異世界転移～治癒師の日常

第３章森へ行こう

意外な使い道

食堂に入ると一通り食事が揃っていた。
「遅かったわね、もう用意ができているわよ。あらその服ちょうどいいサイズだったわね」とカリエさんが言うので
「はい。やはりこの辺細くしなくて良かったみたいです」など見せながら話してると
「すごいですね。そのデザイン売ってくれませんか？」と横からキース様が声をかけてきた。
「別に簡単ですよ。あとで型紙を見せますね」と言って席に着いた。
「改めまして。カリエの夫でキースと言います。私も敬称をつけないで気軽に呼んでください」と言ってくれた。
「ギルドはだいじょうぶですか？」と聞くと
「どのみち午前中の仕事はそんなにないので、午後にまとめてやろうと思っていたんですよ」との事。
「すいません。これからお持ちするもので、午後は忙しくなると思います」というと
「まさか、この間から一生懸命書いていた設計図が完成したんですか？」
「はい。あとは、商業ギルドで特許の出願と、鍛冶ギルドでの打ち合わせです」と答えた。
「その前に、書き込んでいた紙（？）というものは作り方をしっていますか？」と本来売り込みたいものとは違うものまで興味を示してきた。
「同じものまではできませんが、あとで調べておきます。ご飯が冷めてしまうので、さあ早く食べましょう」そう言ってみんなで食べ始めた。

「ところで、このカゴもそうだが、パンの中に入っているものは何？』
「実は、あのムカゴという山芋の蔓についている豆みたいなものです。以外とパンに合うと思って入れてみたんですけど、いかがですか？」
「軽く塩味をつけているのかな？以外と合うかもしれないね」とキースさんに評価してもらえた。
「かごは、一緒に採ってきた蔓を使って作ってもたのです。いろいろな形があって面白いですよ」と言って、果物籠も一緒に出して見せた。
「ただ捨ててきたものを、この町の産業にするのもいいかもしれないな」と言ってくれたのでとてもうれしいが、
「実は、もっと楽しいものを製作中なので、しばらく必要な薬草類を揃えてからまた篭りたいのですが」と提案してみた。
「何を考えているのかわからないけど、できあがったら教えてくださいね」と言ってご飯をたべた。


必要とする書類を持って商業ギルドの門をくぐると、
「お待ちしておりました。奥へどうぞ」とゲオルグさん自ら迎えに出てくれた。
奥に行くと鍛冶ギルドのルイス様が待っていて、早速新しい機械を造るということで、念密な打ち合わせをした。
「これで、後は何が必要なんだい？」と聞いてきたので、
「糸と針とボビンです。糸はかなり細い丈夫なものを必要としますし、丸いものはボビンと言って、下糸を巻いて、そこから供給するものです。針は本来の針穴とは場所が違って、針先に穴がいているだけではなく、機械に装着しやすいようにしなければなりません。かなり大変ですが大乗ですか？」と聞くと
「なるほど。そのための設計図か早速取り掛かってみるよ。その前にこれらを特許申請しないと、途中で盗まれるぞ」と言われた。
確かにこれだけの商品を出すとなると、いろいろな利益関係が問題になる。そうだ、
「ゲオルグさん。試作品が完成して使えるとなったら、いくらぐらいで出せますか？」
「そうですね、ひとまず金貨３枚は降らないでしょう」
「では。これを王都の服飾店や、ドレスを扱うお店に銀貨３枚で出したらどうでしょう」
「なぜ、そこまで値を下げて王都に出そうと思ったのですか？」
「この機械は、縫製が簡単にできるという代物です。それでも刺繍や、細やかな仕事はお針子さんがたの手でしなければならないの。だから下手に田舎で出すと、王都のお針子さんの仕事がなくなります。そのための救済措置でもあるんです。もちろんこの町では1日銅貨２枚で誰でも使えるように、３台置きます。そこで作業するようにしたらいいと思うのですが」
「なるほど。そういうことならわが町の産業にもなんらかの影響があると思いますね」
「この土地はグレートスパイダーから取れる、スパーダーシルクを特産としている。これを使って布を生産することはあっても、なかなか自分たちの服に利用することができないのが現状だ。うまくしたら、自分の服も作れるようになるかもしれないな」とルイス様がおっしゃった。




後世の歴史家は、縫製の革命はイオシス王国の王都から始まったという説と、トロンという片田舎で始まったという説で分かれるが、多くの革命は、トロンで起きていることから、王都より片田舎で起きたという説が有力視されている。