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第10話
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変態か、変態かてめぇ。
そんな音声収集して何が楽しい。
「フザケんな、バカ!それ寄越せ!!!」
相手に掴みがかりスマホに向けて手を伸ばす。
ひょいっと腕を伸ばした久賀は「やーぁだよー」と俺の胸を掌で押して逃げた。
10センチ+αの身長差が憎い。
腕を伸ばし顔を上に向けて、俺には届かない高さでスマホを操作された。
どんなに頑張っても届かない高さに、ちくしょーと舌打ちしスマホを掴んでる腕にぶら下がる勢いでしがみついた。
体重を加えて引っ張る。
「いたたっ、重い重いっ」
身長差はあっても、ウエイトは変わらないか、もしや俺のが上だろ。ひょろ男め!
十分に届く手の高さに、今だ!と伸ばした右手は、久賀の左手を掴んだだけだ。
目的のモノは一瞬早く、久賀の右手に移動した。
間近の相手がにこりと笑う。そらゃぁもう、どこの聖人かってくらい、神々しいスマイルだ。
「腕は二本あるのだよ、オガミ君」
ぷちっ。
ヒトを馬鹿にした口調にいい加減マジ切れました。
相手の足の間に片足を差し込んで、軸足を手前に払った。
良い子は真似しちゃいけません。
ただし変態を相手にする場合は別だ。
急所攻撃も許そう。
「うおっ!」
バランスを崩し背中から床に倒れた久賀の腹に乗って、両腕を押さえつけた。
あらら~と余裕ぶって微笑する相手を見下ろし、思いっきり勝ち誇った表情をつくって見下してやった。
「足も二本あるわけだが、役立たずじゃ意味ないな、久賀君」
ついでに、そっちの両腕も封じてやったぜ。
ざまぁみやがれ。
先程の仕返しだ、と精一杯意地悪く鼻で笑い、スマホをつかんだ。
「いやぁ~ん。乱暴はいやよん、優しくしてぇん」
フザケたカマ口調に背筋ぞわぞわだ。
こっちはマジで怒ってんのに、状況わかってんのか?
「おまっ。キメェよ!」
「あれ、お気に召さない。じゃあ『好きにして良いよ』とか?」
好きにして良いよ
その台詞だけ、声色が違った。
腰にずっしりクル甘い声音に、一瞬固まる。
女の子がさ、コイツに落ちる理由が分かった気がするよ。
こいつ エロい。
不快感を与えるスケベではなく、性感を刺激するセクシーなエロティック。
耳元でさ、さっきの台詞を囁かれたら、大抵の女の子は落るだろう。
一瞬力が緩んだところを透かさず反撃された。
スマホの奪い合いだ。
「ちょっと、いい加減に諦めてよ。尾上」
「ざけんな。音声消せし」
「んー。見た目より重いねお前、息苦しいよ。どいて」
「こ、れ、を寄越したら、な!」
ぎりぎりと双方譲らず睨み合いが続いた。
スマホ壊れないだろうか。
まぁ、壊れても俺の所為じゃない。
「そんなに俺とくっついていたいの?おがみん」
「誰がおがみんだ!寝言は死んでからっんんっ!!!」
言えよ、と続く言葉は、久賀の口の中に消えた。
無理やり上半身を浮かした久賀に唇を塞がれる。
コイツっ!一度ならず二度までも!
人の唇を無断で奪っていきや、が、う……ぁ、あああ"
両手首は、床に押さえつけたままだからかなり無茶な体勢だろうに、キスの上手さがさっきより少しも劣らないのは一体どうしてだ?
