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第20話
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高2現在ー。
「おら、さっさとベッドに入りやがれ」
「相変わらず色気のない誘い文句だな。もちっとさ、ヤル気が出る台詞が言えないでしょーか?」
くいっと親指でベッドを指差すと、久賀はいつも通りの軽い口調で、ふざけた台詞をぺらぺらと並べ立てた。
相手にすると調子に乗るから敢えてシカトだ。
それにしても、何に対してやる気を発揮するつもりだお前は。俺はな、他の客とおんなじ扱いなんて死んでもゴメンなんだよ。
鞄を机に放り投げて、ブレザーを脱ぎハンガーに掛けたところで、足音もなく寄ってきた相手に後ろから捕縛された。
抵抗する間も与えられず、くるりっと体が反転して、気づいた時にはベッドの上だ。
見上げる先にはにやにや笑いの久賀がいて、テメーが押し倒したくせに「ヤんの?」なんて訊いてくる。
ぐわあっと熱が押し寄せてきたのは怒りからか恥ずかしさからか、果たしてどっちが正解なのか。
多分両方だ。
「や、ん、ね、え、よ!わかってて聞くな!」
「あっれーオガミンってば、俺を買ったんじゃなかったけ?」
重いからどけよ!と、胸を押すと、抵抗もなくあっさりと離れてゆく。
ヤるなら相手してやるし、ヤらないやら無駄な体力を使わなくて良いからラッキー、なんてところでしょうか久賀さんの内情は。
余裕綽々だ。
あー、ホントにムカツクヤツだな。
こっちは誰かさんの言動にイチイチ動揺して振り回されてるのに。
くそ、悔しい。
ささっと、ベッドから抜け出して「鳥頭かお前は。毎回説明させんなよ」と返すと「んー?なに。まぁたいつものアレなの?」と、久賀は呆れたように笑った。
「ほんと、お前って意味不明だな、オガミン」
「オガミン言うな」
クスクス笑って、ヒトのベッドでしなやかな獣のように伸びをする相手を見下ろした。
そう、ヤツが寝そべっているのは俺のベッドだ。
ちなみに、ここは俺の部屋だったりする。
俺の幼馴染みに平手を食らわされてサイテー呼ばわりされても、へらへらと笑っているクソヤローをバイトと称して自宅に連れ込みました。
なんて嫌な言い方。でも事実です。
ついでにいうと、久賀がもふもふと整えているお布団は、今日干したばっかりで、狙った訳じゃないんだけど、なんか連れ込む気満々だったように見えちゃうだろうから、とてつもなく恥ずかしい。
もふもふ、もふもふ。
ぼふっ。
ぎゅむ。
あー…………どうやら俺の心配は杞憂だったようで、お気に召したらしい久賀は整えた布団に体を沈め御満悦です。
ゴロゴロと喉がなる音が聞こえてきそうだ。
なんだこいつ、カワイイナ、などと思った俺よ今すぐ落ち着け。
などと自分に突っ込んではみたものの、無意識にやわっかい髪に指を伸ばして撫でちゃってるあたり、もう色々手遅れだと思う。
さらっと、指の間を滑り落ちる滑らかな髪質。
束ねて背中に垂らしてあるソレは動物の尻尾のように見えて、カワイイ。
こいつに可愛いなんて形容詞が似合うとは微塵も思わないのに、何故だかそんな風に感じてしまうのだ。
どーしようもない。
赤い髪は、というか、赤い色は久賀に良く似合っていた。
ぱちっと目を開けた相手が視線を向けてくる。
最初の頃みたいに、頭に触れる手を払われることが無くなったのは、俺たちの距離が近づいた証拠……ではなく、多分コレがビジネスだからだ。
まるでその考えを肯定するとばかりに、久賀は俺の腕をそろりと撫でて「やっぱヤんの?」なんて、妖しい声音で囁いた。
いつかどこかで聞いたような台詞だ。
「お前の頭にはそれしかねぇのか」
「お前みたいな意味不明な理由で金出すヤツなんてハジメテなもので、イチイチ確認しないと解らないんだよね。俺の理解の範疇を越え過ぎてて」
くくっと、久賀が笑う。
ホント、お前みたいな客はハジメテ。と、独り言みたいに彼は言う。
客。
そう、俺はコイツの客だ。
お金を出して、男子高校生のカラダを好き勝手にしてるクソヤロウどもと同列の、下劣な人間だ。
久賀の秘密を知ってから、脳内回想だけでキャパオーバーなアレコレを経て、走って泣いて足掻いて苦しんで、高校二年生になった今現在、最終的に残った関係が売り手と買い手のソレだった。
買い手と言っても、他の客と決定的に違うところがひとつあって、俺はヤるのを目的にコイツの時間を独占しているわけではない。
だけどそんなのは言い訳で、結局は俺も最低な人間の部類に入るんだろうな。
買った時間をどう使うかはお客様の自由らしいので、俺が何を願おうが久賀的には問題ないらし。
だけど、理解は出来ないと言われました。
ついでに、信用も薄いらしく、毎回毎回、お約束のように「ヤんないの?」なんて確認されてます。
気が変わったならいつでもお好きにどーぞ?
