100 / 107
第四章 隣国の少女達
第98話 マリアの企み 2
しおりを挟む
枢機卿は案内するように指示した応接室に向かう。
そこには、優雅に紅茶を飲んでいる女性がいた。
(この方は、何も変わっていないな)
そう思いながらも、その事をとやかくは言わずに、枢機卿は彼女の向かい側に座る。
「あなたがなぜ生きているのかは問いません。なぜここに来たのかお聞かせいただいても?」
「実はですね、真の厄災が完全復活を遂げようとしているのです」
「なんと……!まだ聖女の力も覚醒していないというのに……!」
マリアの発言を疑う事はなかった。
彼女の自分勝手な性格はあまり好まなかったが、聖女としての腕や実績は確か。
そんな彼女の言う事ならば、信憑性は充分にあるからだ。
「ある程度は私が止められるでしょう。ですが、それも時間稼ぎにしかならない。ですので、私が知る限りの戦力をぶつけようかと」
「知る限り……となると、まさか、邪龍を……」
枢機卿は、これ見よがしに嫌悪感を見せつける。
邪龍は、自分にとっては悪の象徴の僕なのだ。良い印象を持てという方が無理がある。
「ええ。ガーノルドも当然。私とガーノルドはちょっとやそっとでは死にませんからね」
「真の厄災に邪龍をぶつけると言うのですか!裏切られでもしたら……!」
「それはないと思いますよ。ガーノルドの主である東の邪神は真の厄災を嫌っているようですからね。それに……」
「それに……?」
枢機卿が聞き返すと、マリアはニッコリと不気味な笑みを浮かべる。
「ガーノルドは裏切らせませんから!」
「そ、そうですか……」
マリアの様子に、枢機卿はそう言う事しか出来なかった。
「では、そんな訳ですので、枢機卿様に一つ頼み事を」
「頼み事……?」
ーーーーーーーーーーーーーー
神殿から出てきたマリアは、一仕事を終えたとばかりにため息をつく。
「いや~、あの驚愕の表情は見物だったわね~。ガーノルドにも見せてあげたかったわ!」
わざと驚かせるために紹介状を持たずして会いに行った。これで少しは意趣返しが出来ただろう。
シュトルベンは、神殿が絶対という考え方があるため、マリアと考えは合わない。
だが、それは正反対の存在である邪神や邪龍を敵視しているという事だ。もちろん、その筆頭である真の厄災、ロードライトもだろう。
マリアはそれを利用した。今にも真の厄災が完全復活する。そう囁けば、枢機卿が動かないはずはない。
適当な事を囁いて誘導するのは、下の立場の者には少し申し訳ないなと思いながらも、あながち嘘でもないので構わないだろうとも思っていた。
神殿が動けばその神殿を重要視する神聖国であるラクエルシェンドも無視出来ない。
そうなれば、当然ながら学園も。
そして、その作戦は成功する事となる。
神殿が真の厄災が復活すると大々的に広めたお陰で、そんな状態で対抗戦を開催する訳にはいかないという事になり中止となった。
これで、真の厄災が復活するかもという事になれば、ここの住民は家で引きこもるだろう。巻き込まれる者も減るはずだ。
ここまでは予想通り。問題は、この不安感をロードライトやロードライト側の邪神に利用されないかという問題だった。
あれは人の負の感情を糧とする。不安感を煽れば煽るほど出てくる可能性は高いが、自分がいるところにのこのこ出てくるとは思わない。
「マリアサマ!」
不意に、近くにいる精霊が話しかけてくる。
マリアは、周囲を軽く見渡すが、特に見られているわけでもなさそうなので、精霊達と会話する。
「どうしたの?」
「コッチ!ガーノルドサマ!」
「アルダサマモ!」
ガーノルドとアルダが来ていると知り、マリアは精霊達についていく。
被っているフードはいつもよりも深く被っていた。
路地裏の方に行くと、そこに二つの人影がある。
二人とも少年のような姿をしている。
「アルダはともかく、ガーノルドまで子どもの姿をしているのは珍しいわね」
「ここは神聖国だからな。この姿の方が都合が良い」
「それで、ここに来た理由は?ガーノルドはともかく、アルダまで……と、なると……」
「ロードライトが本格的に動き出すようだ。狙いはお前の娘達だぞ」
予想はしていた事だったが、いざそれを聞くと、マリアの目が冷たくなる。
動き出す事は予想していた。カオルの浄化によってダメージを負っていたとはいえ、あれではあいつにとってはかすり傷。少し休めば回復しているに違いない。
でも、思ったよりも早かった。もう少し様子を見ると思ったのだが、そうではなかったらしい。
