは公爵家の者達だけで、カオルとリーズは首をかしげている。

「……マリア様はどれだけ関わりがあるのですか」

 レナードが聞くと、マリアはなぜか得意気に説明する。

「そりゃあ、聖女でしたし。上層部とは嫌でも顔を合わせるんです。でも、ランくん以外は好きじゃありません!リーンくんもシューくんも、神殿が絶対って考えなんですもの。いつも私を持ち上げては自分の身勝手な要望を通そうとする。なんで、大司教と枢機卿になれたのかしら?」

 訳が分からないというような表情をしたマリアを、周りが冷めた視線で見る。それには、人間だけでなく、精霊も含まれている。
 マリアもその視線に気づいて動揺しだした。

「な、なんですかその目は!」
「いや、そんな性格で聖女になった人が目の前にいるから……」

 リーズがボソッと呟いたことに、人間達は苦笑いを浮かべ、精霊達はうんうんとうなずいていた。

「失礼な!私はちゃんと役目を果たしてましたよ!」
「たとえば?」
「魔憑きの浄化とか、蛇を駆除したりとか、結界を張ったりとか、聖域サンクチュアリで魔物退治とか……」
「蛇を駆除ってなんですか?」

 他の3つは、聖女がこなす役割として納得がいくものだが、蛇を駆除するのは、聖女がやらないといけないことなのかと思ってしまう。大事なのかもしれないけど、わざわざ聖女がやる必要はない気がする。
 カオルがそんな思いで聞くと、マリアはちょっと話しにくそうに言った。

「……混沌の蛇ですよ。私の命をちょくちょく狙ってきたので……」
「それなら、あの軍勢は……」
「吹き込まれたんでしょうね~。蛇は、国の中枢部にもいますから……」
「そうなんですか!?」
「そうでもないとあんな軍勢を引き連れてこれませんよ」

 もっともな事を言われて、カオルはそれ以上何も言えなかった。混沌の蛇の事は気になるが、今はこの日常を存分に味わっておこうと心に決めた。
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