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第一章 辺境の街 カルファ
17. ギルドマスター
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「もう~。おばさんじゃないって言ってるでしょう。せめて、名前で呼びなさいな」
ルーナのブリザードを纏った言葉にも顔色一つ変えることなく、軽く返してくる。
すごいな、この人。
「おばさんの名前知らないもん」
「私の名前はフェルニールって言うの。フィーって呼んでくれていいわよ」
ようやく名前が判明した。それにしても、ギルドマスターって指摘してきたことには何も言わないな。事実だから?
「……それで、用はなんなの?」
「まぁまぁ、そんな急かさずに。座ってお話ししましょう?」
フェルニールさんは、僕たちに向かいに座るように促してくる。
相手がギルドマスターということで、僕たちを訪ねてきた理由はわかったけど、どこか胡散臭く感じて、素直にはいわかりましたと座れない。
ルーナも同じなのか、普段なら真っ先に座ってだらけそうなものを、ずっと直立不動のままだ。
「やだよ。せっかく気持ちよく寝てたのに、なんで座って話さないといけないの?どうせならゴロゴロしたいよ」
違った。起こされたことのイライラとだらけたい気持ちが合わさっただけだった。
本当にぶれないな。
「別に私としては寝転がってくれても全然いいよ?」
「いや、やめておいたほうがいいと思う……」
あっけらかんと言う女性に、僕は自分でも少し驚くくらいのガチのトーンで返した。
でも、それくらいにその提案は危険だ。
寝たいのに寝られない状態のルーナほど危険なものはない。
ただでさえ今もイライラしているのに、だらける体勢にさせた上で話し合いという名の安眠妨害をやったら、冗談抜きで屋敷が破壊される可能性がある。
魔法の実力はルーナのほうが上なので、僕では守りきれない。
「……お兄ちゃん。心配しなくても大丈夫だよ」
「ルーナ……?」
僕の考えを読み取ったのか、ルーナが安心感を誘う声色で話しかけてくる。
でも、僕はなぜか寒気を強く感じた。
それは、気のせいではなかったらしく、満面の笑みを浮かべて言う。
「やるとしてもあのおばさんだけにしておくから」
「そういうことじゃないんだけど!?」
そもそもやらないでほしいという思いは伝わっていなかったらしい。
「あっ、殺さないでってこと?それなら大丈夫。ちゃんと手加減するよ。弱いやつを一回だけにしておくから!」
「そういうことでもなくて!」
ルーナの口から物騒な言葉が出たからか、周りの大人は顔をひきつらせていたけど、今はそれを気にする余裕はない。
まずは、すでにイライラの境地に達しかけているルーナをなんとか抑えないといけない。手加減するとは言ってるものの、本気になる可能性もある。
というか、そもそもルーナに手加減なんてできないだろう。下界に来て早々に、ウルフを跡形もなく消し飛ばしたし。
「というか、そんなに言うならお兄ちゃんが一人で相手すればいいよね。そういう約束だし」
「あれはルーナが勝手に言っただけでしょ!」
思わず否定してしまったけど、よくよく考えれば、確かに僕が一人で相手をするほうが遥かにマシのような気がしてきた。
少なくとも、フェルニールさんが命の危機に瀕することはない。
「兄貴だけに任せるな。フラッフィーのベッドが買いたいなら、お前も話は聞け」
兵士長が僕たちを宥めるように言う。屋敷の主(多分)とはいえ、一応はお客さん扱いなのに、気を遣わせて申し訳ないな。
「む……」
ルーナは不満そうな表情を浮かべているけど、言われていることは事実だからか、素直にレイクスさんの隣に腰かける。僕も、それに安心してルーナの隣に腰かける。
ようやく話し合いができるな。
