自分大好き姫と不細工な犬

花木 葵音

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ヒースとの日々は驚きに満ち

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「あら、あの人たちは何しているのかしら?」
 アンナが珍しく人に興味を持った。
「庭師ですね」
 バルザックが答える。
「アンナ様、この薔薇たちは放っておいても綺麗に咲くわけではないんですよ」
 ヒースが説明する。
「庭師がお世話をしてこのように綺麗な薔薇園になるのです。特に薔薇は虫がつきやすく、病気もしやすい。だから庭師たちは大変なんです」
 アンナは再び薔薇を見る。その姿はどこか感慨深げだった。
「バルザック」
 アンナが手招きをした。
「はっ」
 バルザックは何事かとそばに寄る。
「庭師たちに伝えて。ご苦労と。そして、薔薇がとても綺麗だと」
 アンナの言葉にバルザックは快諾した。バルザックが庭師の所に行くと、
「なんと……!」
 と大きな声が聞こえ、庭師たちが一斉にアンナの方にお辞儀をした。アンナはその様子に驚いた。
 ヒースはそんなアンナに思わず微笑む。
「あら、今、ヒース、笑ったの?」
「ええ。嬉しく思ったので」
「なぜ貴方が嬉しく思うの?」
「アンナ様が他の誰かのことを思ってした行動だからですよ。今回は庭師に対してですね」
「庭師に対してなのにヒースが嬉しいの?」
「ええ」
「……分からないけれど、ヒースが嬉しいのなら良かったわ」
 ヒースはその言葉に再び笑った。
「アンナ様。薔薇と同じことがアンナ様にも言えるんですよ?  アンナ様のその美しさは色々な人の手で作られているのです。アンナ様を着飾ってくれるメイド、食事を作ってくれるコック、警護をしてくれるバルザック、そして、何よりアンナ様を産んで愛しんでくださる王様と王妃様」
 アンナは少しの間考えているようだった。
「私は美しく産まれたから美しいのよ? でも、そうね。薔薇と一緒でお世話をしてくれる人がいるのは確かだわ」
 戻ってきたバルザックはヒースとアンナの話を黙って聞いていた。
「庭師にアンナ様はご苦労、と伝えましたね」
「ええ」
「アンナ様を健やかに保ってくださる方々にも感謝することを忘れないでください」
 アンナは目を瞬かせ黙った。
「そうね。感謝……。考えたこともなかったわ。でも、何となく分かった気がするわ。バルザック、警護をありがとう」
 アンナがバルザックに言うと、バルザックは深々とお辞儀をして、
「有難き幸せ」
 と涙ぐんだ。
「それからヒース。気付かせてくれてありがとう」
 アンナは手鏡を置くと、ヒースを軽く抱きしめた。
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