悪妃の愛娘

りーさん

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11 仲良し兄妹

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 私は、間に合わなかった。白星輝宮に戻ってきた私が真っ先に聞いたのはーー弟妹たちのギャン泣きだった。
 白星輝宮の入り口から、私の部屋まではそれなりに距離があるはずだけど、二人の泣き声がはっきりと聞こえてくる。

「ねえちゃま~!!」
「どこ~!」
「ねえちゃま~!!」

 そんな声が何度も聞こえてくる。私は、駆け足で部屋まで向かった。
 道中で、侍女たちが私に救いを求めるような目で見てきたけど、気にしている余裕はない。

「マリエ!ラファエル!」

 私が名前を呼びながらドアを開けると、私は二人と目があった。

「「ねえちゃま~!!」」

 二人は泣きながら駆け寄ってきて、私に抱きついた。

「ごめんね。お母さまとお話しすることがあったのよ」
「「むぅ~……」」

 二人は、唸りながら抗議してくる。しばらくは、一緒にいてあげないと。
 この調子だと、後見人のことは話せそうにないな。

 しばらくの間、二人の側にいたら、ようやく安心したのか、単純に泣き疲れたのか、すやすやと眠ってしまった。
 侍女たちには、マリーを除いて私たちだけにしてもらった。
 でも、あのギャン泣きで確信した。二人は、私にかなり依存している。いや、嫌というわけではないというか、むしろすごく嬉しいんだけど、なんか引っかかる。
 子どもが母親に依存してしまうのはわかる。ずっと一緒に育ってきて、自分が信頼することができるから。
 だけど、私は朱星輝宮に行ったあれが初対面だ。子どもだからなのかと思っていたけど、それでは片づけられないような気がしてならない。
 なんなんだろうな……この感じ。
 すやすやと気持ちよさそうに眠っている二人を見ていたら、私も眠くなってきてしまい、二人に挟まれるようにして眠りについた。

◇◇◇

 ソファですーすーと眠る三人を、静かに見守っているのは、リリー付きの侍女のマリー。
 ベッドで寝てほしいと思いながらも、その微笑ましい光景に笑みがこぼれる。
 その時、ドアがこんこんとノックされる。
 マリーが静かにドアを開けると、そこにいたのはルナだった。

「マリーさん。お二方、泣き止みましたか?」

 声が聞こえなくなった時点で想像できているだろうに、おそるおそる中を確認している。

「ええ。リリー王女殿下が慰めたらすんなり」
「さすがですね……。私たちが何を言っても泣き止まなかったのに……」

 心なしか、ルナが痩せ細っているように見える。リリーが王妃と話をしている時間は、そんなに長くはなかったのだが、かなり体力を消耗しているらしい。
 マリーは、その役目に自分が選ばれなかったことに少しほっとすると同時に、ルナたちに同情した。

「それにしても、マリエ王女殿下とラファエル王子殿下だけど、リリー王女殿下をかなり信用していますよね?以前もお会いになったことがあるのですか?」
「いいえ?あの庭園を歩き回ったあの日が初めてよ?」
「ええ!それじゃあ、そんなに時間が経ってないじゃないですか……。リリー王女殿下がすごいのか、マリエ王女殿下とラファエル王子殿下が人を信用しやすいのか、どちらなのでしょう……」
「少なくとも、後者は違うわよ。私は警戒されたもの」

 マリーは、二人に挨拶した時を思い出す。二人は、マリーに警戒心を向けながら、リリーの後ろに隠れていた。
 人を信用しやすいのなら、あんな風に警戒することはないだろう。
 リリーだけに懐いているのは、単純にリリーの人柄に惹かれてのことなのだ。子どもは、そういう人の心を、大人よりも敏感に感じ取る。

(リリー王女殿下がすごいお方なのは、間違ってないわね)

 マリーは、ふふっと微笑んだ。
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