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3 福利厚生
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私は、提案を資料としてまとめて、それを持ってお母さまの元へと向かう。
前世の記憶を活用したお陰か、アイデアはすぐに出てきて、思ったよりも時間はかからなかった。
「お母さま!ちょっとお時間ください!」
「あら、何かしら?まだお昼の用意はできていないのだけど……」
まぁ、今は10時くらいだからそうでしょうね。
「おかあ……いえ、王妃殿下にご相談したことがございます」
「……聞きましょう。なんですか?」
私が王妃殿下と呼ぶと、お母さまも私を娘ではなく、一人の王女として扱ってくる。
お母さまは、一国の王妃。王国の母だ。その地頭の良さはかなりのものである。
私は、持ってきた資料をお母さまに見せた。
「城での業務は、それなりに重労働ですが、その見返りが少ないように感じます。城に優秀な人材を多く集めるためにも、福利厚生というものを制定したほうがよいのではないかと」
「…………」
お母さまは、静かに資料に目を通す。時々、考え込むような動作をしながらも、すべて読んでくれた。
そして、意見を述べる。
「発想は悪くありません。ですが、そのうちの一つ、有給休暇については、難しいと言わざるを得ません」
「な、なぜでしょうか?」
日本では、有給休暇は、義務化されるくらいに当然の制度だ。ここでは、日給制ではあるが、給料の計算の仕方はほとんど同じなので、できなくはない制度だと思ったんだけど……
「まず、働きによって、得られる日数が変わるとのことですが、誰が見るのですか?働く日数のことであるならば、皆が同じ時間で働いているのですから、日数が変わることはありません。働きぶりによって変わるというのであれば、監視をつけねば正確ではないでしょう」
うっ!そこをつかれると痛い。確かに、そうなんだよなぁ。
ここは、会社などとは違って、部署ごとに別れていたりするわけでもなく、とりあえず定期的に集まって仕事を割り振ってという感じなので、広報部の仕事をしていたのに、来月からは人事部!といった感じなので、働きをみるのは難しい。
そこは、引っかかってなかったわけではないけど……
「あくまでも、本格的に導入をしたらの話です。試験的な導入として、王妃殿下の侍女にのみ適用してみてはいかがでしょうか?」
その言い訳も、考えていなかったわけではない!私が、福利厚生とかいう話をしたのは、そもそもお母さまの地位を磐石なものとするためだ。決して、使用人たちにいい顔をしたいわけではない。
だからこそ、試験導入だ。もし、侍女たちにとって魅力的なことを、お母さま付きの侍女のみが受けていたらどうだろう?私も私もと集まってくる可能性がある。
たとえそれが下心があってのことだとしても、お母さまの味方が増えるのに繋がってくるだろう。
「……そうね。じゃあ、わたくしと、あなた付きの侍女の六人にやってみましょう。昼食の後、皆に休暇の希望を聞くわよ」
「……えっ?わ、私の侍女にもですか!?」
まさかの提案に、私は驚く。
私がぽかーんとしていると、お母さまはふふっと笑った。
「気づかないと思っていたの?最も優れた奉仕をした三名への甘味の提供やボーナスに、働きぶりによって変わる有給休暇。どれを取っても、わたくしのさじ加減で決まるものばかりだわ。どうせ、わたくしの立場を考えてのことなのでしょう」
まさか、そこも見抜かれていたとは!確かに、お母さまの好みで決めやすいような形にはしてしまったけど……
怒られるか?こんなの公平ではないと。
心臓がドキドキしている。
どうしようと内心、冷や汗を流していると、ふわりと私を抱き締めてくれた。
「ありがとう、リリー」
「お、怒ってないのですか?」
「わたくしを心配してのことでしょう?感謝はしても、怒ることはしないわ」
「そ、そうですか……」
私は、お母さまを抱き締めることができなかった。
私の体温が、どんどんとあがっているような気がする。
