Rely on -each other-

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 午前11時。朔斗は昂良を見送ってから、キッチンに立った。
 冷蔵庫を開け、必要な調味料を一つずつカウンタートップに並べていく。そうして徐に醤油を手に取った時、あ、と動きを止めた。

 醤油は無くなりかけていた。数日前に同じ動作をしたことを今更思い出す。念の為確認したパントリーにも、予備は見当たらない。メモしておくんだったと後悔しながらも、すぐに思考を切り替えた。メニューを変えればいいのだ。

『なんか和食、食べたくなってきたな』

 昨夜、グルメ番組を見ていた時に聞いた昂良の独言が、頭を過った。その時から、今日の昼は和食にすると決めていた。忽ち和食以外の選択肢が切り捨てられ、数秒間立ち尽くした。

 昂良の行き先は、遠方の心療内科だ。友人にバレることを恐れて、わざわざ電車を乗り継いでいるらしい。恐らく、あと二時間は帰ってこないだろう。

 朔斗は調味料を仕舞い込むと、重い腰を上げてショルダーバッグを背負った。




 せっかく家から出てきたのに、醤油だけを買って帰るのは勿体無い。ただそれだけの理由で、無目的にフードコートに立ち寄る。
 数ある店舗の中でも一際魅力的に映ったのは、クレープ屋だ。真っ先にチョコクレープへと視線が移動する。しかし、近付きはしなかった。

 男が一人でクレープを食べるなんて絶対変だ。それに、間食ひとつの値段にしてはあまりにも高すぎる。帰宅すれば昼食を食べるし、今クレープを買う必要性は全く無い。

 あれこれと考えて、どこか遣り切れない気持ちのまま踵を返す。一階にあるスーパーに向かう為、朔斗はエスカレーターを探した。

「新商品、入荷してまーす! いかがですかー!」

 快活な女性の声に、思わず歩みが止まる。声の方向を見遣ると人集りが出来ていた。
 “今話題になっている超あったかアイテム”と書かれたプレートの下には、黒色のダウンベストが陳列されていた。
 
 
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