「いやぁ~、君たち面白いね」
フェルニールさんはケラケラと楽しそうに笑う。僕は、反対に呆れ返った。
面白いって……さっきまでルーナはあなたを消すも同然の発言をしてたんだけども。
気づいていないのか、気づいていながら気にしてないのか。前者ならただのバカだけど、後者なら案外食えない人かも。
今までの感じからして、後者っぽいけど。
「んで、わざわざ伺いも立てずに訪ねてきた理由はなんだ。こいつらも暇なわけじゃねぇんだぞ」
「いやいや、のんびりと串焼き食べてる子たちが忙しいわけないでしょ」
「「忙しいよ」」
珍しく僕とルーナの言葉が揃う。それだけ意見が合わないってことなんだけど、今回ばかりは同意見だったらしい。
「わたしたちはね、ベッドでゴロゴロしたり、おいしいもの食べたり、お昼寝したりで忙しいの」
ルーナの言葉に、僕もうんうんと頷く。反対に、フェルニールさんはボソリと呟く。
「それはただだらけてるだけなんじゃ……」
「僕たちにとっては大事なんだけど?」
フェルニールさんの呟きに、僕は冷たく返す。
ルーナほどではないけど、僕も安眠妨害されて少しはイラついているので、これ以上神経を逆なでされたら、殺気を向けるくらいはしてしまうかもしれない……というか、多分向けちゃってると思う。
昨日は全然ゆっくりできなかったからね。仕方ないね。前世の記憶があるだけで、元は怠け者種族の精霊だし。
一応、僕は礼儀というものは兼ね備えているはずなんだけど、どうもこの人には礼を尽くすことができない。
「わかったわかった。手短に終わらせるよ」
どうどうと僕を静めながら、フェルニールさんはカバンから紙を取り出す。
その紙には、薬草の絵と文章が手書きで書いてあった。
「これは、依頼書ですか?」
冒険者ギルドに限らず、ギルドというのは、自分たちの管轄内の依頼を受け付ける。
たとえば、何か情報が欲しい場合は情報ギルド、物を売り買いしたければ商業ギルドと言った具合だ。
そして、薬草が欲しかったり、魔物を退治して欲しいといった依頼は、冒険者ギルドの管轄である。依頼を出したいときは、依頼内容をギルドの受付に告げる必要がある。よほどの内容でなければまず断られることはなく、もし管轄外の場合は、管轄内の他のギルドを紹介されるそうだ。
「そう。これは薬草の採取依頼で、常設しているものだから、今も受付中なんだ」
常設の依頼というものもあるのか。確かに、常に需要のある薬草とかは、なるべく多く抱えておきたいし、少なくなるたびにいちいち募集してはきりがないのかもしれない。薬草が集まる前に無くなる可能性もあるし。
そして、わざわざ常設の依頼を僕たちに見せてきたということは、フェルニールさんは多分……
「つまり、わたしたちに常設の依頼をやらせようって魂胆なわけだ」
僕の言葉を代弁するように、ルーナが言う。ルーナの言葉に、フェルニールさんはにんまりと笑みを浮かべた。
やっぱり、そういうことらしい。まぁ、下手な軋轢を生まないためには、これくらいがちょうどいいんだろうな。
「わたし、高額な依頼もしたいんだけど」
ルーナとしては、さっさとマイベッドが欲しいんだろうけど、フェルニールさんは難しそうな顔をする。
「ギルドの一員じゃない君たちにはこれくらいが精一杯でね。あんたたちをギルドの一員にできたらいいんだけど、そこのおっさん共が反対するんだよね~」
やれやれと言ったように、フェルニールさんは兵士長のほうを見る。
僕も、反射的に兵士長のほうを見ると、当然だとばかりにふんぞり返って言う。
「ギルドだってまともなやつばかりじゃねぇだろ。こいつらはガキで、容姿もまあまあだ。物珍しさから手を出すやつがいないとは限らねぇからな」
フェルニールさんは、ちらりと僕たちのほうを見て、嘲るように言う。
「心配なの?あんたから聞いた話が事実なら、心配いらなさそうだけど。遠慮なく反撃しそうだよ」
失礼な。そんな短気じゃないよ、僕もルーナも。
「いや、こいつらの場合、やりすぎる可能性があるからな」
僕らの心配じゃなかったんかい!嘘でも心配してよ、そこは。
まったく。ちゃんと訂正しないと。
「そんなことないですよ。やりすぎるのはルーナだけです」
「そこが問題だって言ってんだ」
一緒にされたら困ると伝えたけど、兵士長もわかっていたみたいだ。
それならよかった。
「ちょっと!わたしが危ないやつみたいに言わないでよ!わたしは普通だもん!」
「地面がえぐれるくらいの魔法を使って五匹のウルフを毛の一本も残さずに消し飛ばしたのに?」
僕が間髪を入れずにそう返すと、ルーナは静かに目をそらす。
周りは、ぎょっとしたような顔でルーナを見ていた。それは、驚愕というよりかは、ドン引きに近いように見える。
「お、お兄ちゃんがわたしに任せたから……」
「『わたし一人で充分』って言ってなかった?」
ルーナは、言葉に詰まったようで、黙り込む。
初めてルーナに口で勝ったな。内容が内容だから嬉しくはないけど。
「う~ん……確かに、それなら強い魔物とかのほうがいいのかもねぇ~」
いや、納得しないでくださいよ。それに、ルーナならドラゴンとか相手させないと。ちょっと強くした程度じゃ、ほぼ意味ないです。
「えっ!?いいの?」
ルーナは、パアッと顔を輝かせる。
嬉しそうにするな!ちょっとは遠慮しろ!
「一応は考慮してみるけど、すぐには無理だから、しばらくは薬草採取かな」
そう言って、フェルニールさんはカバンを探る。
あったあったと言いながら、何枚かの紙を並べた。
それは、すべて薬草の絵だった。いくつかは、精霊界でも見たことあるーーというか、これは……
僕は、一枚の紙を手に取った。
「お兄ちゃん、それがどうかしたの?」
ルーナが僕が手に取った紙を覗き込みながら尋ねてくる。
「あっ、これ見たことある」
でしょうね。僕たちの住んでいたお城の近くによく生えてるし。
う~ん……ルーナに言っても大丈夫かな。暴走する未来が見えるんだけど……
「これはね、氷霧草って言うんだけど……ウァノスに使われる薬草の一種なんだよ」
ルーナのブリザードを纏った言葉にも顔色一つ変えることなく、軽く返してくる。
すごいな、この人。
「おばさんの名前知らないもん」
「私の名前はフェルニールって言うの。フィーって呼んでくれていいわよ」
ようやく名前が判明した。それにしても、ギルドマスターって指摘してきたことには何も言わないな。事実だから?
「……それで、用はなんなの?」
「まぁまぁ、そんな急かさずに。座ってお話ししましょう?」
フェルニールさんは、僕たちに向かいに座るように促してくる。
相手がギルドマスターということで、僕たちを訪ねてきた理由はわかったけど、どこか胡散臭く感じて、素直にはいわかりましたと座れない。
ルーナも同じなのか、普段なら真っ先に座ってだらけそうなものを、ずっと直立不動のままだ。
「やだよ。せっかく気持ちよく寝てたのに、なんで座って話さないといけないの?どうせならゴロゴロしたいよ」
違った。起こされたことのイライラとだらけたい気持ちが合わさっただけだった。
本当にぶれないな。
「別に私としては寝転がってくれても全然いいよ?」
「いや、やめておいたほうがいいと思う……」
あっけらかんと言う女性に、僕は自分でも少し驚くくらいのガチのトーンで返した。
でも、それくらいにその提案は危険だ。
寝たいのに寝られない状態のルーナほど危険なものはない。
ただでさえ今もイライラしているのに、だらける体勢にさせた上で話し合いという名の安眠妨害をやったら、冗談抜きで屋敷が破壊される可能性がある。
魔法の実力はルーナのほうが上なので、僕では守りきれない。
「……お兄ちゃん。心配しなくても大丈夫だよ」
「ルーナ……?」
