悪妃の愛娘

りーさん

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9 弟妹たちとお散歩

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 しばらく待つと、侍女たちが来たので、私たちは庭を歩き回ることに。
 私は、転生してから、ずっとお母さまの元へ入り浸っていたので、実はじっくりと王宮を見たことはない。
 いろいろな建物や、庭師が丹精を込めて世話しているであろう植物たちが見れて、弟妹たちの恐怖心を和らげるための散歩だったけど、私も楽しんでいた。

「ねえちゃま、このおはな、なに?」

 マリエが一つの花を指差す。
 えっと……あれはーー

「アリノルスだよ。白いお花だから、ここにあるみたいだね」

 アリノルスは、日本でいうと、ハルジオンに近い植物だ。異世界になると、同じような植物でも、名前が変わってしまう。
 食べ物の名前も変わってたからなぁ……。順応するには苦労した。

「「なんで~?」」

 白い花の意味を知らないのだろう。二人は首をかしげる。

「それはね、白いお花が特別なものだからなの。大切なものなの」
「「あう~……?」」

 白百合や、家紋の関係性を話してもわからないだろうから、わかりやすい言葉に変えておいた。
 でも、二人はいまいちピンときていないようだ。まだ難しいかな?

「ねえちゃま、あれはあれは?」

 ラファエルが、今度は青い花を指す。
 まずい。あれはわからない。こうなるんだったら、花の勉強をしておくべきだったなぁ……
 私は、ちょいちょいと手招きで侍女たちを呼ぶ。侍女たちは、私たちのほうに近づいてきた。

「あの花、わかる?」

 私がこそこそと話すと、一人の侍女が声を小さくして答える。

「リュウカですよ」

 そう言われて、私は思い出した。
 リュウカは、ネモフィラに近い花。今の時期は、春のぽかぽかした気候なので、そういう植物が育つのだろう。

「ねえちゃま~……?」

 なかなか私が答えないからか、ラファエルが不安そうな顔をする。
 私としたことが!

「これはね、リュウカって言うんだって。姉さまも知らなかったよ」

 強がりを言うこともできたけど、この子達の前では嘘はつけない。

「りゅーか、きえい」
「そうだね」

 男の子だから、あまり興味はないかと思ったけど、お花が好きみたいだ。
 そう思っていたけど、次のマリエの言葉に、私は悶絶する。

「りゅーか、ねえちゃまのおめめとおなじ!きえい!」
「ねえちゃまとおなじ!」

 確かに、ネモフィラの淡い青色は、私の瞳とよく似ている。
 私は、お母さまの金髪と、あの国王の青い瞳を受け継いでいる。
 あの国王と同じ要素があることは、憎たらしかったけど……でも、二人が褒めてくれるなら、この瞳も好きになれるだろう。
 それよりも、二人が褒めてくれたことが一番の幸福だ!

「同じ色なのはあなたたちもよ。リュウカのようにきれいな瞳だわ」

 二人とも、(認めたくはないが)ちゃんと国王の血を引き継いでいるらしく、私と同じ淡い青色の瞳だった。
 ちがうところは、髪の色。私は金髪だけど、二人は白金だ。
 あの国王が白金だったはずだから、ラファエルとマリエの髪色は国王から、受け継いだものだろうな。

「ねえちゃまと、おなじ?」
「エルも、リエも、わからない」
「自分たちの姿がわからないの?」

 私が聞くと、二人はこくりと頷く。鏡とか見たことないのか。

「瞳は私と同じ青色で、髪は、白金」
「「はっきん……?」」

 あちゃ~。色もわからないかぁ。何もない状況で、色を教えるのは難しいからなぁ。

「私の髪は金って言うんだけど。これを少し薄くした感じね。私とは違うけどきれいだよ」
「「うしゅく……ちがう……」」

 二人は、ボソッと呟く。
 それじゃあ、理解したのかしてないのかわからないよ、お姉ちゃん。
 私が二人の様子を伺うと私はぎょっとする。
 二人が、涙を浮かべてうるうるしだしたからだ。
 
「ねえちゃまと、おなじじゃないの……?」
「ねえちゃまと、おなじがいい!」
「え、ええ~……」

 そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、生まれ持った髪色を変えるのは無理だ。この国の染髪技術も、あまり高くないし……

「わ、私はマリエとラファエルの髪色が好きだよ。だから、姉さまはこのままがいいなぁ~!」
「あう……」
「あい……」

 二人は、完全に納得したわけではなさそうだけど、とりあえずは頷いてくれた。
 会ってからまだ一日もたっていないのに、こんなに懐いてくるなんてなぁ……。味方がいなかったから、初めての味方に依存しているのだろうか。
 とりあえずは、二人のその思いを裏切らないためにも、お花の勉強をしないとな。
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