下腹部にぞわぞわくるキスに、ヤバいと何かが頭の中で警告を発する。
うわ、はっはははは、ヤバい。このキスはヤバい!なんか色々持ってかれるっ。
擦り切った、なけなしのプライドを総動員。
相手の胸を力任せに押して、激しく絡む舌の甘さから逃げ出した。
「……ぷはっ」
酸素が足りず、耳まで朱色に染めながら久賀を睨みつける。
にやにや笑いの相手が、顔の横でスマホを振っていた。
画面には「PLAYING」の文字が表示されていて、艶めかしい喘ぎ声が、流れていた。
……ちょ。これオレかよ。
「やっぱイヤがってないじゃん?」
ほら、俺の方が正しかっただろー?と悪びれもせず久賀は笑い、俺はその頬をばしっと叩いた。
「ぃって…………いっそマゾに生まれたかったなぁ」
頬をおさえてそんなフザケたことを抜かす相手に、平手打ちじゃなくてゲンコにしたら良かったと後悔しながら手を伸ばす。
俺の手が届くよりも早く、ひゅっと手首のスナップをきかせて、久賀はスマホ放り投げた。
すぐ側で傍観していた男の手が、それをキャッチした。
呆れかえった顔だ。
「君たち、少し落ち着いたらどうだ」
タンタンとスマホを操作し、再生中の音声を止めながら、ナガノさんが言った。
音声を止めてもらえて、俺は恥ずかしながらもほっとした。ったく、どんなプレイだっての!
「ちょっと、せっかく良い声だったのにぃ」
むう。と子どものような態度を見せる久賀を見下ろし、ナガノさんは冷めた口調で言った。
「龍二、まるで好きな子をイジメて楽しむ小学生みたいだぞ」
なぬっ。どーゆー意味だ。
腹の上に乗っかったまま、一瞬だけ表情が固まった同級生を凝視した。
けれども久賀は直ぐに、にやにや笑いを再開する。
「ナニソレ。俺は俺の無実を証明してるだけでしょー。現に俺のが正しいもん」
「龍二、いい加減にしなさい」
耳によいテノールは、ほんの少しだけ冷気を含み、にやにや笑いの同級生を黙らせた。
ナガノさんすごい、と俺は感動すら。
この二人の力関係は ナガノ>久賀 か。
「尾上くん」
「はははいっ」
急に名前を呼ばれてどぎまぎする俺の前に、スマホの液晶画面が向けられた。
そんな音声収集して何が楽しい。
「フザケんな、バカ!それ寄越せ!!!」
相手に掴みがかりスマホに向けて手を伸ばす。
ひょいっと腕を伸ばした久賀は「やーぁだよー」と俺の胸を掌で押して逃げた。
10センチ+αの身長差が憎い。
腕を伸ばし顔を上に向けて、俺には届かない高さでスマホを操作された。
どんなに頑張っても届かない高さに、ちくしょーと舌打ちしスマホを掴んでる腕にぶら下がる勢いでしがみついた。
体重を加えて引っ張る。
「いたたっ、重い重いっ」
身長差はあっても、ウエイトは変わらないか、もしや俺のが上だろ。ひょろ男め!
十分に届く手の高さに、今だ!と伸ばした右手は、久賀の左手を掴んだだけだ。
目的のモノは一瞬早く、久賀の右手に移動した。
間近の相手がにこりと笑う。そらゃぁもう、どこの聖人かってくらい、神々しいスマイルだ。
「腕は二本あるのだよ、オガミ君」
ぷちっ。
ヒトを馬鹿にした口調にいい加減マジ切れました。
相手の足の間に片足を差し込んで、軸足を手前に払った。
良い子は真似しちゃいけません。
ただし変態を相手にする場合は別だ。
急所攻撃も許そう。
「うおっ!」
バランスを崩し背中から床に倒れた久賀の腹に乗って、両腕を押さえつけた。
あらら~と余裕ぶって微笑する相手を見下ろし、思いっきり勝ち誇った表情をつくって見下してやった。
「足も二本あるわけだが、役立たずじゃ意味ないな、久賀君」
ついでに、そっちの両腕も封じてやったぜ。
ざまぁみやがれ。
先程の仕返しだ、と精一杯意地悪く鼻で笑い、スマホをつかんだ。
「いやぁ~ん。乱暴はいやよん、優しくしてぇん」
フザケたカマ口調に背筋ぞわぞわだ。
こっちはマジで怒ってんのに、状況わかってんのか?
