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ヒースの秘密と愛するということ
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「私は旅をしているときに、魔女の森と言われる森に入ったことがあります」
「魔女の森?」
「ええ。魔女が住むと噂のある森でした」
アンナは目を見開く。
「魔女のいる森」
好奇心に勝てずに、
「魔女は本当にいるの? 私、会ってみたいわ!」
とヒースの前脚に手をかけたアンナに、ヒースは目を潜ませた。
「アンナ様。魔女は本当にいるのです。そして、とても恐ろしく、強い力を持った者なのです」
「ヒースは魔女を見たの?」
アンナの問いに、ヒースは神妙に頷いた。
「私は森で魔女の可愛がっていた使い魔に襲われ、応戦する他なく、その使い魔を殺してしまいました」
「ヒースが……」
アンナには魔女の使い魔なるものがどんなものなのか想像もつかなかった。だが、殺したという言葉に背筋が寒くなった。
「私もまだ若く、自分の腕を試したいとどこか思っていたのかもしれません」
ヒースと共にいることで、命がどんなに大切なものかが分かってきたアンナにとって、ヒースがそんなことを思ったのは信じられないことだった。けれど、それを聞いてもヒースへの嫌悪感よりも、襲ってきた使い魔への恐怖の方が優った。
「そ、それで、その後、魔女はどうしたの?」
「私は魔女の逆鱗に触れ、呪いをかけられました。三年以内にアンナ様から口付けを受けなければ死ぬという呪いです」
「死ぬ?! 私からの口付け?!」
アンナはヒースの前脚をギュッと握った。
「そんな! 本当にヒースは死ぬの?!」
「きっとそうだと思います。その三年目が今年です。私は今年の冬までにアンナ様から口付けをもらえなければ死ぬでしょう。しかも条件があります。アンナ様が心から私を愛してくれていること。愛のないキスは無効なのです」
アンナは立ち上がり、プラチナブロンドの髪をふりふり、自室をうろうろと歩き回った。
「大変申し訳ございません。私がアンナ様のもとへ訪ねたのは、本当はそれが理由だったのです」
「それは当然よ。誰だって自分の命は惜しいわ! 今年の冬までにって、もう秋なのよ?! ヒースにキス……」
アンナは頭を抱え込んだ。
「申し訳ございません。……言うべきではなかったか……」
ヒースは顔を曇らせた。アンナは愛が何かもわかっていない。そんなアンナに愛のあるキスの話など、言っても悩ませるだけだったか、と。
「いいのよ、ヒース。ヒースに関わることだもの。知らなかったら後悔してしまうわ。でも、ヒース。私、愛ってどんなものかわからないわ」
ヒースは「そうでしょう」と言うように何度も頷いた。
「それに、なぜ私なのかしら」
「それはアンナ様がご自分以外を愛さない姫だと誰もが知っているからでしょう」
「私が私以外を愛さない?」
ヒースは言い過ぎたかと思い、
「えーと、アンナ様は美しいご自分が大好きでしょう? だから、魔女は、アンナ様が私みたいな不細工な犬に見向きもしないだろうと思ったのですよ、きっと」
といい直した。
「ヒース、言葉を変えたわね」
アンナはヒースを軽くにらんだ。
「いいのよ。私は確かに私以外に興味が無かったのだから」
「おや、では今は違うのですか?」
「今は私以外にも美しいものがある事を知っているし、私以外の人間にも多少は心を開いているつもりよ?」
「それは良かった」
ヒースは満足そうに頷いた。そんなヒースをアンナは再びにらむ。
「ちっとも良くないわ! それだけではヒースを救えないのでしょう?!」
ヒースは頭を下げてしょげる。
「愛するってどういうことなのかしら。私はヒースを愛せるかしら」
「まあ、犬ですし、不細工だから難しいですよね」
「不細工なのは気にしなくていいわ。もう慣れたから」
ヒースは複雑な気持ちでアンナを見上げる。そんなヒースをアンナは撫でた。
「私はヒースが大好きよ? それだけではダメなのかしら」
「さあ、私には何とも」
「魔女の森?」
「ええ。魔女が住むと噂のある森でした」
アンナは目を見開く。
「魔女のいる森」
好奇心に勝てずに、
「魔女は本当にいるの? 私、会ってみたいわ!」
とヒースの前脚に手をかけたアンナに、ヒースは目を潜ませた。
「アンナ様。魔女は本当にいるのです。そして、とても恐ろしく、強い力を持った者なのです」
「ヒースは魔女を見たの?」
アンナの問いに、ヒースは神妙に頷いた。
「私は森で魔女の可愛がっていた使い魔に襲われ、応戦する他なく、その使い魔を殺してしまいました」
「ヒースが……」
アンナには魔女の使い魔なるものがどんなものなのか想像もつかなかった。だが、殺したという言葉に背筋が寒くなった。
「私もまだ若く、自分の腕を試したいとどこか思っていたのかもしれません」
ヒースと共にいることで、命がどんなに大切なものかが分かってきたアンナにとって、ヒースがそんなことを思ったのは信じられないことだった。けれど、それを聞いてもヒースへの嫌悪感よりも、襲ってきた使い魔への恐怖の方が優った。
「そ、それで、その後、魔女はどうしたの?」
「私は魔女の逆鱗に触れ、呪いをかけられました。三年以内にアンナ様から口付けを受けなければ死ぬという呪いです」
「死ぬ?! 私からの口付け?!」
アンナはヒースの前脚をギュッと握った。
「そんな! 本当にヒースは死ぬの?!」
「きっとそうだと思います。その三年目が今年です。私は今年の冬までにアンナ様から口付けをもらえなければ死ぬでしょう。しかも条件があります。アンナ様が心から私を愛してくれていること。愛のないキスは無効なのです」
アンナは立ち上がり、プラチナブロンドの髪をふりふり、自室をうろうろと歩き回った。
「大変申し訳ございません。私がアンナ様のもとへ訪ねたのは、本当はそれが理由だったのです」
「それは当然よ。誰だって自分の命は惜しいわ! 今年の冬までにって、もう秋なのよ?! ヒースにキス……」
アンナは頭を抱え込んだ。
「申し訳ございません。……言うべきではなかったか……」
ヒースは顔を曇らせた。アンナは愛が何かもわかっていない。そんなアンナに愛のあるキスの話など、言っても悩ませるだけだったか、と。
「いいのよ、ヒース。ヒースに関わることだもの。知らなかったら後悔してしまうわ。でも、ヒース。私、愛ってどんなものかわからないわ」
ヒースは「そうでしょう」と言うように何度も頷いた。
「それに、なぜ私なのかしら」
「それはアンナ様がご自分以外を愛さない姫だと誰もが知っているからでしょう」
「私が私以外を愛さない?」
ヒースは言い過ぎたかと思い、
「えーと、アンナ様は美しいご自分が大好きでしょう? だから、魔女は、アンナ様が私みたいな不細工な犬に見向きもしないだろうと思ったのですよ、きっと」
といい直した。
「ヒース、言葉を変えたわね」
アンナはヒースを軽くにらんだ。
「いいのよ。私は確かに私以外に興味が無かったのだから」
「おや、では今は違うのですか?」
「今は私以外にも美しいものがある事を知っているし、私以外の人間にも多少は心を開いているつもりよ?」
「それは良かった」
ヒースは満足そうに頷いた。そんなヒースをアンナは再びにらむ。
「ちっとも良くないわ! それだけではヒースを救えないのでしょう?!」
ヒースは頭を下げてしょげる。
「愛するってどういうことなのかしら。私はヒースを愛せるかしら」
「まあ、犬ですし、不細工だから難しいですよね」
「不細工なのは気にしなくていいわ。もう慣れたから」
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「さあ、私には何とも」
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