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第一章 辺境の街 カルファ
16. まさかの訪問客
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お出かけの翌日、僕たちは部屋でのんびりと惰眠を貪っていた。
昨日は、予定よりもだいぶ早い帰還に屋敷の人たちは驚いていたものの、普通に部屋の用意をしてもらえた。
「もふもふらっふぃ……らっふぃ……」
ルーナはすっかり眠りこけていて、時折そんなことを呟きながらすやすやと眠っている。
僕も、ルーナの隣でうとうととしていた。一応、詰所での反省を生かし、人が訪ねてきた場合に備えて、意識が飛びそうになったら、頬をつねって眠らないようにしていた。
でも、とろんとしてはいるので、どうしても反応が遅れてしまう。
(……うん?誰か来た?)
僕がコンコンとノックする音に気づいてから反応するのに、五秒くらいかかってしまった。
ルーナは気づいてもなさそうだけど。
「はぁーい……」
僕が目を擦りながらドアを開けると、そこにはウォルターさんが立っていた。
「どうしましたか?」
「お二人に客が来ています。お会いしてくれますか」
「客……ですか」
その言葉に、僕は疑いを向ける。ウォルターさんの言葉が嘘だと思ってるわけじゃない。訪問客の目的についてだ。
僕たちが街に来たのは、つい最近のことで、大して人と関わっていない。面識があるのは、訪ねてきたウォルターさんを除けば、レイクスさんと兵士長、僕たちを詰所に案内した兵士、後はトラブルを起こしていたあの二人の男女くらいである。
それなのに、僕たちがこの屋敷に滞在していると知った上で僕たちに会いに来たと言っている。警戒するなというほうが無理があるだろう。
人間なのか精霊なのか。それすらもわからない。でも、断ることも難しいだろう。
「ルーナ、起きてるでしょ。行くよ」
「ん。わかった」
ルーナはすっとベッドから起き上がって、僕のところに歩いてくる。
ウォルターさんは、起きているとは思わなかったのか驚愕したような表情を浮かべているけど、ルーナもいつも寝てるわけじゃない。
ルーナは眠っていても、周囲の会話はうっすらと聞こえているし、周囲の空気も感じ取れる。
不穏な会話が聞こえたり、空気が冷えきっていれば、いくら怠け者のルーナでも熟睡することはない。せいぜい、微睡む程度である。
睡眠というのは、ルーナに安心感を与える空間でしか行われないのだ。
だからといって、ルーナが睡眠好きであるのは変わらない。自分の安眠を妨害するものは、積極的に排除に動く。
今も、自分の安眠を妨げた訪問客に不満を募らせているのだろう。顔に出てるし。
「じゃあ、案内してくれますか」
「え、ええ。こちらです」
ウォルターさんの後についていき、僕たちはある部屋に通される。
中はそれなりに豪華な宝飾が施されているものの、置いてある家具はソファが二つとその間にテーブルがあるくらいなので、ここは応接室なのだろう。
ドアに近いソファには、兵士長がすでに腰かけていた。その側に控えるように、レイクスさんが立っている。向かい側にも誰か腰かけているようで、それが客かと視線をずらすと、僕ははっとなる。
あの人はーー
「あれ?あの時のおばさんじゃん」
ルーナが不思議そうに言う。
そう。そこにいたのは、昨日の串焼きを食べているときに話しかけてきた女性だった。
なんでここにというか、なんで僕たちがここにいるのを知ってるんだ!
「だから、おばさんじゃなくてお姉さまと呼びなさいって言ってるでしょう?」
「……は?」
ルーナが冷たいトーンで呟く。スイッチが入ったら冷たくなるけど、ここまでのは初めてだ。
疑問の言葉を投げかけているものの、ふざけたことを抜かすなという副音声が聞こえてくるのは、きっと気のせいではないだろう。
「なんで年下の人間をお姉さまなんて呼ばないといけないの」
「ちょ、ちょっとルーナ……!」
僕は、これ以上話させまいとルーナを制止する。これは、別に正義感からではない。
年下の人間
これは、かなりの危険ワードだ。僕たちは、普通の人間として見たら子どものような見た目なのだから、あの女性と比べて年上か年下かだと、大多数が年下と思うだろう。
それなのに、ルーナは人間のほうが年下だと断言している。
子どもが背伸びしていると可愛らしく思う人もいれば、うん?と疑いをかけてくる者もいるだろう。もし、この女性が後者のような考えの持ち主だったら非常にまずい。下手したら、僕たちの正体がバレる。
それを危惧しての制止だったけど、ルーナは僕の制止を振り払うように言った。
「大丈夫。どうせ知ってるだろうし」
…………へ?
僕は、しばらくルーナの言葉が理解できなかった。
ルーナがじっと女性のほうを見たので、僕も釣られるようにして見る。
すると、女性のほうは含みのある笑みを返してきたけど、しばらくしてあっははと大笑いしだした。
「いやぁ、話に聞いたときはそんな子いるのかと思ってたけど、マジだったみたいだね」
話に聞いた?それだとまるで、ルーナの話を誰かから聞いたように思えるけど、一体誰がーー
そこまで思ったところで、僕ははっとなる。
一人、いる。僕たちに会いに来るような人物で、あらかじめ僕たちのことを聞いていそうな存在が。
「ふーん……お兄ちゃんのほうも気づいた感じだね」
僕のほうが兄だというのも知ってるとなると、ほぼ確定っぽいな。
「それで、わたしたちに何の用?……ギルドマスターのおばさん」
昨日は、予定よりもだいぶ早い帰還に屋敷の人たちは驚いていたものの、普通に部屋の用意をしてもらえた。
「もふもふらっふぃ……らっふぃ……」
ルーナはすっかり眠りこけていて、時折そんなことを呟きながらすやすやと眠っている。
僕も、ルーナの隣でうとうととしていた。一応、詰所での反省を生かし、人が訪ねてきた場合に備えて、意識が飛びそうになったら、頬をつねって眠らないようにしていた。
でも、とろんとしてはいるので、どうしても反応が遅れてしまう。
(……うん?誰か来た?)