「おまっ。キメェよ!」
「あれ、お気に召さない。じゃあ『好きにして良いよ』とか?」
好きにして良いよ
その台詞だけ、声色が違った。
腰にずっしりクル甘い声音に、一瞬固まる。
女の子がさ、コイツに落ちる理由が分かった気がするよ。
こいつ エロい。
不快感を与えるスケベではなく、性感を刺激するセクシーなエロティック。
耳元でさ、さっきの台詞を囁かれたら、大抵の女の子は落るだろう。
一瞬力が緩んだところを透かさず反撃された。
スマホの奪い合いだ。
「ちょっと、いい加減に諦めてよ。尾上」
「ざけんな。音声消せし」
「んー。見た目より重いねお前、息苦しいよ。どいて」
「こ、れ、を寄越したら、な!」
ぎりぎりと双方譲らず睨み合いが続いた。
スマホ壊れないだろうか。
まぁ、壊れても俺の所為じゃない。
「そんなに俺とくっついていたいの?おがみん」
「誰がおがみんだ!寝言は死んでからっんんっ!!!」
言えよ、と続く言葉は、久賀の口の中に消えた。
無理やり上半身を浮かした久賀に唇を塞がれる。
コイツっ!一度ならず二度までも!
人の唇を無断で奪っていきや、が、う……ぁ、あああ"
両手首は、床に押さえつけたままだからかなり無茶な体勢だろうに、キスの上手さがさっきより少しも劣らないのは一体どうしてだ?
下腹部にぞわぞわくるキスに、ヤバいと何かが頭の中で警告を発する。
うわ、はっはははは、ヤバい。このキスはヤバい!なんか色々持ってかれるっ。
擦り切った、なけなしのプライドを総動員。
相手の胸を力任せに押して、激しく絡む舌の甘さから逃げ出した。
「……ぷはっ」
酸素が足りず、耳まで朱色に染めながら久賀を睨みつける。
にやにや笑いの相手が、顔の横でスマホを振っていた。
画面には「PLAYING」の文字が表示されていて、艶めかしい喘ぎ声が、流れていた。
……ちょ。これオレかよ。
「やっぱイヤがってないじゃん?」
ほら、俺の方が正しかっただろー?と悪びれもせず久賀は笑い、俺はその頬をばしっと叩いた。
「ぃって…………いっそマゾに生まれたかったなぁ」
頬をおさえてそんなフザケたことを抜かす相手に、平手打ちじゃなくてゲンコにしたら良かったと後悔しながら手を伸ばす。
俺の手が届くよりも早く、ひゅっと手首のスナップをきかせて、久賀はスマホ放り投げた。
すぐ側で傍観していた男の手が、それをキャッチした。
呆れかえった顔だ。
「君たち、少し落ち着いたらどうだ」
タンタンとスマホを操作し、再生中の音声を止めながら、ナガノさんが言った。
音声を止めてもらえて、俺は恥ずかしながらもほっとした。ったく、どんなプレイだっての!
「ちょっと、せっかく良い声だったのにぃ」
むう。と子どものような態度を見せる久賀を見下ろし、ナガノさんは冷めた口調で言った。
「龍二、まるで好きな子をイジメて楽しむ小学生みたいだぞ」
なぬっ。どーゆー意味だ。
腹の上に乗っかったまま、一瞬だけ表情が固まった同級生を凝視した。
けれども久賀は直ぐに、にやにや笑いを再開する。
「ナニソレ。俺は俺の無実を証明してるだけでしょー。現に俺のが正しいもん」
「龍二、いい加減にしなさい」
耳によいテノールは、ほんの少しだけ冷気を含み、にやにや笑いの同級生を黙らせた。
ナガノさんすごい、と俺は感動すら。
この二人の力関係は ナガノ>久賀 か。
「尾上くん」
「はははいっ」
急に名前を呼ばれてどぎまぎする俺の前に、スマホの液晶画面が向けられた。
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