6 / 17
雨よ、降れ!
しおりを挟む「振った? って紗季を?」
信じられない気持ちで恭史《やすし》に聞き返して、俺は足を止めた。
「ああ。まあ、仕方なくね? 紗季って一途過ぎて重いっていうか、怖いっていうか」
それが紗季の魅力だ。紗季は純粋で、真っ直ぐで。
「他に女できちゃったし」
悪びれもない恭史の言葉に、俺の心が悲鳴をあげた。首筋がぞわりとし、歯を強く噛み締める。
何で……!
いや、分かっていた。こいつが顔ばかりがよくて、軽いどうしようもない男だと。それでも高校からの付き合いで俺にとっては友人だった。何より、紗季がこいつを好きなのだから仕方ないと自分に言い聞かせた。
紗季……!
こんな日が来るなら、俺は大事な幼なじみをこいつに引き合わせるなんてしなかったのに。
「紗季はお前にはもったいない」
俺の低く暗い声が漏れた。
「え?」
……
振り返った恭史の腹に、俺は取り出したナイフを両手で差し込んでいた。
「なっ?」
なんだ。簡単なことだったんだ。
現実感のない頭で辺りを見回す。
誰かに見られては……いない。
人が、いない?
「うう……」
恭史の呻き声に、俺はナイフを引き抜いた。鮮血が溢れ出す。あっという間に地面に血溜まりができた。視界が赤に侵されていく。
逃げなければ。
ーー雨よ、降ってくれ!!
全ての証拠を消し去ってくれ!
この現実を洗い流してくれ!
俺は願いながら走った。
あれ、ナイフはどこに置いてきた?
……
「耕介? 何か言ったか?」
恭史が振り返って俺を見ていた。
俺ははっとした。
なんだ、白昼夢か。
「……いや、何も」
「耕介は紗季はどうなんだよ? 幼なじみを好きになるってよくあるじゃねえか。お前も真面目だし、ちょうどいいんじゃね?」
「は」
乾いた笑いが込み上げてきた。
きっと口が歪んでいるだろう。
本当、殺してやりたい。
俺はなんでこんな奴とダチやってるんだ。
いつか。いつかこいつが不幸になるのをそばで見てやる。
ーー雨よ降れ!
今は俺のこの殺意を鎮めてくれ。
了
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる