悪妃の愛娘

りーさん

文字の大きさ
9 / 19

9 弟妹たちとお散歩

しおりを挟む
 しばらく待つと、侍女たちが来たので、私たちは庭を歩き回ることに。
 私は、転生してから、ずっとお母さまの元へ入り浸っていたので、実はじっくりと王宮を見たことはない。
 いろいろな建物や、庭師が丹精を込めて世話しているであろう植物たちが見れて、弟妹たちの恐怖心を和らげるための散歩だったけど、私も楽しんでいた。

「ねえちゃま、このおはな、なに?」

 マリエが一つの花を指差す。
 えっと……あれはーー

「アリノルスだよ。白いお花だから、ここにあるみたいだね」

 アリノルスは、日本でいうと、ハルジオンに近い植物だ。異世界になると、同じような植物でも、名前が変わってしまう。
 食べ物の名前も変わってたからなぁ……。順応するには苦労した。

「「なんで~?」」

 白い花の意味を知らないのだろう。二人は首をかしげる。

「それはね、白いお花が特別なものだからなの。大切なものなの」
「「あう~……?」」

 白百合や、家紋の関係性を話してもわからないだろうから、わかりやすい言葉に変えておいた。
 でも、二人はいまいちピンときていないようだ。まだ難しいかな?

「ねえちゃま、あれはあれは?」

 ラファエルが、今度は青い花を指す。
 まずい。あれはわからない。こうなるんだったら、花の勉強をしておくべきだったなぁ……
 私は、ちょいちょいと手招きで侍女たちを呼ぶ。侍女たちは、私たちのほうに近づいてきた。

「あの花、わかる?」

 私がこそこそと話すと、一人の侍女が声を小さくして答える。

「リュウカですよ」

 そう言われて、私は思い出した。
 リュウカは、ネモフィラに近い花。今の時期は、春のぽかぽかした気候なので、そういう植物が育つのだろう。

「ねえちゃま~……?」

 なかなか私が答えないからか、ラファエルが不安そうな顔をする。
 私としたことが!

「これはね、リュウカって言うんだって。姉さまも知らなかったよ」

 強がりを言うこともできたけど、この子達の前では嘘はつけない。

「りゅーか、きえい」
「そうだね」

 男の子だから、あまり興味はないかと思ったけど、お花が好きみたいだ。
 そう思っていたけど、次のマリエの言葉に、私は悶絶する。

「りゅーか、ねえちゃまのおめめとおなじ!きえい!」
「ねえちゃまとおなじ!」

 確かに、ネモフィラの淡い青色は、私の瞳とよく似ている。
 私は、お母さまの金髪と、あの国王の青い瞳を受け継いでいる。
 あの国王と同じ要素があることは、憎たらしかったけど……でも、二人が褒めてくれるなら、この瞳も好きになれるだろう。
 それよりも、二人が褒めてくれたことが一番の幸福だ!

「同じ色なのはあなたたちもよ。リュウカのようにきれいな瞳だわ」

 二人とも、(認めたくはないが)ちゃんと国王の血を引き継いでいるらしく、私と同じ淡い青色の瞳だった。
 ちがうところは、髪の色。私は金髪だけど、二人は白金だ。
 あの国王が白金だったはずだから、ラファエルとマリエの髪色は国王から、受け継いだものだろうな。

「ねえちゃまと、おなじ?」
「エルも、リエも、わからない」
「自分たちの姿がわからないの?」

 私が聞くと、二人はこくりと頷く。鏡とか見たことないのか。

「瞳は私と同じ青色で、髪は、白金」
「「はっきん……?」」

 あちゃ~。色もわからないかぁ。何もない状況で、色を教えるのは難しいからなぁ。

「私の髪は金って言うんだけど。これを少し薄くした感じね。私とは違うけどきれいだよ」
「「うしゅく……ちがう……」」

 二人は、ボソッと呟く。
 それじゃあ、理解したのかしてないのかわからないよ、お姉ちゃん。
 私が二人の様子を伺うと私はぎょっとする。
 二人が、涙を浮かべてうるうるしだしたからだ。
 
「ねえちゃまと、おなじじゃないの……?」
「ねえちゃまと、おなじがいい!」
「え、ええ~……」

 そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、生まれ持った髪色を変えるのは無理だ。この国の染髪技術も、あまり高くないし……

「わ、私はマリエとラファエルの髪色が好きだよ。だから、姉さまはこのままがいいなぁ~!」
「あう……」
「あい……」

 二人は、完全に納得したわけではなさそうだけど、とりあえずは頷いてくれた。
 会ってからまだ一日もたっていないのに、こんなに懐いてくるなんてなぁ……。味方がいなかったから、初めての味方に依存しているのだろうか。
 とりあえずは、二人のその思いを裏切らないためにも、お花の勉強をしないとな。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

修道院パラダイス

恋愛
伯爵令嬢リディアは、修道院に向かう馬車の中で思いっきり自分をののしった。 『私の馬鹿。昨日までの私って、なんて愚かだったの』 でも、いくら後悔しても無駄なのだ。馬車は監獄の異名を持つシリカ修道院に向かって走っている。そこは一度入ったら、王族でも一年間は出られない、厳しい修道院なのだ。いくら私の父が実力者でも、その決まりを変えることは出来ない。 ◇・◇・◇・・・・・・・・・・ 優秀だけど突っ走りやすいリディアの、失恋から始まる物語です。重い展開があっても、あまり暗くならないので、気楽に笑いながら読んでください。 なろうでも連載しています。

政略結婚した旦那様に「貴女を愛することはない」と言われたけど、猫がいるから全然平気

ハルイロ
恋愛
皇帝陛下の命令で、唐突に決まった私の結婚。しかし、それは、幸せとは程遠いものだった。 夫には顧みられず、使用人からも邪険に扱われた私は、与えられた粗末な家に引きこもって泣き暮らしていた。そんな時、出会ったのは、1匹の猫。その猫との出会いが私の運命を変えた。 猫達とより良い暮らしを送るために、夫なんて邪魔なだけ。それに気付いた私は、さっさと婚家を脱出。それから数年、私は、猫と好きなことをして幸せに過ごしていた。 それなのに、なぜか態度を急変させた夫が、私にグイグイ迫ってきた。 「イヤイヤ、私には猫がいればいいので、旦那様は今まで通り不要なんです!」 勘違いで妻を遠ざけていた夫と猫をこよなく愛する妻のちょっとずれた愛溢れるお話

婚約破棄でお願いします

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約者、カーリンは男爵令嬢に覚えのない悪行を並べ立てられた。 「君は、そんな人だったのか…」 王太子は男爵令嬢の言葉を鵜呑みにして… ※ギャグかもしれない

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...