「娘達の所に向かうわ。早くーー」
娘達がいる宿に向かおうとした時、不意に上空から殺気を感じて、結界を張る。
結界に攻撃がぶつかり、バチバチと電流が走る。
その攻撃が晴れたときに、目の前に一人の少女が立っていた。
「あら、ここはあなたの管轄外では?」
マリアはその人物に余裕そうな笑みを浮かべる。
「それなら大丈夫。あの方直々のご許可よ」
少女はそう言いながら、一歩、また一歩と近づいてくる。その少女の雰囲気は、明らかに一般人のものではない。
「ロードライトは何をしようとしているのかしら?」
「私は知らないわ。それに、知っていたとしても、あなたに教える義理はないわね」
「それもそうね。そして、私に何の用かしら?」
「そうね。言うなら……」
そう言いながら、周囲に黒い霧を発生させる。
「あなたを行かせる訳にはいかないって所かしら?」
「あら、そう。なら、力ずくでも通るだけよ!」
そこには、優雅に紅茶を飲んでいる女性がいた。
(この方は、何も変わっていないな)
そう思いながらも、その事をとやかくは言わずに、枢機卿は彼女の向かい側に座る。
「あなたがなぜ生きているのかは問いません。なぜここに来たのかお聞かせいただいても?」
「実はですね、真の厄災が完全復活を遂げようとしているのです」
「なんと……!まだ聖女の力も覚醒していないというのに……!」
マリアの発言を疑う事はなかった。
彼女の自分勝手な性格はあまり好まなかったが、聖女としての腕や実績は確か。
そんな彼女の言う事ならば、信憑性は充分にあるからだ。
「ある程度は私が止められるでしょう。ですが、それも時間稼ぎにしかならない。ですので、私が知る限りの戦力をぶつけようかと」
「知る限り……となると、まさか、邪龍を……」
枢機卿は、これ見よがしに嫌悪感を見せつける。
邪龍は、自分にとっては悪の象徴の僕なのだ。良い印象を持てという方が無理がある。
「ええ。ガーノルドも当然。私とガーノルドはちょっとやそっとでは死にませんからね」
「真の厄災に邪龍をぶつけると言うのですか!裏切られでもしたら……!」
「それはないと思いますよ。ガーノルドの主である東の邪神は真の厄災を嫌っているようですからね。それに……」
「それに……?」
枢機卿が聞き返すと、マリアはニッコリと不気味な笑みを浮かべる。
「ガーノルドは裏切らせませんから!」
「そ、そうですか……」
マリアの様子に、枢機卿はそう言う事しか出来なかった。
「では、そんな訳ですので、枢機卿様に一つ頼み事を」
「頼み事……?」
ーーーーーーーーーーーーーー
神殿から出てきたマリアは、一仕事を終えたとばかりにため息をつく。
「いや~、あの驚愕の表情は見物だったわね~。ガーノルドにも見せてあげたかったわ!」
わざと驚かせるために紹介状を持たずして会いに行った。これで少しは意趣返しが出来ただろう。
シュトルベンは、神殿が絶対という考え方があるため、マリアと考えは合わない。
だが、それは正反対の存在である邪神や邪龍を敵視しているという事だ。もちろん、その筆頭である真の厄災、ロードライトもだろう。
マリアはそれを利用した。今にも真の厄災が完全復活する。そう囁けば、枢機卿が動かないはずはない。
適当な事を囁いて誘導するのは、下の立場の者には少し申し訳ないなと思いながらも、あながち嘘でもないので構わないだろうとも思っていた。
神殿が動けばその神殿を重要視する神聖国であるラクエルシェンドも無視出来ない。
そうなれば、当然ながら学園も。
そして、その作戦は成功する事となる。
神殿が真の厄災が復活すると大々的に広めたお陰で、そんな状態で対抗戦を開催する訳にはいかないという事になり中止となった。
これで、真の厄災が復活するかもという事になれば、ここの住民は家で引きこもるだろう。巻き込まれる者も減るはずだ。
ここまでは予想通り。問題は、この不安感をロードライトやロードライト側の邪神に利用されないかという問題だった。
あれは人の負の感情を糧とする。不安感を煽れば煽るほど出てくる可能性は高いが、自分がいるところにのこのこ出てくるとは思わない。
「マリアサマ!」
不意に、近くにいる精霊が話しかけてくる。
マリアは、周囲を軽く見渡すが、特に見られているわけでもなさそうなので、精霊達と会話する。
「どうしたの?」
「コッチ!ガーノルドサマ!」
「アルダサマモ!」
ガーノルドとアルダが来ていると知り、マリアは精霊達についていく。
