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第二章 赤い月と少年の秘密
25 連れ戻すために
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ルイスの言葉に、蒼風の刃たちはぽかんとしている。
ダンカ以外は、ルイスの母親を見かけた覚えがあったが、その時には、取り乱してはいたものの、子どもを心配する優しい母親というようにしか見えなかったからだ。
「え、えっと……熱血指導って、何するの?」
「僕は、魔法の制御がうまくできないので、時々母さんに教わってるんですけど、その教え方がーー」
「ああ、うん。それ以上は言わなくていいわ」
リリカは、ルイスの言葉を途中で遮った。
ダンカは、ルイスの母には会ったことはないが、ルイスの恐れを抱いているような顔と、その口から出る言葉で、だいたいどんな人物かわかったような感覚になる。
リリカたちは、あの取り乱していたレカーティアを知っているので、あの人ならあり得なくもないなと妙に納得してしまう。
ルイスが指導のことを思い浮かべて怯えている様子を見て、家に帰すのはと感じたリリカは、あることを提案する。
「それじゃあ、ルイスくん。私たちと合同依頼を受けない?」
「合同依頼……ですか?」
「そうよ。私たちと同じ依頼を受けるの。それなら、家に帰らなくてもいいんじゃない?」
「う~ん……。でも、迷惑をかけるかもしれませんよ?」
迷宮とは違い、ルイスが加減なしで魔物を退治してしまえば、討伐証明部位は残らない。
それでは、たとえ退治したとしても、退治したと扱われることはなく、依頼は失敗扱いになってしまいかねなかった。
「大丈夫よ。ついてくるだけでいいから。最近、魔物が増えてきているとかで、いい護衛が欲しいなぁと思っていたから、ちょうどいいわ」
「ご、護衛……ですか」
「ええ。もちろん、報酬はちゃんと分けるわ。悪い提案じゃないと思うわよ」
「う、う~ん……。それならいいですよ」
少し悩んだが、自分に不利なことはないと感じたルイスは、リリカたちと一緒に依頼を受けることになった。
◇◇◇
一方その頃、ダグラスはレカーティアの家にいた。
「なにぃ!?ルイスが出かけちまっただと!?」
「え、ええ……いけなかったかしら?普通に見送ってしまったのだけど……」
ダグラスの大声に、レカーティアはたじろぐ。
ダグラスは、額に汗を浮かべる。
「いいか?落ち着いて聞けよ?」
そう前置きをしてから、ダグラスは理由を説明する。
「最近、迷宮でレッドロックワームが出たって話は前にしただろ?」
「ええ。それがどうしたのよ?」
「その数日後に、街の近辺でレッドウルフがーー」
そこまでダグラスが言ったところで、レカーティアは勢いよく立ち上がり、テーブルに身を乗り出して、ダグラスの胸襟を掴む。
その掴み引っ張る力は、細腕の女性が出せる力とは思えないものだった。
「なんで早く言わないのよ!?」
「だ、だから落ち着けって!」
ダグラスの胸襟を掴みながら揺すってくるレカーティアに、ダグラスはそう言う。
だが、レカーティアはその程度では止まらなかった。
「落ち着いていられるわけないでしょ!?もしかしたら、今日が赤い月が出る日かもしれないというのに!今まで私たちにレッドウルフのことを言わないなんて、それ相応の理由があるんでしょうね!?」
「一応、理由はある。説明するから、せめて離してくれ」
レカーティアは、納得していないような顔をしたが、渋々ながら手を離した。
そして、再び椅子に座り直す。
「それで、理由はなんなのよ」
「まずは、赤い魔物についてのことは、証言しかなくて、物的証拠と言えるようなものがなかったんだ。だから、確定していた情報ではなかった」
「それでも、私たちに話を通すくらいはしてくれてもいいじゃない?」
「文句なら、全部言い終わってからにしてくれ」
また暴走しそうなレカーティアを、ダグラスは言葉で制す。
レカーティアは、それ以上文句を言うことはなかったため、ダグラスは言葉を続ける。
「お前たちに話さなかったのは、単純に機会がなかったからとも言える。お前の怠慢だと言われればそれまでかもしれんが、俺もいろいろと対応に追われていてな。ギルドの外に出るのすら難しかったんだ」
ダグラスの言ういろいろというのに心当たりがあったレカーティアは、ダグラスに尋ねる。
「領主の件なら、私も聞いているわ。私たちも顔を出したほうがよかったんじゃないの?」
「いや、やめておいたほうがいい。領主は、まだルイスのことには気づいていないが、知ったら間違いなく取り上げられるか討伐される。あいつの人となりは、俺がよく知っているからな」
「そう。ならダメね」
ルイスを取り上げられるのも討伐されるのもゴメンだったレカーティアは、真顔で即答した。
「とりあえず、そういうわけだから、ルイスを連れ戻しに行ってくれねぇか。俺は仕事の関係で、長時間も手は離せねぇからな」
「そうね。そういう理由なら、断る理由はないわ。ジュードへの伝言くらいは頼んでもいいかしら?」
「ああ、それくらいなら構わねぇ。それじゃあ、任せたぜ」
