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不細工犬ヒースとの出会い
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お風呂に入れてもらってもヒースの顔が変わるわけはなく、相変わらず不細工なその顔にアンナは思わず笑ってしまうのだった。
「ヒースは自分で自分の顔を見たことがある? 先程鏡に映したけど、自分だってわかった?」
アンナはそう言ってヒースを抱き上げ、大きな姿見の前に立った。
「ほら、ごらん。これが貴方よ? 貴方とこうしているとますます私の美しさが際立つわね」
ヒースはじいっと鏡を見つめ、目をしょぼしょぼさせた。
「私はこんな姿をしているのですね」
そう言ったきりしばらく言葉を発さないヒースに、アンナは「そんなにしょげないで」と声をかける。
「私が私以外で見ていて楽しいと感じたのは貴方が初めてよ?」
そう言ってまた笑う。アンナはヒースを自分のベッドの上に乗せると、今度は顔を近づけてまじまじとヒースを見た。
「なんとも不細工な顔ね。でも、ずっと見ていると、なんとなく愛嬌があるように見えるのが不思議だわ」
アンナは恐る恐るヒースを撫でてみた。ヒースは気持ち良さげだ。
「アンナ様。今お気付きになったように、世の中には完璧でなくても愛すべきものがたくさんあります」
ヒースはうっとりしながら、でも口調ははっきりと言った。アンナは可愛らしく首を傾げる。
「完璧でなくても愛すべきもの? ヒースは難しいことを言うのね」
「完璧なものは、例えばアンナ様です。アンナ様の美しさに敵うものはいないでしょう。だからアンナ様はご自分を愛していらっしゃる」
「そうよ。私以上に美しいものはないと思うわ。だから私は私を見るのが大好き。見ていて飽きることがないわ」
「そうでしょう。でも、本来愛するという感情は他者に抱いてこそ美しいものなのです」
「ヒース、貴方の言うことはよく分からないわ」
「難しすぎたかもしれませんね。でも、私はアンナ様に広い世界を見てもらいたいんです」
「広い世界? 世界はいつだって広いわ」
「でもアンナ様の世界はアンナ様だけ。それは幸せなことかもしれません。でも、私は不幸せだと思うのです」
アンナはあくびをかみ殺す。
「ヒース。貴方の言ってることはさっきから分からないことばかりよ。なんだか眠たくなってきたわ」
「もう少しでお昼ですが?」
「私はお腹すいていないわ。ヒースがお腹がすいているなら、何か用意させるわ。誰か! 」
アンナが手を叩くと、メイドの一人がやってきた。
「はい、姫様」
「ヒースに食事を。私は少し眠るわ」
食事の間では王と王妃が待っていた。
「アンナ様はお昼はいらないそうです」
ヒースが声をかけると、二人は顔を見合わせた。
「じゃあ、お前はなぜここに?」
「姫様がヒース殿に食事をと」
ヒースを連れてきたメイドが答える。
かくして、王と王妃はヒースと食事をすることになったのだが、ヒースは物怖じせず王と王妃と会話をした。初めは違和感を抱いていた王と王妃も、ヒースの様子に慣れて、食事が終わる頃にはすっかり打ち解けていた。
「ヒース、お前はなぜここにやってきたのだ?」
「私は色々な地を旅していたのですが、アンナ様の評判を聞き、やって参りました」
「アンナはこの通り、自分以外に興味を示さない。どうかお前がアンナの心を開けるなら開いてくれ。望みのものを与えるから」
「私は望みのものなどございませんが、尽力いたします」
「おお、頼んだよ」
「ヒースは自分で自分の顔を見たことがある? 先程鏡に映したけど、自分だってわかった?」
アンナはそう言ってヒースを抱き上げ、大きな姿見の前に立った。
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ヒースはうっとりしながら、でも口調ははっきりと言った。アンナは可愛らしく首を傾げる。
「完璧でなくても愛すべきもの? ヒースは難しいことを言うのね」
「完璧なものは、例えばアンナ様です。アンナ様の美しさに敵うものはいないでしょう。だからアンナ様はご自分を愛していらっしゃる」
「そうよ。私以上に美しいものはないと思うわ。だから私は私を見るのが大好き。見ていて飽きることがないわ」
「そうでしょう。でも、本来愛するという感情は他者に抱いてこそ美しいものなのです」
「ヒース、貴方の言うことはよく分からないわ」
「難しすぎたかもしれませんね。でも、私はアンナ様に広い世界を見てもらいたいんです」
「広い世界? 世界はいつだって広いわ」
「でもアンナ様の世界はアンナ様だけ。それは幸せなことかもしれません。でも、私は不幸せだと思うのです」
アンナはあくびをかみ殺す。
「ヒース。貴方の言ってることはさっきから分からないことばかりよ。なんだか眠たくなってきたわ」
「もう少しでお昼ですが?」
「私はお腹すいていないわ。ヒースがお腹がすいているなら、何か用意させるわ。誰か! 」
アンナが手を叩くと、メイドの一人がやってきた。
「はい、姫様」
「ヒースに食事を。私は少し眠るわ」
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「姫様がヒース殿に食事をと」
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