舐めるのも、撫でるのも、かじるのも、擦るのも、弄るのも、焦らすのも、責めるのも、イかすのも、どうぞお客様のご自由に。
甘く優しく耳元で囁かれた回数は、最早覚えておくのもメンドーなくらい繰り返されていて、俺の理性の糸がプッツンしちゃったらどーしてくれるんだ、と、心の片隅で涙した。
「おら、さっさとベッドに入りやがれ」
「相変わらず色気のない誘い文句だな。もちっとさ、ヤル気が出る台詞が言えないでしょーか?」
くいっと親指でベッドを指差すと、久賀はいつも通りの軽い口調で、ふざけた台詞をぺらぺらと並べ立てた。
相手にすると調子に乗るから敢えてシカトだ。
それにしても、何に対してやる気を発揮するつもりだお前は。俺はな、他の客とおんなじ扱いなんて死んでもゴメンなんだよ。
鞄を机に放り投げて、ブレザーを脱ぎハンガーに掛けたところで、足音もなく寄ってきた相手に後ろから捕縛された。
抵抗する間も与えられず、くるりっと体が反転して、気づいた時にはベッドの上だ。
見上げる先にはにやにや笑いの久賀がいて、テメーが押し倒したくせに「ヤんの?」なんて訊いてくる。
ぐわあっと熱が押し寄せてきたのは怒りからか恥ずかしさからか、果たしてどっちが正解なのか。
多分両方だ。
「や、ん、ね、え、よ!わかってて聞くな!」
「あっれーオガミンってば、俺を買ったんじゃなかったけ?」
重いからどけよ!と、胸を押すと、抵抗もなくあっさりと離れてゆく。
ヤるなら相手してやるし、ヤらないやら無駄な体力を使わなくて良いからラッキー、なんてところでしょうか久賀さんの内情は。
余裕綽々だ。
あー、ホントにムカツクヤツだな。
こっちは誰かさんの言動にイチイチ動揺して振り回されてるのに。
くそ、悔しい。
ささっと、ベッドから抜け出して「鳥頭かお前は。毎回説明させんなよ」と返すと「んー?なに。まぁたいつものアレなの?」と、久賀は呆れたように笑った。
「ほんと、お前って意味不明だな、オガミン」
「オガミン言うな」
クスクス笑って、ヒトのベッドでしなやかな獣のように伸びをする相手を見下ろした。
そう、ヤツが寝そべっているのは俺のベッドだ。
ちなみに、ここは俺の部屋だったりする。
俺の幼馴染みに平手を食らわされてサイテー呼ばわりされても、へらへらと笑っているクソヤローをバイトと称して自宅に連れ込みました。
なんて嫌な言い方。でも事実です。
ついでにいうと、久賀がもふもふと整えているお布団は、今日干したばっかりで、狙った訳じゃないんだけど、なんか連れ込む気満々だったように見えちゃうだろうから、とてつもなく恥ずかしい。
もふもふ、もふもふ。
ぼふっ。
ぎゅむ。
あー…………どうやら俺の心配は杞憂だったようで、お気に召したらしい久賀は整えた布団に体を沈め御満悦です。
ゴロゴロと喉がなる音が聞こえてきそうだ。
なんだこいつ、カワイイナ、などと思った俺よ今すぐ落ち着け。
などと自分に突っ込んではみたものの、無意識にやわっかい髪に指を伸ばして撫でちゃってるあたり、もう色々手遅れだと思う。
さらっと、指の間を滑り落ちる滑らかな髪質。
束ねて背中に垂らしてあるソレは動物の尻尾のように見えて、カワイイ。
こいつに可愛いなんて形容詞が似合うとは微塵も思わないのに、何故だかそんな風に感じてしまうのだ。
どーしようもない。
赤い髪は、というか、赤い色は久賀に良く似合っていた。
ぱちっと目を開けた相手が視線を向けてくる。
最初の頃みたいに、頭に触れる手を払われることが無くなったのは、俺たちの距離が近づいた証拠……ではなく、多分コレがビジネスだからだ。
まるでその考えを肯定するとばかりに、久賀は俺の腕をそろりと撫でて「やっぱヤんの?」なんて、妖しい声音で囁いた。
いつかどこかで聞いたような台詞だ。
「お前の頭にはそれしかねぇのか」
「お前みたいな意味不明な理由で金出すヤツなんてハジメテなもので、イチイチ確認しないと解らないんだよね。俺の理解の範疇を越え過ぎてて」
くくっと、久賀が笑う。
ホント、お前みたいな客はハジメテ。と、独り言みたいに彼は言う。
客。
そう、俺はコイツの客だ。
お金を出して、男子高校生のカラダを好き勝手にしてるクソヤロウどもと同列の、下劣な人間だ。
久賀の秘密を知ってから、脳内回想だけでキャパオーバーなアレコレを経て、走って泣いて足掻いて苦しんで、高校二年生になった今現在、最終的に残った関係が売り手と買い手のソレだった。
買い手と言っても、他の客と決定的に違うところがひとつあって、俺はヤるのを目的にコイツの時間を独占しているわけではない。
だけどそんなのは言い訳で、結局は俺も最低な人間の部類に入るんだろうな。
買った時間をどう使うかはお客様の自由らしいので、俺が何を願おうが久賀的には問題ないらし。
だけど、理解は出来ないと言われました。
ついでに、信用も薄いらしく、毎回毎回、お約束のように「ヤんないの?」なんて確認されてます。
気が変わったならいつでもお好きにどーぞ?
舐めるのも、撫でるのも、かじるのも、擦るのも、弄るのも、焦らすのも、責めるのも、イかすのも、どうぞお客様のご自由に。
甘く優しく耳元で囁かれた回数は、最早覚えておくのもメンドーなくらい繰り返されていて、俺の理性の糸がプッツンしちゃったらどーしてくれるんだ、と、心の片隅で涙した。
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