悪妃の愛娘

りーさん

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18 私の癒し

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 私が部屋に戻ると、マリエとラファエルは絶対に離さないとばかりに私に抱きついている。
 泣いてはいなかったけど、多分、今日はもう離してくれないだろうなと、なんとなく感じ取った。

 寝るまでは、この癒しの時間を堪能しよう

 私は、しがみついている二人の頭を撫でながらそう感じた。

 晩餐を終えて、私が湯浴みをするために準備していると、二人が私の服を掴む。

「ねえちゃまと、いっしょがいい」
「エルも!ねえちゃまといっしょにゆあみしゅる」

 それはつまり、私と一緒にお風呂に入りたいということかな?
 それならむしろ大歓迎だ!私だって一緒に入りたい!

「いいわよ。それなら、マリーたちに言っておきましょうか」
「あい!リエ、いってくる!」
「エルも!」

 二人は、私が戻ってきてから初めて、私の側を離れる。
 と言っても、マリーも同じ部屋にいるので、大して離れてはいないけど。

「いいって!」
「いっしょ、はいる!」
「そうだね」

 私は、二人の頭を笑顔で撫でた。

◇◇◇

 そんなわけで、私は二人と一緒に湯浴みすることに。
 私の浴槽は、元々は一人用のため、決して広いとは言えないけど、まだ五歳の体なので、三歳の弟妹たちと一緒に入る余裕はある。

「あったかくてきもちー」
「ねえちゃま、きもちーね」
「そうね」

 私は、二人が溺れたりしないかハラハラしているから、あまり気持ちよくなれないんだけどね。
 一応は、大人が使うサイズよりは小さいけど、五歳の私に合わせているから、三歳の子達には大きいのは間違いない。
 まぁ、私の足の上にちょこんと座ってるから、あまり心配ないかもしれないけど。

 しばらくして、特に何の問題もなく、湯浴みを終えた。
 私は、侍女にタオルをもらって、二人の髪を拭く。
 二人の髪を傷つけないように、拭くというよりかは、タオルの布と布で挟んで、ぽんぽんと叩くような感じ。

「リエも、ねえちゃまのかみやる!」
「エルも!」

 私が髪を拭いていると、二人もやりたくなったみたいで、私の持つタオルを掴む。
 さすがに濡れたタオルを使わせるわけにはいかないので、私はメアリーに視線を向ける。
 メアリーは察してくれたらしく、急いでその手に持っていたタオルを二人に渡した。

「どうぞ。マリエ王女殿下、ラファエル王子殿下」
「めありー、ありがと!」
「ありがとー」

 私は、二人の言葉に驚いた。
 メアリーの名前、覚えてたんだ。
 メアリーも、驚くような表情を見せずに、にこりと笑うだけ。名前を呼ばれたのは、初めてではないらしい。
 そう言えば、私がマリーの名前を出したときも、誰か迷うことなく、私と湯浴みする報告をしに行っていた。
 なんか、二人の成長が見れて、嬉しく思ってしまう。姉心というよりは、親心みたいになってしまってる。

「ねえちゃま、うしろむいて!」
「かみ、ぽんぽんする!」

 張りきっている二人に背を向けると、二人は早速とばかりに私がやっていたように、タオルに私の髪を挟みぽんぽんとやっている。

(いたたたた……)

 まだまだ子どもなので、荒いところがあり、痛みがある。
 多分、ぽんぽんとやっているときに、髪を引っ張ってしまっているんだろう。
 でも、頑張っている二人に水を差すような真似はできない。こういうのを我慢するのも、年上の特権というものだ。
 二人が笑顔なら、私はそれで満足だから。

「二人とも、後ろだけじゃなくて、横もやってくれる?」

 私は、まだ濡れている髪を手で持ち上げた。

「「あい!」」

 二人は、左右に別れて、同じようにぽんぽんとする。
 右に左にと引っ張られて、さっきよりも痛い。
 だけど、この時間は間違いなく楽しい時間だった。

ーーーーーーーー

 要求があったので、短いながらも急ピッチで仕上げました。(荒いところもあったかもしれません……)
 今は、ファンタジーカップの二作品(『手加減を教えてください!』『異世界でもマイペースにいきます』)と、『私の家族はハイスペックです!』を中心に書いていますので、遅くなることもありますが、  要求をしてくだされば執筆しますので、遠慮せずに要求してください。
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