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第一章 あくまでも働きたくない
10. 商会設立
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一週間後、僕は父上と向き合っていた。父上が気を遣ってくれたため、この空間には僕と父上しかいない。
「さて、以前に言っていた対応策を聞こうか」
「はい。僕の名義で商会を作ろうかと」
本来なら役者などに任せたほうがいいんだろうけど、これが不正などを失くすためには一番確実だと思っている。
僕なら王子という立場があるから魔塔の人間にアイデアを売ることもできるし、王子に無礼を働く存在なんていないだろうから、不正に買い叩かれるということもない。
それに、この事業がうまくいけば国に貢献することに繋がるはずなので、王子の勤めを果たしていることにもなる。
全て丸く収まるだろう。
「商会のオーナーはどうする?」
「僕がやりますけど、表向きにする公表は大人としておきます」
不正などをされないためには僕が自分でやるほうがいい。
でも、子どもがトップになってもあまり信用されないだろうし、表向きは大人の男性にしておいたほうがいい。
「お前に商会が運営できるのか?」
「やれるだけやってみます」
成功できると断言するだけの根拠はない。むしろ不安要素が多く失敗する確率のほうが高い。
でも、他に僕が国として貢献できる方法が思いつかない。それに、商会というのはいい選択だと思っている。
「父上は以前、理想を追求することが王子としての貢献に繋がるのだと言っていましたよね?理想のためなら人は限界以上の力を発揮できると」
「そうだな」
「その理論が正しいのであれば、僕は商会を運営するために限界以上の力を発揮することができると思います。軌道に乗せることができれば部屋から出ることなく仕事ができると思われるので」
もちろん、実際に現場に出たりしないといけないこともあるだろうけど、政務の手伝いをしているクリストフ兄さんや騎士団長のジークフリート兄さんよりは部屋から出ずに済みそうだ。
僕に魔道具作りの才能があればクローディル兄さんみたいに開発だけして引きこもっていただろうけど、無い物ねだりをしてもしょうがない。
「……動機はどうかと思うが、本気であることは理解した」
僕の普段の様子の報告を受けている父上には、僕が部屋に引きこもることが好きなのがわかっているのだろう。
「ならば、一つだけ条件を出す」
「なんでしょう」
「一ヶ月に一度でかまわん。お前自身で私の元まで報告に来い。事前に連絡すれば時間は取る」
「かしこまりました」
チッ。自室で悠々自適というわけにはいかないか。しかも、父上の元にってことは、あの公爵と鉢合わせる可能性が高いじゃないか。
でも、一ヶ月に一度我慢すればいいから、まだましだと思っておこう。
「人員のほうに当てはあるのか」
「いえ、特に決まっておりませんが……魔塔の魔法使いには話を通してみようかと」
まだ僕の頭の中には生み出して欲しい魔道具がたくさんある。ティーポットに魔法使いたちが食いついていたのを見ると、僕の考え出す魔道具は魔塔の魔法使いたちにとって需要がありそうだ。
ただ、一つ問題があるとすれば。
「軍部の規約に違反するのなら別に探しますが」
そう。クローディル兄さんみたいなのがトップとはいえ、魔塔の魔法使いは魔法師団という軍隊に所属している。
そして、軍隊は機密情報の保護のために基本的に副業がNGだ。魔塔にできるのはあくまでも依頼のみである。
でも、王子としての依頼ならともかく、商会長としての取引となると引っかかる可能性があるんだよなぁ。
「いや、お前の商会の取引相手としてなら問題ない。だが、必ず私に報告するように」
「かしこまりました」
わりとすんなりと許可が降りたことにホッとする。
魔法使いはこれで大丈夫。後は……料理人も欲しいかも。今すぐというわけではないけど、再現したい前世のレシピもいくつかあるし、つては作っておきたい。
僕が食べたいだけだからレシピは普通に教えようかとも思ったけど、どうせなら利用しよう。
「父上。料理人も欲しいです。僕の専属の」
「それも商会に必要なのか?」
「はい。今すぐというわけではないので、候補だけでも決めていただけたらと思っています。その後は私が判断します」
これでも人を見る目はあるつもり。どうせなら内面で選びたい。料理の腕は二の次だ。料理は経験で変わるけど、性格は変わらない。うまく隠して、目を背けることはできても、失くすことは絶対にできない。
だからこそ、理性が失くなれば本性が露になるのだから。
「わかった。だが、お前一人を特別扱いはできん。他の王子や王女にも専属の料理人を与えることとする」
「かしこまりました」
別に他の王子や王女に専属料理人がついたところで僕に不都合は何もない。むしろ、クローディル兄さんは生活管理をするためにも料理人だけでなく使用人もつけたほうがいいだろう。
今はロロナが世話係みたいになってるからね。
「では、お話は以上ですので失礼させていただきたく」
「ああ。商会設立したらまた報告に来い」