僕の考えを読み取ったのか、ルーナが安心感を誘う声色で話しかけてくる。
でも、僕はなぜか寒気を強く感じた。
それは、気のせいではなかったらしく、満面の笑みを浮かべて言う。
「やるとしてもあのおばさんだけにしておくから」
「そういうことじゃないんだけど!?」
そもそもやらないでほしいという思いは伝わっていなかったらしい。
「あっ、殺さないでってこと?それなら大丈夫。ちゃんと手加減するよ。弱いやつを一回だけにしておくから!」
「そういうことでもなくて!」
ルーナの口から物騒な言葉が出たからか、周りの大人は顔をひきつらせていたけど、今はそれを気にする余裕はない。
まずは、すでにイライラの境地に達しかけているルーナをなんとか抑えないといけない。手加減するとは言ってるものの、本気になる可能性もある。
というか、そもそもルーナに手加減なんてできないだろう。下界に来て早々に、ウルフを跡形もなく消し飛ばしたし。
「というか、そんなに言うならお兄ちゃんが一人で相手すればいいよね。そういう約束だし」
「あれはルーナが勝手に言っただけでしょ!」
思わず否定してしまったけど、よくよく考えれば、確かに僕が一人で相手をするほうが遥かにマシのような気がしてきた。
少なくとも、フェルニールさんが命の危機に瀕することはない。
「兄貴だけに任せるな。フラッフィーのベッドが買いたいなら、お前も話は聞け」
兵士長が僕たちを宥めるように言う。屋敷の主(多分)とはいえ、一応はお客さん扱いなのに、気を遣わせて申し訳ないな。
「む……」
ルーナは不満そうな表情を浮かべているけど、言われていることは事実だからか、素直にレイクスさんの隣に腰かける。僕も、それに安心してルーナの隣に腰かける。
ようやく話し合いができるな。
「いやぁ~、君たち面白いね」
フェルニールさんはケラケラと楽しそうに笑う。僕は、反対に呆れ返った。
面白いって……さっきまでルーナはあなたを消すも同然の発言をしてたんだけども。
気づいていないのか、気づいていながら気にしてないのか。前者ならただのバカだけど、後者なら案外食えない人かも。
今までの感じからして、後者っぽいけど。
「んで、わざわざ伺いも立てずに訪ねてきた理由はなんだ。こいつらも暇なわけじゃねぇんだぞ」
「いやいや、のんびりと串焼き食べてる子たちが忙しいわけないでしょ」
「「忙しいよ」」
珍しく僕とルーナの言葉が揃う。それだけ意見が合わないってことなんだけど、今回ばかりは同意見だったらしい。
「わたしたちはね、ベッドでゴロゴロしたり、おいしいもの食べたり、お昼寝したりで忙しいの」
ルーナの言葉に、僕もうんうんと頷く。反対に、フェルニールさんはボソリと呟く。
「それはただだらけてるだけなんじゃ……」
「僕たちにとっては大事なんだけど?」
フェルニールさんの呟きに、僕は冷たく返す。
ルーナほどではないけど、僕も安眠妨害されて少しはイラついているので、これ以上神経を逆なでされたら、殺気を向けるくらいはしてしまうかもしれない……というか、多分向けちゃってると思う。
昨日は全然ゆっくりできなかったからね。仕方ないね。前世の記憶があるだけで、元は怠け者種族の精霊だし。
一応、僕は礼儀というものは兼ね備えているはずなんだけど、どうもこの人には礼を尽くすことができない。
「わかったわかった。手短に終わらせるよ」
どうどうと僕を静めながら、フェルニールさんはカバンから紙を取り出す。
その紙には、薬草の絵と文章が手書きで書いてあった。
「これは、依頼書ですか?」
冒険者ギルドに限らず、ギルドというのは、自分たちの管轄内の依頼を受け付ける。
たとえば、何か情報が欲しい場合は情報ギルド、物を売り買いしたければ商業ギルドと言った具合だ。
