自分大好き姫と不細工な犬

花木 葵音

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アンナとヒースの愛のかたち

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「色々変わる。変わるけれど、変わらないものが私欲しいわ。ヒース。貴方は私と過去を懐かしみ、今を共にして、これからずっと私と色んな経験をしていくことができるかしら?」
 真剣なアンナの問い。
 ヒースクリフは目を見張り、太陽のように微笑んだ。
「もちろんです」
 そんなヒースクリフにアンナは安堵した。それは犬のヒースに感じる安心感に少しだけ似ていた。
「バルザックが言っていたわ。ヒースクリフ殿でないと、私を任せられないって。私を変えたのは貴方だって」
「バルザック殿がそんなことを?」
 ヒースクリフは神妙な顔になった。いつも静かにアンナとヒースクリフに従っていたバルザック。そのバルザックのアンナへの気持ちをヒースクリフは理解していた。
「ええ。私には分からないけれど、ヒースは私を変えたんだわ。ううん。私というより、私の世界を変えてくれたのがヒースなのよ。今、私はヒースを失って悲しいの。その悲しさをちゃんと埋めてくれなきゃ嫌よ?」
「私の一生を賭けて最善を尽くします」
 ヒースクリフはそう頷くとアンナを抱きしめた。
「きゃ!」
 バルザックの気持ちの分もヒースクリフはアンナを大切にしなければと思った。
「アンナ様、愛してます。ヒースは何があっても貴女と共に」
 アンナは驚いたが、一筋の涙を零した。
「絶対よ? もうヒースを失うなんて絶対イヤ。犬のヒース以上に思い出を作らないとイヤ! 私から離れないでね! ずっと一緒に過ごしてね!」
 アンナはその後も涙を零し、犬のヒースを失った悲しみを忘れようとした。
 ヒースクリフはそんなアンナの背中を優しくなで、
「大丈夫です。私はヒースなのですから。貴女の愛したヒースなのですから。私はいつも貴女と共にいます」
 と何度も繰り返した。アンナはその度に、
「そうね。そうよね。私が愛したヒースはここにいるんだわ」
 と返し、ぎゅっとヒースに抱きついた。
「ヒース。私は貴方と一緒に生きていくわ」

 その様子を遠くから眺めていた王と王妃、そしてバルザックは涙を流して、ふたりが幸せになれるよう祈った。
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