僕は一礼をして部屋を出た。
その後、メアリーに事情を話し、僕を商会長、メアリーを幹部として商会を立ち上げた。
「さて、以前に言っていた対応策を聞こうか」
「はい。僕の名義で商会を作ろうかと」
本来なら役者などに任せたほうがいいんだろうけど、これが不正などを失くすためには一番確実だと思っている。
僕なら王子という立場があるから魔塔の人間にアイデアを売ることもできるし、王子に無礼を働く存在なんていないだろうから、不正に買い叩かれるということもない。
それに、この事業がうまくいけば国に貢献することに繋がるはずなので、王子の勤めを果たしていることにもなる。
全て丸く収まるだろう。
「商会のオーナーはどうする?」
「僕がやりますけど、表向きにする公表は大人としておきます」
不正などをされないためには僕が自分でやるほうがいい。
でも、子どもがトップになってもあまり信用されないだろうし、表向きは大人の男性にしておいたほうがいい。
「お前に商会が運営できるのか?」
「やれるだけやってみます」
成功できると断言するだけの根拠はない。むしろ不安要素が多く失敗する確率のほうが高い。
でも、他に僕が国として貢献できる方法が思いつかない。それに、商会というのはいい選択だと思っている。
「父上は以前、理想を追求することが王子としての貢献に繋がるのだと言っていましたよね?理想のためなら人は限界以上の力を発揮できると」
「そうだな」
「その理論が正しいのであれば、僕は商会を運営するために限界以上の力を発揮することができると思います。軌道に乗せることができれば部屋から出ることなく仕事ができると思われるので」
もちろん、実際に現場に出たりしないといけないこともあるだろうけど、政務の手伝いをしているクリストフ兄さんや騎士団長のジークフリート兄さんよりは部屋から出ずに済みそうだ。
僕に魔道具作りの才能があればクローディル兄さんみたいに開発だけして引きこもっていただろうけど、無い物ねだりをしてもしょうがない。
「……動機はどうかと思うが、本気であることは理解した」
僕の普段の様子の報告を受けている父上には、僕が部屋に引きこもることが好きなのがわかっているのだろう。
「ならば、一つだけ条件を出す」
「なんでしょう」
「一ヶ月に一度でかまわん。お前自身で私の元まで報告に来い。事前に連絡すれば時間は取る」
「かしこまりました」
チッ。自室で悠々自適というわけにはいかないか。しかも、父上の元にってことは、あの公爵と鉢合わせる可能性が高いじゃないか。
でも、一ヶ月に一度我慢すればいいから、まだましだと思っておこう。
「人員のほうに当てはあるのか」
「いえ、特に決まっておりませんが……魔塔の魔法使いには話を通してみようかと」
まだ僕の頭の中には生み出して欲しい魔道具がたくさんある。ティーポットに魔法使いたちが食いついていたのを見ると、僕の考え出す魔道具は魔塔の魔法使いたちにとって需要がありそうだ。
ただ、一つ問題があるとすれば。
「軍部の規約に違反するのなら別に探しますが」
そう。クローディル兄さんみたいなのがトップとはいえ、魔塔の魔法使いは魔法師団という軍隊に所属している。
そして、軍隊は機密情報の保護のために基本的に副業がNGだ。魔塔にできるのはあくまでも依頼のみである。
でも、王子としての依頼ならともかく、商会長としての取引となると引っかかる可能性があるんだよなぁ。
「いや、お前の商会の取引相手としてなら問題ない。だが、必ず私に報告するように」
「かしこまりました」
わりとすんなりと許可が降りたことにホッとする。
魔法使いはこれで大丈夫。後は……料理人も欲しいかも。今すぐというわけではないけど、再現したい前世のレシピもいくつかあるし、つては作っておきたい。
僕が食べたいだけだからレシピは普通に教えようかとも思ったけど、どうせなら利用しよう。
「父上。料理人も欲しいです。僕の専属の」
「それも商会に必要なのか?」
「はい。今すぐというわけではないので、候補だけでも決めていただけたらと思っています。その後は私が判断します」
これでも人を見る目はあるつもり。どうせなら内面で選びたい。料理の腕は二の次だ。料理は経験で変わるけど、性格は変わらない。うまく隠して、目を背けることはできても、失くすことは絶対にできない。
だからこそ、理性が失くなれば本性が露になるのだから。
「わかった。だが、お前一人を特別扱いはできん。他の王子や王女にも専属の料理人を与えることとする」
「かしこまりました」
別に他の王子や王女に専属料理人がついたところで僕に不都合は何もない。むしろ、クローディル兄さんは生活管理をするためにも料理人だけでなく使用人もつけたほうがいいだろう。
今はロロナが世話係みたいになってるからね。
「では、お話は以上ですので失礼させていただきたく」
「ああ。商会設立したらまた報告に来い」
僕は一礼をして部屋を出た。
その後、メアリーに事情を話し、僕を商会長、メアリーを幹部として商会を立ち上げた。
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