ダグラスは、そう言うと、すぐさま家を出ていく。
レカーティアは、外出の用意を整えるために、自分の部屋へと向かった。
ダンカ以外は、ルイスの母親を見かけた覚えがあったが、その時には、取り乱してはいたものの、子どもを心配する優しい母親というようにしか見えなかったからだ。
「え、えっと……熱血指導って、何するの?」
「僕は、魔法の制御がうまくできないので、時々母さんに教わってるんですけど、その教え方がーー」
「ああ、うん。それ以上は言わなくていいわ」
リリカは、ルイスの言葉を途中で遮った。
ダンカは、ルイスの母には会ったことはないが、ルイスの恐れを抱いているような顔と、その口から出る言葉で、だいたいどんな人物かわかったような感覚になる。
リリカたちは、あの取り乱していたレカーティアを知っているので、あの人ならあり得なくもないなと妙に納得してしまう。
ルイスが指導のことを思い浮かべて怯えている様子を見て、家に帰すのはと感じたリリカは、あることを提案する。
「それじゃあ、ルイスくん。私たちと合同依頼を受けない?」
「合同依頼……ですか?」
「そうよ。私たちと同じ依頼を受けるの。それなら、家に帰らなくてもいいんじゃない?」
「う~ん……。でも、迷惑をかけるかもしれませんよ?」
迷宮とは違い、ルイスが加減なしで魔物を退治してしまえば、討伐証明部位は残らない。
それでは、たとえ退治したとしても、退治したと扱われることはなく、依頼は失敗扱いになってしまいかねなかった。
「大丈夫よ。ついてくるだけでいいから。最近、魔物が増えてきているとかで、いい護衛が欲しいなぁと思っていたから、ちょうどいいわ」
「ご、護衛……ですか」
「ええ。もちろん、報酬はちゃんと分けるわ。悪い提案じゃないと思うわよ」
「う、う~ん……。それならいいですよ」
少し悩んだが、自分に不利なことはないと感じたルイスは、リリカたちと一緒に依頼を受けることになった。
◇◇◇
一方その頃、ダグラスはレカーティアの家にいた。
「なにぃ!?ルイスが出かけちまっただと!?」
「え、ええ……いけなかったかしら?普通に見送ってしまったのだけど……」
ダグラスの大声に、レカーティアはたじろぐ。
ダグラスは、額に汗を浮かべる。
「いいか?落ち着いて聞けよ?」
そう前置きをしてから、ダグラスは理由を説明する。
「最近、迷宮でレッドロックワームが出たって話は前にしただろ?」
「ええ。それがどうしたのよ?」
「その数日後に、街の近辺でレッドウルフがーー」
そこまでダグラスが言ったところで、レカーティアは勢いよく立ち上がり、テーブルに身を乗り出して、ダグラスの胸襟を掴む。
その掴み引っ張る力は、細腕の女性が出せる力とは思えないものだった。
「なんで早く言わないのよ!?」
「だ、だから落ち着けって!」
ダグラスの胸襟を掴みながら揺すってくるレカーティアに、ダグラスはそう言う。
だが、レカーティアはその程度では止まらなかった。
「落ち着いていられるわけないでしょ!?もしかしたら、今日が赤い月が出る日かもしれないというのに!今まで私たちにレッドウルフのことを言わないなんて、それ相応の理由があるんでしょうね!?」
「一応、理由はある。説明するから、せめて離してくれ」
レカーティアは、納得していないような顔をしたが、渋々ながら手を離した。
そして、再び椅子に座り直す。
「それで、理由はなんなのよ」
「まずは、赤い魔物についてのことは、証言しかなくて、物的証拠と言えるようなものがなかったんだ。だから、確定していた情報ではなかった」
「それでも、私たちに話を通すくらいはしてくれてもいいじゃない?」
「文句なら、全部言い終わってからにしてくれ」
また暴走しそうなレカーティアを、ダグラスは言葉で制す。
レカーティアは、それ以上文句を言うことはなかったため、ダグラスは言葉を続ける。
「お前たちに話さなかったのは、単純に機会がなかったからとも言える。お前の怠慢だと言われればそれまでかもしれんが、俺もいろいろと対応に追われていてな。ギルドの外に出るのすら難しかったんだ」
ダグラスの言ういろいろというのに心当たりがあったレカーティアは、ダグラスに尋ねる。
「領主の件なら、私も聞いているわ。私たちも顔を出したほうがよかったんじゃないの?」
「いや、やめておいたほうがいい。領主は、まだルイスのことには気づいていないが、知ったら間違いなく取り上げられるか討伐される。あいつの人となりは、俺がよく知っているからな」
「そう。ならダメね」
ルイスを取り上げられるのも討伐されるのもゴメンだったレカーティアは、真顔で即答した。
「とりあえず、そういうわけだから、ルイスを連れ戻しに行ってくれねぇか。俺は仕事の関係で、長時間も手は離せねぇからな」
「そうね。そういう理由なら、断る理由はないわ。ジュードへの伝言くらいは頼んでもいいかしら?」
「ああ、それくらいなら構わねぇ。それじゃあ、任せたぜ」
ダグラスは、そう言うと、すぐさま家を出ていく。
レカーティアは、外出の用意を整えるために、自分の部屋へと向かった。
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