僕がコンコンとノックする音に気づいてから反応するのに、五秒くらいかかってしまった。
ルーナは気づいてもなさそうだけど。
「はぁーい……」
僕が目を擦りながらドアを開けると、そこにはウォルターさんが立っていた。
「どうしましたか?」
「お二人に客が来ています。お会いしてくれますか」
「客……ですか」
その言葉に、僕は疑いを向ける。ウォルターさんの言葉が嘘だと思ってるわけじゃない。訪問客の目的についてだ。
僕たちが街に来たのは、つい最近のことで、大して人と関わっていない。面識があるのは、訪ねてきたウォルターさんを除けば、レイクスさんと兵士長、僕たちを詰所に案内した兵士、後はトラブルを起こしていたあの二人の男女くらいである。
それなのに、僕たちがこの屋敷に滞在していると知った上で僕たちに会いに来たと言っている。警戒するなというほうが無理があるだろう。
人間なのか精霊なのか。それすらもわからない。でも、断ることも難しいだろう。
「ルーナ、起きてるでしょ。行くよ」
「ん。わかった」
ルーナはすっとベッドから起き上がって、僕のところに歩いてくる。
ウォルターさんは、起きているとは思わなかったのか驚愕したような表情を浮かべているけど、ルーナもいつも寝てるわけじゃない。
ルーナは眠っていても、周囲の会話はうっすらと聞こえているし、周囲の空気も感じ取れる。
不穏な会話が聞こえたり、空気が冷えきっていれば、いくら怠け者のルーナでも熟睡することはない。せいぜい、微睡む程度である。
睡眠というのは、ルーナに安心感を与える空間でしか行われないのだ。
だからといって、ルーナが睡眠好きであるのは変わらない。自分の安眠を妨害するものは、積極的に排除に動く。
今も、自分の安眠を妨げた訪問客に不満を募らせているのだろう。顔に出てるし。
「じゃあ、案内してくれますか」
「え、ええ。こちらです」
ウォルターさんの後についていき、僕たちはある部屋に通される。
中はそれなりに豪華な宝飾が施されているものの、置いてある家具はソファが二つとその間にテーブルがあるくらいなので、ここは応接室なのだろう。
ドアに近いソファには、兵士長がすでに腰かけていた。その側に控えるように、レイクスさんが立っている。向かい側にも誰か腰かけているようで、それが客かと視線をずらすと、僕ははっとなる。
あの人はーー
「あれ?あの時のおばさんじゃん」
ルーナが不思議そうに言う。
そう。そこにいたのは、昨日の串焼きを食べているときに話しかけてきた女性だった。
なんでここにというか、なんで僕たちがここにいるのを知ってるんだ!
「だから、おばさんじゃなくてお姉さまと呼びなさいって言ってるでしょう?」
「……は?」
ルーナが冷たいトーンで呟く。スイッチが入ったら冷たくなるけど、ここまでのは初めてだ。
疑問の言葉を投げかけているものの、ふざけたことを抜かすなという副音声が聞こえてくるのは、きっと気のせいではないだろう。
「なんで年下の人間をお姉さまなんて呼ばないといけないの」
「ちょ、ちょっとルーナ……!」
僕は、これ以上話させまいとルーナを制止する。これは、別に正義感からではない。
年下の人間
これは、かなりの危険ワードだ。僕たちは、普通の人間として見たら子どものような見た目なのだから、あの女性と比べて年上か年下かだと、大多数が年下と思うだろう。
それなのに、ルーナは人間のほうが年下だと断言している。
子どもが背伸びしていると可愛らしく思う人もいれば、うん?と疑いをかけてくる者もいるだろう。もし、この女性が後者のような考えの持ち主だったら非常にまずい。下手したら、僕たちの正体がバレる。
それを危惧しての制止だったけど、ルーナは僕の制止を振り払うように言った。
「大丈夫。どうせ知ってるだろうし」
…………へ?
僕は、しばらくルーナの言葉が理解できなかった。
ルーナがじっと女性のほうを見たので、僕も釣られるようにして見る。
すると、女性のほうは含みのある笑みを返してきたけど、しばらくしてあっははと大笑いしだした。
「いやぁ、話に聞いたときはそんな子いるのかと思ってたけど、マジだったみたいだね」
話に聞いた?それだとまるで、ルーナの話を誰かから聞いたように思えるけど、一体誰がーー
そこまで思ったところで、僕ははっとなる。
一人、いる。僕たちに会いに来るような人物で、あらかじめ僕たちのことを聞いていそうな存在が。
「ふーん……お兄ちゃんのほうも気づいた感じだね」
僕のほうが兄だというのも知ってるとなると、ほぼ確定っぽいな。
「それで、わたしたちに何の用?……ギルドマスターのおばさん」
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