「それじゃあ、お昼を食べに食堂に行きましょう」
「はい、お母さま!」
私は、元気良く返事をした。
前世の記憶を活用したお陰か、アイデアはすぐに出てきて、思ったよりも時間はかからなかった。
「お母さま!ちょっとお時間ください!」
「あら、何かしら?まだお昼の用意はできていないのだけど……」
まぁ、今は10時くらいだからそうでしょうね。
「おかあ……いえ、王妃殿下にご相談したことがございます」
「……聞きましょう。なんですか?」
私が王妃殿下と呼ぶと、お母さまも私を娘ではなく、一人の王女として扱ってくる。
お母さまは、一国の王妃。王国の母だ。その地頭の良さはかなりのものである。
私は、持ってきた資料をお母さまに見せた。
「城での業務は、それなりに重労働ですが、その見返りが少ないように感じます。城に優秀な人材を多く集めるためにも、福利厚生というものを制定したほうがよいのではないかと」
「…………」
お母さまは、静かに資料に目を通す。時々、考え込むような動作をしながらも、すべて読んでくれた。
そして、意見を述べる。
「発想は悪くありません。ですが、そのうちの一つ、有給休暇については、難しいと言わざるを得ません」
「な、なぜでしょうか?」
日本では、有給休暇は、義務化されるくらいに当然の制度だ。ここでは、日給制ではあるが、給料の計算の仕方はほとんど同じなので、できなくはない制度だと思ったんだけど……
「まず、働きによって、得られる日数が変わるとのことですが、誰が見るのですか?働く日数のことであるならば、皆が同じ時間で働いているのですから、日数が変わることはありません。働きぶりによって変わるというのであれば、監視をつけねば正確ではないでしょう」
うっ!そこをつかれると痛い。確かに、そうなんだよなぁ。
ここは、会社などとは違って、部署ごとに別れていたりするわけでもなく、とりあえず定期的に集まって仕事を割り振ってという感じなので、広報部の仕事をしていたのに、来月からは人事部!といった感じなので、働きをみるのは難しい。
そこは、引っかかってなかったわけではないけど……
「あくまでも、本格的に導入をしたらの話です。試験的な導入として、王妃殿下の侍女にのみ適用してみてはいかがでしょうか?」
その言い訳も、考えていなかったわけではない!私が、福利厚生とかいう話をしたのは、そもそもお母さまの地位を磐石なものとするためだ。決して、使用人たちにいい顔をしたいわけではない。
だからこそ、試験導入だ。もし、侍女たちにとって魅力的なことを、お母さま付きの侍女のみが受けていたらどうだろう?私も私もと集まってくる可能性がある。
たとえそれが下心があってのことだとしても、お母さまの味方が増えるのに繋がってくるだろう。
「……そうね。じゃあ、わたくしと、あなた付きの侍女の六人にやってみましょう。昼食の後、皆に休暇の希望を聞くわよ」
「……えっ?わ、私の侍女にもですか!?」
まさかの提案に、私は驚く。
私がぽかーんとしていると、お母さまはふふっと笑った。
「気づかないと思っていたの?最も優れた奉仕をした三名への甘味の提供やボーナスに、働きぶりによって変わる有給休暇。どれを取っても、わたくしのさじ加減で決まるものばかりだわ。どうせ、わたくしの立場を考えてのことなのでしょう」
まさか、そこも見抜かれていたとは!確かに、お母さまの好みで決めやすいような形にはしてしまったけど……
怒られるか?こんなの公平ではないと。
心臓がドキドキしている。
どうしようと内心、冷や汗を流していると、ふわりと私を抱き締めてくれた。
「ありがとう、リリー」
「お、怒ってないのですか?」
「わたくしを心配してのことでしょう?感謝はしても、怒ることはしないわ」
「そ、そうですか……」
私は、お母さまを抱き締めることができなかった。
私の体温が、どんどんとあがっているような気がする。
「それじゃあ、お昼を食べに食堂に行きましょう」
「はい、お母さま!」
私は、元気良く返事をした。
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