そして、薬草が欲しかったり、魔物を退治して欲しいといった依頼は、冒険者ギルドの管轄である。依頼を出したいときは、依頼内容をギルドの受付に告げる必要がある。よほどの内容でなければまず断られることはなく、もし管轄外の場合は、管轄内の他のギルドを紹介されるそうだ。
「そう。これは薬草の採取依頼で、常設しているものだから、今も受付中なんだ」
常設の依頼というものもあるのか。確かに、常に需要のある薬草とかは、なるべく多く抱えておきたいし、少なくなるたびにいちいち募集してはきりがないのかもしれない。薬草が集まる前に無くなる可能性もあるし。
そして、わざわざ常設の依頼を僕たちに見せてきたということは、フェルニールさんは多分……
「つまり、わたしたちに常設の依頼をやらせようって魂胆なわけだ」
僕の言葉を代弁するように、ルーナが言う。ルーナの言葉に、フェルニールさんはにんまりと笑みを浮かべた。
やっぱり、そういうことらしい。まぁ、下手な軋轢を生まないためには、これくらいがちょうどいいんだろうな。
「わたし、高額な依頼もしたいんだけど」
ルーナとしては、さっさとマイベッドが欲しいんだろうけど、フェルニールさんは難しそうな顔をする。
「ギルドの一員じゃない君たちにはこれくらいが精一杯でね。あんたたちをギルドの一員にできたらいいんだけど、そこのおっさん共が反対するんだよね~」
やれやれと言ったように、フェルニールさんは兵士長のほうを見る。
僕も、反射的に兵士長のほうを見ると、当然だとばかりにふんぞり返って言う。
「ギルドだってまともなやつばかりじゃねぇだろ。こいつらはガキで、容姿もまあまあだ。物珍しさから手を出すやつがいないとは限らねぇからな」
フェルニールさんは、ちらりと僕たちのほうを見て、嘲るように言う。
「心配なの?あんたから聞いた話が事実なら、心配いらなさそうだけど。遠慮なく反撃しそうだよ」
失礼な。そんな短気じゃないよ、僕もルーナも。
「いや、こいつらの場合、やりすぎる可能性があるからな」
僕らの心配じゃなかったんかい!嘘でも心配してよ、そこは。
まったく。ちゃんと訂正しないと。
「そんなことないですよ。やりすぎるのはルーナだけです」
「そこが問題だって言ってんだ」
一緒にされたら困ると伝えたけど、兵士長もわかっていたみたいだ。
それならよかった。
「ちょっと!わたしが危ないやつみたいに言わないでよ!わたしは普通だもん!」
「地面がえぐれるくらいの魔法を使って五匹のウルフを毛の一本も残さずに消し飛ばしたのに?」
僕が間髪を入れずにそう返すと、ルーナは静かに目をそらす。
周りは、ぎょっとしたような顔でルーナを見ていた。それは、驚愕というよりかは、ドン引きに近いように見える。
「お、お兄ちゃんがわたしに任せたから……」
「『わたし一人で充分』って言ってなかった?」
ルーナは、言葉に詰まったようで、黙り込む。
初めてルーナに口で勝ったな。内容が内容だから嬉しくはないけど。
「う~ん……確かに、それなら強い魔物とかのほうがいいのかもねぇ~」
いや、納得しないでくださいよ。それに、ルーナならドラゴンとか相手させないと。ちょっと強くした程度じゃ、ほぼ意味ないです。
「えっ!?いいの?」
ルーナは、パアッと顔を輝かせる。
嬉しそうにするな!ちょっとは遠慮しろ!
「一応は考慮してみるけど、すぐには無理だから、しばらくは薬草採取かな」
そう言って、フェルニールさんはカバンを探る。
あったあったと言いながら、何枚かの紙を並べた。
それは、すべて薬草の絵だった。いくつかは、精霊界でも見たことあるーーというか、これは……
僕は、一枚の紙を手に取った。
「お兄ちゃん、それがどうかしたの?」
ルーナが僕が手に取った紙を覗き込みながら尋ねてくる。
「あっ、これ見たことある」
でしょうね。僕たちの住んでいたお城の近くによく生えてるし。
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