被っているフードはいつもよりも深く被っていた。
路地裏の方に行くと、そこに二つの人影がある。
二人とも少年のような姿をしている。
「アルダはともかく、ガーノルドまで子どもの姿をしているのは珍しいわね」
「ここは神聖国だからな。この姿の方が都合が良い」
「それで、ここに来た理由は?ガーノルドはともかく、アルダまで……と、なると……」
「ロードライトが本格的に動き出すようだ。狙いはお前の娘達だぞ」
予想はしていた事だったが、いざそれを聞くと、マリアの目が冷たくなる。
動き出す事は予想していた。カオルの浄化によってダメージを負っていたとはいえ、あれではあいつにとってはかすり傷。少し休めば回復しているに違いない。
でも、思ったよりも早かった。もう少し様子を見ると思ったのだが、そうではなかったらしい。
「娘達の所に向かうわ。早くーー」
娘達がいる宿に向かおうとした時、不意に上空から殺気を感じて、結界を張る。
結界に攻撃がぶつかり、バチバチと電流が走る。
その攻撃が晴れたときに、目の前に一人の少女が立っていた。
「あら、ここはあなたの管轄外では?」
マリアはその人物に余裕そうな笑みを浮かべる。
「それなら大丈夫。あの方直々のご許可よ」
少女はそう言いながら、一歩、また一歩と近づいてくる。その少女の雰囲気は、明らかに一般人のものではない。
「ロードライトは何をしようとしているのかしら?」
「私は知らないわ。それに、知っていたとしても、あなたに教える義理はないわね」
「それもそうね。そして、私に何の用かしら?」
「そうね。言うなら……」
そう言いながら、周囲に黒い霧を発生させる。
「あなたを行かせる訳にはいかないって所かしら?」
「あら、そう。なら、力ずくでも通るだけよ!」
0
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、俺は必死についていった。
だけど、自分には何もできないと思っていた。
それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。
だけどある日、彼らは言った。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。
俺も分かっていた。
だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。
「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」
そう思っていた。そのはずだった。
――だけど。
ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、
“様々な縁”が重なり、騒がしくなった。
「最強を目指すべくして生まれた存在」
「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
#密売じゃありません!ミツバイギフトで最高に美味しい果物作ったら、領主令息が夫になった件について
国府知里
ファンタジー
「がんばっても報われなかったあなたに」“スローライフ成り上がりファンタジー”
人生に疲れ果てた北村めぐみは、目覚めると異世界の農村で少女グレイスとして転生していた。この世界では6歳で神から“ギフト”を授かるという。グレイスが得た謎の力「ミツバイ」は、果物を蜜のように甘くするという奇跡の力だった!村を、領地を、やがて王国までも変えていく果樹栽培の物語がいま始まる――。美味しさが未来を育てる、異世界農業×スローライフ・ファンタジー!
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。
さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。
聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。
だが、辺境の村で暮らす中で気づく。
私の力は奇跡を起こすものではなく、
壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。
一方、聖女として祭り上げられた彼女は、
人々の期待に応え続けるうち、
世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる