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20.格好よくて格好悪い男
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「ぅ、っあ、ぁ」
レイにじっと顔を見つめられているのは恥ずかしい。ただ、隠そうとしてもすぐに腕を外されて、レイのきれいな顔が間近に寄ってくるから、ますますいたたまれなくなるだけだ。
だったら大人しく初めから顔をさらしていたほうが、何かと諦めがつく気がしている。
「レ、イ……っ」
切羽つまって名前を呼ぶと、レイの手がすぐに中心に触れてくれる。
「あ、ッ、ぁ、ァあ……!」
中の弱いところをぐりぐり刺激されながら擦り上げられれば、耐える余地はない。喉をさらして果てベッドに沈むジーノに、触れるだけのキスがいくつも降ってくる。不愛想で甘やかなことなど全くしそうにない顔をして、案外レイは愛情表現が豊かだ。
指が抜かれる刺激だけでもひくつく体を、そっと抱きしめてくれるのが心地いい。
「……ジーノ、手を貸してくれ」
ジーノが散々気持ちよくされて、ベッドから起き上がる気力がなくなったころにようやく、レイがジーノの手も使って自分のモノを刺激する。
旅に出てからの触れ合いは、それがお決まりになっていた。
「……レイ」
大けがのせいでジーノの体力が落ちていて、なかなか回復しないのも理由なのだが、以前ジーノが、入れられるのは抵抗があると言ったことも影響しているはずだ。
「どうした」
動きを止めてジーノのことを優先してくれるレイに手を伸ばし、そっとうなじに腕を回す。
「……ジーノ?」
少し戸惑ったような顔をするレイに笑って、なんとか息を整える。バテていたらきっと、レイが首を縦に振らない。
「……今日、入れねぇ?」
レイが真顔になった。驚いたり、口にすべき言葉に詰まったりしたときの顔だ。暗がりでも月光のように輝いて見える銀髪を、ゆっくり手で撫でる。
「……あんたの体には負担が大きい」
「散々イかせといて?」
自覚はあるらしい。ぐっと引き結ばれた口元に触れて、むにむにと頬を引っ張ってやる。
「ジーノ……」
「お前が俺を大事にしてくれてんのはわかってる」
傷跡のことを差し引いても逆立ちしても、ジーノは見てくれがいいわけではないし、冴えないおっさんそのものだと思う。そのどこにレイが惚れ込んでくれたのかわからないが、一緒に旅をしたいと思ってくれて、旅の間も体を労ってくれている。それが嬉しくて、ジーノからも何か返したい、と思ってはいるのだ。
ただ、今まで誰かにそれほど心を砕いてもらったことなどなかったから、どうやって応えたらいいのかわからない。
「俺も、お前が大事だから……その、ちゃんと伝えてぇ、んだけど」
だからレイがジーノを求めているなら、言葉でも、体でも、レイが喜んでくれるものを返したい。
わかりやすかったのが体だったから持ち出してみたものの、レイの表情はどちらとも言えないままだ。
「……俺じゃ、だめか?」
やはりこんな大きな傷跡があって痩せぎすのおっさんの体では、興奮しないだろうか。
「……これだけガチガチにしていてそれはないと思うが」
レイのモノが、ゆっくり体に押し当てられる。問答するより先に手で抜いてやったほうがいいだろうか。そっと伸ばしかけたジーノの手を、レイの手が掴んで押し留める。
「レイ……?」
「……すまない、待ってくれ。あんたを襲いたくない」
苦しく感じるほどきつく抱きしめられて、ジーノは目を瞬いた。
襲いたくないとは何だ。
「……レイ?」
「……あんたは男と寝るのは初めてだろう。嫌な思いをさせたくない」
ごりごりのナニを抱えて言うことではない気がするが、レイが誠実に向き合おうとしているのはわかって、ジーノはもそもそと身じろぎをした。すぐにレイが手を緩めてくれるから、腕を回して、抱きしめる。
「初めてだから、お前がいい」
レイはジーノを想ってくれている。
初めこそ驚いたし持て余したものだが、今ではその想いを向けられているのが自分であることを、少しだけ誇らしい気持ちで抱きしめている。
「……お前も俺で、満たされてほしい」
腕の中のレイが一度身を震わせてから、固まった。困らせただろうか。せめてレイに応えたいと思っていることだけでも、伝わってほしい。
そのままよしよしと背中を撫でていると、レイがゆっくりと体を持ち上げた。
青い目が、まっすぐにジーノを見下ろしている。
「……優しく抱く自信がない」
「いいよ。死ぬ予感してねぇし」
レイのまとっていた空気が緩んで、口元が薄く弧を描く。
「あんたのそれは、あてにならない」
「死ななかっただろ?」
ため息を返事に変えて、レイがジーノの首筋に唇で触れてきた。くすぐったさに声を漏らすとレイの手が宥めるように肌を撫でてきて、ゆっくりとジーノの体をなぞっていく。自然と下りていった手に足を持ち上げられ、レイがジーノの体を折り曲げる。手の置きどころがわからない。シーツでも掴んでいたらいいだろうか。
「無理だと思ったら言ってくれ」
いざとなっても気遣ってくれるレイに苦笑して、ジーノはレイの体に自分の足を絡めた。腹は決まっているのだ。今さら途中で止められたくない。
「こういうときは腹ぁくくって、最後まで自分のもんにしろ」
レイがまた困ったように笑って、腰を進め始めた。
「っ、は」
なるべく大きく息を吐いて、レイがスムーズに入れられるようにしたいのに、どうしても体に力がこもる。何度も指を入れられて、広げられるのには慣れたと思っていたのだが、指と比べるとやはり大きい。ジーノの体を自分の形に作り替えようとするかのように、みちみちと押し進んでくる。
「ジーノ」
静かな声に労わりを感じて、閉じてしまった右目を開く。普段ほとんど表情を変えないくせに、睦言のときにはレイの顔がいろんなことを伝えてくる。
抑えてはいるが、本当はもっとがつがつ動きたいのだろうと思った。いつも落ちついているはずの青い目が獰猛で、ジーノを獲物のように映している。それが妙におかしくて、ジーノはふっと笑みをこぼした。
「いいよ」
途端にまたレイの体が動いて、ジーノの中を満たしていく。こんなにじれったい交わりなのに、レイが辛抱強く付き合ってくれるのが愛おしい。
「レ、イ」
「痛むか」
首を横に振って手を伸ばすと、不思議そうな顔をしつつもレイが体を近づけてくれる。中で当たる位置が変わって少しうめいて、ただどうしてもレイを抱きしめたくて、ぎゅっと腕を回して体を寄せる。
「……好きだよ、レイ。お前が好き」
レイの体が一瞬強張って、ぐっと体を離されてしまった。いや、改めてジーノを囲い込むように覆いかぶさってきた、が正しいかもしれない。レイの目があかあかと燃えている。
「今言うのか」
「いや、だって、普段は照れくせぇだろ……」
ジーノから顔を逸らして、しばらく視線をさまよわせたあとレイが大きくため息をつく。何かまずかったのかと思ったものの、前置きなくひときわ強く中に押し込まれて、ジーノは耐えきれず声を漏らした。わけがわからずレイを見ても、燃えた目のまま腰の動きを止めてくれない。
「……あんたが全部悪い」
「待っ、ぁ、おい、何で怒っ、ぅあっ」
ずるずるとゆっくり引き抜いていったかと思えばぐっと性急に突っ込まれて、先ほどまでの態度が嘘のように動きが荒い。やはりがつがつ動きたかったのかもしれないが、それにしてもこんな、急に、変わりすぎだろう。
「怒ってはいない。ムラムラはしている」
そんな言葉を使うような男だっただろうか。繋がっている場所からはいつのまにかぐちゅぐちゅと水音がしていて、ずいぶんと動きがなめらかだ。ごりごりと弱いところを押し潰されて、ひっきりなしに喘いでしまうのがいたたまれない。
「レっ、ィ……ッあ、はっ……レイぃ、っ」
揺さぶられてどうしたらいいかわからず、名前を呼ぶとレイが満足げに口角を上げる。その笑みにぞくぞくと頭がしびれて、強く突き上げられたときに目の前が白く光った気がした。遅れて腹の中に熱いものを感じて、レイが達したのを理解する。
レイが気持ちよくなれたならよかった。
「……ぁ……?」
自分自身はイっていないと思っていたが、ジーノの体は紛れもなく充足感に満たされていて、下腹部の張り詰めた緊張感はなくなっている。
イった、のだろうか。いつ。
「ジーノ?」
「れ、ぃ……?」
状況が理解できないままぼんやり返答すると、ジーノを満たしていたモノがずるりと抜かれて、また小さく喘ぐ羽目になった。レイにまた抱きしめられて、子どもをあやすように撫でられる。
「……おれ、イったのか?」
「感じなかったのか」
「よくわかんねぇ……なんかちかちかしたときかもしんねぇけど……」
よく見れば体は汚れているから、出るものが出たのは間違いないし、気持ちよかったのだろう。入れられる前には何度も達しているし、今さらイったイかないもどうこうもない気もしてきた。
「レイ、気持ちよかったか?」
さすがにくたびれて、されるがままレイに身をゆだねて尋ねると、無言で見つめられた。今度は何を考えているかわからない。
「……だめだったか?」
レイの手がジーノに触れて、軽く撫でられたあと体がさっぱりした。魔法できれいにしてくれたようだが、やはりジーノの体では物足りなかったのだろうか。
しかし、魅力的な男の体というのがどういうものかわからない。筋肉でもつければいいのか。
「……俺はあんたが好きなんだ」
「おう……?」
てきぱきと布団をきれいにしてジーノに服を着せ、布団を胸元までしっかり引き上げてくれる。レイも服を身につけていて、なんというか、立つものが遠慮なく立ったままのように見えるが、大丈夫だろうか。
「……あんたが俺を好きだと言葉を返してくれたことが嬉しいし、最後まで抱かせてくれたことが嬉しい。これ以上は歯止めが利かない。あんたの体を優先したい」
顔をしかめたレイが、外に行ってくる、と続けて、ジーノはしばらく目を瞬いたあと、小さく笑い声を上げた。
「それなら、お前が戻ってくるまで待ってるよ」
「……急いで戻る」
格好いい恋人が格好悪く外に出ていくのを見送って、ジーノは布団の中でもう一度笑いを漏らした。レイが戻ったら温まった布団で出迎えてやろうと、大きく手足を伸ばして動かしてみる。
レイが戻るまでの少しの間、ジーノはぬくぬくと余韻に浸っていた。
レイにじっと顔を見つめられているのは恥ずかしい。ただ、隠そうとしてもすぐに腕を外されて、レイのきれいな顔が間近に寄ってくるから、ますますいたたまれなくなるだけだ。
だったら大人しく初めから顔をさらしていたほうが、何かと諦めがつく気がしている。
「レ、イ……っ」
切羽つまって名前を呼ぶと、レイの手がすぐに中心に触れてくれる。
「あ、ッ、ぁ、ァあ……!」
中の弱いところをぐりぐり刺激されながら擦り上げられれば、耐える余地はない。喉をさらして果てベッドに沈むジーノに、触れるだけのキスがいくつも降ってくる。不愛想で甘やかなことなど全くしそうにない顔をして、案外レイは愛情表現が豊かだ。
指が抜かれる刺激だけでもひくつく体を、そっと抱きしめてくれるのが心地いい。
「……ジーノ、手を貸してくれ」
ジーノが散々気持ちよくされて、ベッドから起き上がる気力がなくなったころにようやく、レイがジーノの手も使って自分のモノを刺激する。
旅に出てからの触れ合いは、それがお決まりになっていた。
「……レイ」
大けがのせいでジーノの体力が落ちていて、なかなか回復しないのも理由なのだが、以前ジーノが、入れられるのは抵抗があると言ったことも影響しているはずだ。
「どうした」
動きを止めてジーノのことを優先してくれるレイに手を伸ばし、そっとうなじに腕を回す。
「……ジーノ?」
少し戸惑ったような顔をするレイに笑って、なんとか息を整える。バテていたらきっと、レイが首を縦に振らない。
「……今日、入れねぇ?」
レイが真顔になった。驚いたり、口にすべき言葉に詰まったりしたときの顔だ。暗がりでも月光のように輝いて見える銀髪を、ゆっくり手で撫でる。
「……あんたの体には負担が大きい」
「散々イかせといて?」
自覚はあるらしい。ぐっと引き結ばれた口元に触れて、むにむにと頬を引っ張ってやる。
「ジーノ……」
「お前が俺を大事にしてくれてんのはわかってる」
傷跡のことを差し引いても逆立ちしても、ジーノは見てくれがいいわけではないし、冴えないおっさんそのものだと思う。そのどこにレイが惚れ込んでくれたのかわからないが、一緒に旅をしたいと思ってくれて、旅の間も体を労ってくれている。それが嬉しくて、ジーノからも何か返したい、と思ってはいるのだ。
ただ、今まで誰かにそれほど心を砕いてもらったことなどなかったから、どうやって応えたらいいのかわからない。
「俺も、お前が大事だから……その、ちゃんと伝えてぇ、んだけど」
だからレイがジーノを求めているなら、言葉でも、体でも、レイが喜んでくれるものを返したい。
わかりやすかったのが体だったから持ち出してみたものの、レイの表情はどちらとも言えないままだ。
「……俺じゃ、だめか?」
やはりこんな大きな傷跡があって痩せぎすのおっさんの体では、興奮しないだろうか。
「……これだけガチガチにしていてそれはないと思うが」
レイのモノが、ゆっくり体に押し当てられる。問答するより先に手で抜いてやったほうがいいだろうか。そっと伸ばしかけたジーノの手を、レイの手が掴んで押し留める。
「レイ……?」
「……すまない、待ってくれ。あんたを襲いたくない」
苦しく感じるほどきつく抱きしめられて、ジーノは目を瞬いた。
襲いたくないとは何だ。
「……レイ?」
「……あんたは男と寝るのは初めてだろう。嫌な思いをさせたくない」
ごりごりのナニを抱えて言うことではない気がするが、レイが誠実に向き合おうとしているのはわかって、ジーノはもそもそと身じろぎをした。すぐにレイが手を緩めてくれるから、腕を回して、抱きしめる。
「初めてだから、お前がいい」
レイはジーノを想ってくれている。
初めこそ驚いたし持て余したものだが、今ではその想いを向けられているのが自分であることを、少しだけ誇らしい気持ちで抱きしめている。
「……お前も俺で、満たされてほしい」
腕の中のレイが一度身を震わせてから、固まった。困らせただろうか。せめてレイに応えたいと思っていることだけでも、伝わってほしい。
そのままよしよしと背中を撫でていると、レイがゆっくりと体を持ち上げた。
青い目が、まっすぐにジーノを見下ろしている。
「……優しく抱く自信がない」
「いいよ。死ぬ予感してねぇし」
レイのまとっていた空気が緩んで、口元が薄く弧を描く。
「あんたのそれは、あてにならない」
「死ななかっただろ?」
ため息を返事に変えて、レイがジーノの首筋に唇で触れてきた。くすぐったさに声を漏らすとレイの手が宥めるように肌を撫でてきて、ゆっくりとジーノの体をなぞっていく。自然と下りていった手に足を持ち上げられ、レイがジーノの体を折り曲げる。手の置きどころがわからない。シーツでも掴んでいたらいいだろうか。
「無理だと思ったら言ってくれ」
いざとなっても気遣ってくれるレイに苦笑して、ジーノはレイの体に自分の足を絡めた。腹は決まっているのだ。今さら途中で止められたくない。
「こういうときは腹ぁくくって、最後まで自分のもんにしろ」
レイがまた困ったように笑って、腰を進め始めた。
「っ、は」
なるべく大きく息を吐いて、レイがスムーズに入れられるようにしたいのに、どうしても体に力がこもる。何度も指を入れられて、広げられるのには慣れたと思っていたのだが、指と比べるとやはり大きい。ジーノの体を自分の形に作り替えようとするかのように、みちみちと押し進んでくる。
「ジーノ」
静かな声に労わりを感じて、閉じてしまった右目を開く。普段ほとんど表情を変えないくせに、睦言のときにはレイの顔がいろんなことを伝えてくる。
抑えてはいるが、本当はもっとがつがつ動きたいのだろうと思った。いつも落ちついているはずの青い目が獰猛で、ジーノを獲物のように映している。それが妙におかしくて、ジーノはふっと笑みをこぼした。
「いいよ」
途端にまたレイの体が動いて、ジーノの中を満たしていく。こんなにじれったい交わりなのに、レイが辛抱強く付き合ってくれるのが愛おしい。
「レ、イ」
「痛むか」
首を横に振って手を伸ばすと、不思議そうな顔をしつつもレイが体を近づけてくれる。中で当たる位置が変わって少しうめいて、ただどうしてもレイを抱きしめたくて、ぎゅっと腕を回して体を寄せる。
「……好きだよ、レイ。お前が好き」
レイの体が一瞬強張って、ぐっと体を離されてしまった。いや、改めてジーノを囲い込むように覆いかぶさってきた、が正しいかもしれない。レイの目があかあかと燃えている。
「今言うのか」
「いや、だって、普段は照れくせぇだろ……」
ジーノから顔を逸らして、しばらく視線をさまよわせたあとレイが大きくため息をつく。何かまずかったのかと思ったものの、前置きなくひときわ強く中に押し込まれて、ジーノは耐えきれず声を漏らした。わけがわからずレイを見ても、燃えた目のまま腰の動きを止めてくれない。
「……あんたが全部悪い」
「待っ、ぁ、おい、何で怒っ、ぅあっ」
ずるずるとゆっくり引き抜いていったかと思えばぐっと性急に突っ込まれて、先ほどまでの態度が嘘のように動きが荒い。やはりがつがつ動きたかったのかもしれないが、それにしてもこんな、急に、変わりすぎだろう。
「怒ってはいない。ムラムラはしている」
そんな言葉を使うような男だっただろうか。繋がっている場所からはいつのまにかぐちゅぐちゅと水音がしていて、ずいぶんと動きがなめらかだ。ごりごりと弱いところを押し潰されて、ひっきりなしに喘いでしまうのがいたたまれない。
「レっ、ィ……ッあ、はっ……レイぃ、っ」
揺さぶられてどうしたらいいかわからず、名前を呼ぶとレイが満足げに口角を上げる。その笑みにぞくぞくと頭がしびれて、強く突き上げられたときに目の前が白く光った気がした。遅れて腹の中に熱いものを感じて、レイが達したのを理解する。
レイが気持ちよくなれたならよかった。
「……ぁ……?」
自分自身はイっていないと思っていたが、ジーノの体は紛れもなく充足感に満たされていて、下腹部の張り詰めた緊張感はなくなっている。
イった、のだろうか。いつ。
「ジーノ?」
「れ、ぃ……?」
状況が理解できないままぼんやり返答すると、ジーノを満たしていたモノがずるりと抜かれて、また小さく喘ぐ羽目になった。レイにまた抱きしめられて、子どもをあやすように撫でられる。
「……おれ、イったのか?」
「感じなかったのか」
「よくわかんねぇ……なんかちかちかしたときかもしんねぇけど……」
よく見れば体は汚れているから、出るものが出たのは間違いないし、気持ちよかったのだろう。入れられる前には何度も達しているし、今さらイったイかないもどうこうもない気もしてきた。
「レイ、気持ちよかったか?」
さすがにくたびれて、されるがままレイに身をゆだねて尋ねると、無言で見つめられた。今度は何を考えているかわからない。
「……だめだったか?」
レイの手がジーノに触れて、軽く撫でられたあと体がさっぱりした。魔法できれいにしてくれたようだが、やはりジーノの体では物足りなかったのだろうか。
しかし、魅力的な男の体というのがどういうものかわからない。筋肉でもつければいいのか。
「……俺はあんたが好きなんだ」
「おう……?」
てきぱきと布団をきれいにしてジーノに服を着せ、布団を胸元までしっかり引き上げてくれる。レイも服を身につけていて、なんというか、立つものが遠慮なく立ったままのように見えるが、大丈夫だろうか。
「……あんたが俺を好きだと言葉を返してくれたことが嬉しいし、最後まで抱かせてくれたことが嬉しい。これ以上は歯止めが利かない。あんたの体を優先したい」
顔をしかめたレイが、外に行ってくる、と続けて、ジーノはしばらく目を瞬いたあと、小さく笑い声を上げた。
「それなら、お前が戻ってくるまで待ってるよ」
「……急いで戻る」
格好いい恋人が格好悪く外に出ていくのを見送って、ジーノは布団の中でもう一度笑いを漏らした。レイが戻ったら温まった布団で出迎えてやろうと、大きく手足を伸ばして動かしてみる。
レイが戻るまでの少しの間、ジーノはぬくぬくと余韻に浸っていた。
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🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
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