転生精霊の異世界マイペース道中~もっとマイペースな妹とともに~

りーさん

文字の大きさ
29 / 30
第一章 辺境の街 カルファ

30. コーゼル大森林 6

しおりを挟む
 防衛軍の皆さんが解体してくれたイノシシの魔物を切り分ける。
 解体のスピードが精霊メイドよりも早かったな。普段から魔物の討伐としかしているだけはあって、手慣れているみたいだ。
 血の匂いにつられて魔物が来たりしないかと思ったけど、さすがにこんなに大きな魔物を捕食するのはいないのか、何もやってこなかった。
 解体が終わると、まだ設営の途中だったらしく、夜営の準備に戻っていく。

 僕は、解体してくれた肉を次々と切り分けていく。普段ならもう少し大きくするんだけど、なるべく一度に焼き上げたいのと、食べやすさを考慮して、一口サイズにしておいた。
 まだポルやニージュが残っているし、これらも付け合わせとして使うのもいいかもしれない。

 でも、肉料理のレシピはあまりないんだよなぁ……。前世もそんなに頻繁に料理してたわけじゃないから、レシピはそんなに知らないし……

 仕方ない。王道に、ステーキで行くとしよう。ソースは難しいから、味つけは塩と胡椒のシンプルなものにして、後は付け合わせに小さめのポルシェットでも作るか。
 さすがに同じものだと隊員の人たちも飽きてしまうかもしれないから、薬草でも食べるか……と、思ったところでひらめいた。

 香草焼きにすればいい!

 先ほど取った薬草のなかに、香草としての役割を果たしてくれるものがある。売却する分を残しておけば問題ないだろう。

「え~っと……これとこれとこれと……」

 多く採取できたものから、香りづけに使える薬草を取り出す。
 取り出したのはローゼという名前の薬草。ローゼとは、地球でいうローズマリーである。
 薬草とかは地球と響きが似たものが多いから、わかりやすくていいな。

 これを選んだのは、ローゼは疲労に効くからだ。さすがに一日中歩いたり魔物退治していれば、疲れはたまっているだろうからね。
 まぁ、そのためか、ローゼは怠け者の精霊にはあまり薬効は好まれず、精霊界に有り余っていた薬草なんだけど……
 ここの森の環境があっているのか、ローゼはいたるところに生えていた。これは依頼の薬草ではないため、いくらでも使える。

 食材の用意ができたら、調理開始!

 まずは、お肉の臭み消しのために、塩水にさらすところから。
 まずは、持ってきてくれていた調理道具のなかで一番大きそうな鍋に、水魔法で水を用意して、そこに塩を入れる。時おり舐めて濃度を確認しつつ、そこにお肉を入れる。
 普通は鍋とかいらないんだけど、人数が人数だからね。

 本来なら、定期的に水を変えながら一晩とか置いておくんだけど、さすがにそこまでの時間はないため、一回だけ交換するに留めておく。
 それじゃあ、ほとんど意味ないかもしれないけど、やらないよりはましだと信じよう。

 お肉を浸けている間に、ポルシェットを作ろう。

「すみませーん!ポルシェットを作るんで、暇な人はポルをすり潰してくださーい!」
「おー、あれか!任せとけ!」

 設営が終わって休んでいたであろう人たちに声をかけると、元気な返事が返ってきて、みんながポルを潰してくれる。
 一つのボウルには入りきらないので、複数に分けてやっているみたいだ。
 ポルシェットを食べられるということで、だいぶ張り切っているように見える。そんなに美味しかったかな、あれ。
 本物のポルシェットの味を知っている僕としては、ちょっと物足りない感じなんだけど、喜んでくれてるならいっか。

 隊員の人たちがポルを潰してくれる間に、僕はニージュとロジェをみじん切りにしておく。今回は、薬草も混ぜてみるか。
 あのときはお試しということで余計な材料は混ぜなかったけど、一度作ってから味や食感もわかったし、混ぜてみてもいいかもしれない。

 せっかく用意したから、ローゼにしておこう。ローゼはあまり特徴的な味がなく、香りだけなので、どんな食材にもあう。
 細かく刻んでおけば、食感も気にならないだろう。

「おーい!潰したぞ~!」
「はーい!」

 ローゼを刻み終わるのとほぼ同時に、隊員たちから声がかかる。
 僕は、そちらのほうに歩いていき、すり潰されたポルが入ったボウルを受け取った。なぜかボウルは他にも三つくらいあったけど、同時に焼けないので一つずつだ。
 そんなにたくさん食べたいのかな?別にいいけど、食料足りるよね?
 ボウルのなかに、みじん切りにしたニージュ、ロジェ、ローゼを混ぜていく。ある程度混ざってきたところで、一度お肉の状態をチェックすると、水が赤く変色していた。

 そろそろ変えようと、僕は魔法で水を持ち上げる。
 元々は僕の水魔法で生み出した水なので、操るのは簡単だ。だけど……この水はどうしようか。捨てるしかないんだけど、血も混じってるだろうから、この辺に捨てるわけにもいかないというか、匂いがすごいから捨てたくない。

 ……仕方ない。遠くに放り投げよう。魔力探知の範囲を広げておき、生き物が少ない方角を探る。人間の魔力反応は、別ルートから入った冒険者だろう。そっちには絶対に投げちゃダメだな。

「そーれ!」

 僕は魔法で水を遠くに放出した。あまりにもおかしなことをしてしまったのか、レイクスさんたちはため息をついていたけど、気づかなかったことにして、僕は新たな塩水を鍋に入れた。

 さて、ポルシェット作りを再開しよう。僕は、油をしいたフライパンに、ポルシェットのタネを広げるように入れる。
 ジューといういい音が響く。何度聞いてもいいなぁ、この音。

 焼き目がつくくらいを目安に小さく小分けにしつつひっくり返す。
 そして、そこからさらに数分焼いたところで、第一弾は完成である。

「それじゃあ、お腹空いた人は食べててください」
「待ってました~!」

 いつの間にか起きていたルーナが真っ先に飛びつく。ほんと、いつから起きてたの?
 まぁ、ルーナはともかく、次のもどんどん焼いていかないと、消費に追いつかない。

 一つめのボウルに残っている分を焼く。料理は嫌いじゃないけど、こうやって流れ作業になるとめんどくさいんだよなぁ。
 一応、一枚目の様子を見てみたけど、お皿からはきれいさっぱりなくなっていた。早すぎるよ。

 とりあえず、空いたお皿を回収して、焼けた二枚目を乗せて提供する。

 次は、二つ目のボウルから三枚目を作るとしよう。その前に、お肉の様子をチェックしておく。先ほどよりも薄いけど、赤くなっていたので交換しておいた。
 臭み消しはこれくらいで充分だろう。ポルシェットの前に、お肉を焼いてしまうとしよう。

 お水を先ほどと同じように放り投げて捨てた後、空いていたボウルに移したお肉を軽く揉んだ。このサイズなら問題ないかもしれないけど、一応柔らかくしておかないとね。
 さすがに棒で叩くのは難しいので、手のひらを押しつけるようにして柔らかくしていく。

 五分くらい揉んでから、フライパンで焼き始める。ちょっときつきつだけど、1/6くらいは入ってくれた。単純計算で六回は作れるな。
 その間に、スパイス……というほどではないかもしれないけど、味つけの準備をする。とはいっても、細かく刻んだローゼを塩と胡椒と一緒に混ぜるだけなんだけど。
 お肉の色が茶色っぽく変わってきたタイミングで先ほど作ったものを投入する。

 お肉の様子を確認しながら、火魔法で火力を調整しつつ、どうにか焼き上がった。
 いつもならルーナに味見して貰うんだけど、今はポルシェットに夢中みたいだし、お肉の場合は生焼きの危険があるので、今回は僕が確かめてみる。
 まずは、ナイフでお肉を切って断面を確認する。茶色っぽく色がついているので、しっかりと熱は通っていたみたいだ。
 僕は、ぱくんと食べてみる。
 うん、充分に美味しい。ちゃんとローゼの香りもある。

「あっ、お兄ちゃんだけお肉食べてる!」

 ずるーいと言いながらルーナが駆け寄ってくる。

「わたしにも!」
「わかったよ、ほら」

 フォークに刺して口元に運んであげると、ルーナはぱくんと一口で食べた。
 ルーナはその瞬間、幸せそうな笑みを浮かべる。

「これも美味しい!お兄ちゃん、お肉も料理できたんだね!」
「まあね」

 今回に限っては前世の記憶に頼っていたところが大きいけど、ルーナが喜んでくれたならよかった。
 とりあえず、隊員の人たちにも進めてみたところ、男所帯というのもあるんだろうけど、ポルシェット以上に好評だった。

 こんなに喜んで貰えるなら、下界にいる間にお肉料理のレパートリーを増やしておこうかな?ハンバーグとかも作れたらいいなぁ……

「お兄ちゃん、おかわり!」
「……はいはい」

 ルーナの満面の笑みの要求で、僕は現実に引き戻され、料理を再開した。
 本当に、欲望に素直すぎる妹だ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

筑豊国伝奇~転生した和風世界で国造り~

九尾の猫
ファンタジー
亡くなった祖父の後を継いで、半農半猟の生活を送る主人公。 ある日の事故がきっかけで、違う世界に転生する。 そこは中世日本の面影が色濃い和風世界。 しかも精霊の力に満たされた異世界。 さて…主人公の人生はどうなることやら。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...